本当にGAIN調整でノイズが減るのか検証【配信の声を大きくする方法 #4】
皆さんこんにちは!今日もVTuber様のオーディオトラブルを解決しまくり!怪傑姫(かいけつひめ)です。
今回は「配信の声を大きくする方法」の第4回です。
前回の記事では「ノイズを減らすためにマイクに入る声を大きくする」という所まで説明しましたね。それではいよいよ具体的なGAIN設定の解説に入っていきます。
前回の記事は難しめだったので、軽くおさらいしておきましょう。
ノイズだらけの音声の例
まず悪い例として、残留ノイズ、環境音、声がそれぞれ同じ比率で入っている状態を紹介しました。それぞれの音の大きさは10ずつで、GAINを3時まで上げた時に、音の総量が100に達してピークが点灯するとします。
前回説明し損ねたのですが、この10とか100とかいう数字はそれぞれの比率を相対的に表すために便宜上設定したもので、dbなどの単位の値を表している訳ではありません。
さて、GAINが9時の状態だと、何も喋っていなくても残留ノイズと環境音が10ずつ鳴っています。しかし、これらは構造上取り除けないものなので、減らす事は出来ません。もしGAINを最小値まで絞り切れば完全に無音にできますが、それでは声も入らないので本末転倒です。
そこで、マイクに入る声を大きくする事で、相対的にノイズを小さくするという対策が必要になってきます。残留ノイズと環境音が10ずつなので、音割れが発生してしまうまで、まだ80の余地があるという状態です。
ノイズ対策
マイクに口を近づける
マイクに口を近づけて声の大きさを10から30に上げてみます。
仮にGAINを12時まで上げた時にピークが点灯するとします。
するとこうなります。
残留ノイズが20、環境音が20、声が60となり、最初の状態に比べてノイズを26%削減できました!段々理屈が分かってきましたね?
声を大きく発声する(オンの声)
マイクに口を近づけるだけでなく、さらにオンの声で発声した結果、声の大きさを30から80まで上げられたとします。GAINは9時のままで100に達するのでピークが点灯します。するとこうなります。
残留ノイズが10、環境音が10、声が80となり、最初の状態に比べてノイズを46%削減できました!声を大きくしてGAINを下げる事によって、大幅にノイズを減らす事に成功しましたね!
ノイズが減った理由
重要なのはGAINが低いからノイズが減っている訳ではないという事です。
GAINが低くてもピークが点灯するまで声を大きくしたからノイズが減っているのです。
ただし、残留ノイズについてはGAINに比例して大きくなるので、単純にGAINが低い事の恩恵を受けています。これで理屈は理解してもらえたと思いますが、もう一つ問題が残っています。
適切なGAIN設定方法
さっきから何度も言っている「100」の探り方です。目安はピークランプが点灯するかどうかだという事は以前の記事で説明した通りです。
しかし、あなたの肉声は電子音のように音量が一定ではありませんし、トークのテンションや抑揚によっても音量は絶えず変化します。そんな中で、どういう条件でピークランプが点灯したらそこを100と決めるのかという事が問題になります。
GAIN設定のやり方は、GAINを最小値に絞って、マイクに向かって喋りながらツマミを徐々に上げていくのですが、どういう音声を入力してランプが点灯したらツマミを止めて良いのか?という事です。
答えは
コンテンツで発生しうる最大音量を基準にする。
です。
これは第1回でご紹介した「基本的には小さいがたまに爆音になる」という音声の波形です。
通常時はボソボソ喋っているので波形も小さいですが、盛り上がった時や笑った時に波形がめちゃくちゃ大きくなります。これは動画の音声データですが、実際にはこの音声をマイクに向かって喋っているものと考えて置き換えて下さい。
では、通常時のテンションを基準にGAIN設定を行ったとします。
ここでPEAKが一瞬点灯したので、その状態でGAINのツマミを確定させてしまった場合、
この部分は全部バリバリに音割れします・・・
爆音がある時は爆音を基準にして下さい。
また、これも非常に大事な事なのですが、マイクに向かって適当に「あーあーあー」と言ったり、「ただ今マイクのテスト中~」のようなワードでPEAKを探るのはやめて下さい。
もし本番中にも「あーあーあー」「ただ今マイクのテスト中~」と言っていて、それがコンテンツのメインであるのならその設定方法が正解です。
しかし、あなたは実際にそんな配信をしていますか?主なコンテンツは雑談やゲーム配信、朗読などではないでしょうか?
雑談がメインなのであれば、実際に雑談して下さい。
ホラーゲームで絶叫する可能性があるのなら、実際に絶叫して下さい。
歌枠をやるのであれば、実際に本気で歌って下さい。
GAIN設定で本番を想定した声を出さないのは、本番とは違う指揮者でオーケストラのリハーサルをやるようなものです。意味がありません。
配信中を想定した演技をして下さい。部屋で一人で演技するなんて馬鹿みたいで恥ずかしいと思うかもしれませんが、以降の経路を通る音声全てに影響を与える重要な箇所なので、視聴者の笑顔のために頑張って下さい。クリエーターの道にバラ色はありません。
空しくなる瞬間かもしれませんが、ここまでやってこれたあなたならできます。
爆音を基準にGAIN設定が出来たとして、「じゃあ通常トークの音声入力はずっと小さいままなのか?」と思いますよね?良い疑問ですが、それを解消する方法は今後の記事で説明していきますね。
次に大事な事は、GAINの設定が確定したらもう動かさない。という事です。絶対に触ってはいけない訳ではありませんが、プラットフォームに入る声の大きさは、これ以降のボリュームフェーダーで適宜調整しましょう。
GAINをいじる場面があるとすれば、オンの声の大きさやマイクが変わった時ぐらいです。GAINは歪み具合という音質を決める部分であって、音量調整のために頻繁に変更する箇所ではないからです。
また、GAINの調整中にその声をモニターしていても、うるさいからといってGAINを下げてはいけません。そんな事になるぐらいなら、調整中は声を聞かずにランプだけを見て設定しても良いぐらいです。
声が小さいと悩んでいる人の多くは、「全部のフェーダーをもうマックスまで上げていて、これ以上上げられません」と言います。
しかし、出来るだけ大きい音で受け取って、最終的に必要な大きさまで下げるというのが音声処理の基本です。音量が足りないからといってGAINやフェーダーをどんどん上げていくという処理は、ノイズの温床になってしまいます。
では、AG03の場合、フェーダーはどうするのが良いでしょうか?
基本的には太線で固定して下さい。
なぜなら、フェーダーでPCへの入力を調整しなくても、まだプラットフォーム側で必要な分まで下げられるからです。
具体的には、zoom・Discord・OBS等のマイクのフェーダーです。
太線まで上げてもまだマックスには至りませんよね?マックスまで上げない理由は、本番中緊急的にどうしてももう少し上げたいとなった時のためのバッファを残しておくためです。
ただし、これはあくまで緊急の措置であって、日常の音量調整として頻繁には使わないようにして下さい。また、太線より下げる場面があるとすれば、2、3チャンネルやAUXとのバランスを取るために、1チャンネルを下げるしか方法がない場合のみです。
しかし、音がパソコンに入った後にDAW等でエフェクトをかけている場合は、以降の経路全てに影響を与えてしまいます。出来るだけ大きい音で受け取って、最終的に必要な大きさまで下げるという基本に従って、太線で固定してあまり動かさないようにしましょう。
今回のお話は以上です。Xでも日々配信環境にまつわる情報を発信しているので、是非フォローして下さい!