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静岡県立大学「会社会計」の講義メモ:日商簿記2級を学んで世界を広げていく(10・11回目)

純資産は難しい!

会社会計の10・11回目の講義は純資産の内容です。

10回目の講義は「資本金・資本準備金の区分」が主な内容です。会社法にめちゃくちゃ関わる内容ですね。

11回目の講義は「繰越利益剰余金」の処分について(他にも企業結合を取り上げていますが省略します)。仕訳で流れを確認してみましょう。

〇例題〇
(1)1期目の決算(3/31)において当期純利益5,000円を計上した。

日商簿記3級の復習です。問題には書いていないですが、仮に収益項目が売上高12,000円、受取手数料3,000円、費用項目が仕入7,000円、給料2,000円、水道光熱費1,000円であるとします。利益は5,000円ですね。

収益項目は以下のように「損益」勘定に振り替えるのを覚えていますか?

【借方】売上12,000円 受取手数料3,000円 【貸方】損益15,000円

費用項目も以下のように振り替えます。

【借方】損益10,000円 【貸方】仕入7,000円・給料2,000円・水道光熱費1,000円

この2つの結果、「損益」勘定の左側(借方)に5,000円が記録されることになります。これが当期純利益でした!

当期純利益は次年度以降の資金調達源になります。貸借対照表において資金の調達源泉は右側(貸方)に記録するので…今回の問題の仕訳は次のようになります。

【借方】損益5,000円 【貸方】繰越利益剰余金5,000円
 
(2)株主総会(6/28)において, 以下の剰余金の配当と処分が承認された
 繰越利益剰余金・・・5,000円
①利益準備金・・・300円
②配当金・・・3,000円
③別途積立金・・・1,000円
繰越額・・・700円(これは検定では記載されないことが多いです)
 
3級までは利益のすべてが次年度に活用されると考えてきましたが、実際はそうではありません。利益の一部を社内に置いておくと決めたり(これがややこしいのですが現金のように実際に利益が残っているわけではないです)、株主に配当したりします。

2級では「利益準備金」「配当金」「別途積立金」の3つの方法が登場します。これらを繰越利益剰余金から減らすイメージです。

【借方】繰越利益剰余金4,300円 【貸方】利益準備金300円・未払配当金3,000円・別途積立金1,000円

※配当金を実際に支払うのは株主総会後になります。

※ここでの問題は利益準備金の額を与えましたが、実際は「推定する」ことになります。

★利益準備金は会社法の規定により決められた額を積み立てる★
①配当金の10分の1
②資本金の4分の1ー(資本準備金+利益準備金)

①・②のうち、金額の少ない方

(3)7月2日に配当金を当座預金から支払った.
【借方】未払配当金3,000円 【貸方】当座預金3,000円 
 
以上の一連の流れで、繰越利益剰余金が結局いくらになったかわかりましたか?

5,000円から4,300円を引いた700円ですね!
配当や処分を通じて、会社が次年度活用できる利益が減少することになります。

配当(利益還元)は面白い!!

利益の一部が次年度に向けた投資に充てられることになります。

投資家にとっては、企業が魅力的な事業に資金を充ててくれるのならば、インカムゲインとして現在の所得が増える配当(+株主優待がありますね)よりも、将来的な株価の値上がりに期待したキャピタルゲインを選好する可能性があります。この場合は、配当を減らし、多くの利益を投資に充てるために手元に残しておくことが得策になります。

逆に、経営者が怪しいことにお金を使う傾向がある場合は配当をたくさんさせる方がいいかもしれません。経営者が投資家にとっては利益とはならない、すなわち私的便益を追求するためにお金を使う可能性があります。これは帝国建設(empire buildings)と呼ばれます。社長室を豪華にしたり、プライベートジェットを購入したり、色々な例が浮かびます。

この場合は配当が多いほど投資家に喜ばれます。増配により株価の上昇が期待できる理由の1つがこれです。これを「配当のフリーキャッシュフロー仮説」と呼んでいます。

配当(利益還元)は、経営財務論の世界では大きな1つの論点です。実は配当と株価(企業価値)の関係は、まだはっきりとわかっていないのです。

今回紹介した「フリーキャッシュフロー仮説」以外にも様々な仮説があります。配当は(学問として検討する主体として)面白い。私は修士のときに、その魅力に引き込まれました。そのきっかけになったのが「簿記で学習した仕訳がいきている」という実感でした。

簿記の学習は資格取得に留まらず、多くの可能性を広げてくれるものです。そのためにも基本的な仕訳について定着を図りましょう。

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