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音量は音質に勝る【配信の声を大きくする方法 #2】

皆さんこんにちは!今日もVTuber様のオーディオトラブルを解決しまくり!怪傑姫(かいけつひめ)です。

今回は「配信の声を大きくする方法」の第2回です。
前回の記事では、オーディオインターフェースのGain設定が最も大事と言いましたがアレは嘘です。


音声処理は料理と同じ

本当に一番重要な箇所はオーディオインターフェースよりも前にあります。それはマイクではなく喉と口です。つまり人体ですね。当たり前と言えば当たり前の話なんですが、皆さん結構ここを忘れがちです。

音声処理はよく料理に例えられる事が多いのですが、その例えで言うと人間の口から出る声が素材ですね。楽曲制作のミックスでは、歌声や楽器の音が素材です。

エフェクト処理は素材ありきの調整に過ぎない

レコーディングの現場では、演奏技術や楽器のセッティングはもちろんですが、録り方が大きな比重を占めていて、実際レコーディングエンジニアは、「楽曲の出来はミックスではなく、レコーディングの段階で既にほぼ決まっている」とよく言います。

私は楽曲のミックスもしますが、配信環境のコンサルをしていても、この言葉が同じく適用されるという事がよく分かります。

どうすれば聴く人の満足度を高められるかを考えて、素材の良さを引き出すための調整をするのですが、やはり所詮「調整」にしか過ぎないという事を実感しています。

エフェクトとは日本語で「効果」という意味であって、その在り方はマジック(魔法)ではないという事です。たしかにiZotopeのRXのように、魔法のようなプラグインは存在しますが・・・

iZotopeさん。案件お待ちしています!

良い声と悪い声

この話は何度でも原点回帰してしまうのですが、やはり一番重要なのは、声質・出し方・マイクへの入れ方という事になります。

この話を聞いて、「自分は声質が悪いからダメだ」と思ったそこのあなた。
勘違いしないで下さい!この世の中に「悪い声質」というものは存在しません。

「誰しもが価値のある存在なんだよ」とかいう綺麗事を言いたい訳ではありません。声には高い、低い・太い・細い・深い・浅い等、色々な特徴の表現がありますが、視聴者の好みもまた千差万別です。

もし「悪い声」があるとすれば、それは声質そのものではなく、その声質の特徴をしっかりと収音出来なかった素材データです。極端な言い方をすれば、マイクへの入り方が最高なら、それは最高の音声なのです。

「エフェクトでなんとかなりませんか?」と相談に来られる方に対して、私はいつも詳細なヒアリングを行うのですが、よくよく聞いてみると、マイクとの距離や発声が良くないという事が往々にしてあります。

エフェクト云々よりもここが一番大事なので、しっかりと時間をかけて説明して、サポートさせてもらっています。時々自分が何屋さんなのか分からなくなる瞬間がありますが、最終的に満足していただけてサポート終了出来ているので私も満足です。

オンの声

ここからは少し厳しい話になりますが、コンテンツが雑談やゲーム実況であるにも関わらず、もともと声の小さい人が「本番でも地声のまま繊細に喋らせてくれ」というのは甘えです。

あなたはオンの声という言葉をご存じですか?おそらく知らないと思います。なぜなら、ついさっき私が考えた言葉だからです。概念自体はずっと私の中にあったのですが、言葉はさっき命名しました。

「オン」というのはオン/オフのオンです。一体何がオンなのかというと、「声を人に届ける意識」です。

声を職業にしている人、例えば歌手・声優・ラジオのDJ・ナレーター・アナウンサー・お笑い芸人等いらっしゃいますが、あの人達は本番でオンの声を出す時、びっくりするぐらい大きな声を出します。

一番オンの声が大きい例としてはお笑い芸人です。試しに一度、自分は日常生活でこれほど大きな声を出すか?という視点でお笑い芸人同士がやり取りしている動画を視聴してみて下さい。

実際、劇場で見る生の漫才はめちゃくちゃ声が大きい

人や芸風にもよるのですが、ほとんど叫び続けているぐらい声を張っている事に気づくと思います。少なくとも、私やあなたが普段友人や家族と話す声の大きさとはかけ離れている事が分かるはずです。

では、ピンマイクが付いているにも関わらず、なぜ彼らはあんなにも声を張るのでしょうか?それは声が届かなければ意味がないとよく知っているからです。ここに意識の違いがあります。

口から出た声をボールだとイメージしてみましょう。声の小さい人が普通に発声した場合、ボールが目の前50cmぐらいでストンと落ちるぐらいだとします。

それに比べて、お笑い芸人は10m先まで届く直球の声を腹から出していると想像出来ます。あなたと彼らにはそれぐらいの違いがあるのです。

オーディオ機器は、大きな音を小さくするのは得意ですが、反対に小さな音を無理矢理大きくするのは苦手です。出来ない事はないのですが、ノイズが聞こえない状態を保ったまま、聞かせたい音だけを大きくする事はその構造上難しいのです。

逆に、声が大きい方が相対的にノイズの比率を下げられるので、音響工学の観点から見ても理にかなっていると言えます。

配信でもお笑い芸人のように声を張って下さいと言いたい訳ではありません。オンの声が大きい例として分かりやすいので言ってみただけです。しかし、人前で喋る立場である配信者の心構えとして、その意識が非常に大事であるという事を教えてくれます。

配信の本番では、口元だけでボソボソ喋るのではなく、せめてマイクに真っ直ぐ突き刺す意識でオンの声を出しましょう。

マイクのダイアフラム(収音部分)に声を突き刺す

極端な比較ではありますが、ほとんど聞こえない綺麗な音質と、よく聞こえるそれなりの音質なら、視聴者にとってどちらが良いでしょうか?

もちろん音質にこだわるのは良い事ですし、私もそのために全力を尽くします。しかし、次回からオーディオインターフェースのGain設定をするにあたって、これだけはどうしても先に言っておかなければならなかったので、今回しっかりと書きました。

音量は音質に勝る

最後になってしまいましたがタイトルの回収です。この記事を読んでくれたあなたにこの言葉を送ります。

音量は音質に勝る

前回の記事で書いた常時大きい音が一番偉いという大原則はここでも適用されるという事です。

今回のお話は以上です。Xでも日々配信環境にまつわる情報を発信しているので、是非フォローして下さい!

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