世帯主のための会計知識の活かし方―家計のバランスシートの活用ー
皆さんは家計の状況をしっかり把握していますか?財布の中身や銀行口座の残高は把握している方は多いとは思いますが、すべて把握している方はなかないないのではないでしょうか。
私も銀行口座の残高くらいは把握していたのですが、それくらいで何となくお金が減ったな、増えたなくらいしか気にしていませんでした。
しかし、これでは財産管理という側面では不十分で、今後の家計の改善のためには役立ちません。まずは現状を把握すること、これが財産管理の第1歩です。
また、財産管理したいんだけどやり方がわかならいよという方もたくさんいると思います。どのようにしたら簡単かつ効率よく家計状況を把握できるのでしょうか。
会計知識はこのような悩みを解決してくれます。会計は500年以上も前から会社の財産管理に使われ続けられています。
この記事では、会計知識を援用した家計のバランスシートを用いた、財産状況の把握方法についてお伝えしようと思います。
家計のバランスシートとは
バランスシート(Balance sheet)とは、会計用語で貸借対照表といいます。略して、B/S(ビーエス)と読んだりもします。バランスシートは、企業のある時点の財政状態を確認するための計算書類で、現金はどれくらいあるか、借金はどれくらいあるかなど企業の安全性を把握するために用いられています。
家計のバランスシートとは、企業の安全性を確認するための貸借対照表を、家計用に修正したバランスシートです。つまり、家計の一時点の財政状態を確認するための計算書類と理解していただければと思います。
家計のバランスシートを作成することで、作成時点での家計の財政状態を把握することができます。
家計のバランスシートの3要素
家計のバランスシートを作成するためには、3つの要素が必要です。それは、資産(左側)、負債(右上)、純資産(右下)です。一つずつ簡単に説明します。
①資産
資産とは、現預金(現金、銀行預金)と換金価値のある財産をいいます。例えば、換金価値のある財産は、株式、車、不動産(家や土地)などがあげられます。また、ノートパソコンや家財(冷蔵庫、エアコンなど)も資産に含まれます。現預金と売ればお金になる財産が資産だと簡単に理解頂ければ十分です。
②負債
負債とは、他人に対して金銭などを引き渡す義務のことをいいます。代表的なのは、自動車ローン、住宅ローン、奨学金などの借金です。クレジットカードの残債なども負債に含まれます。
③純資産
純資産とは、資産から負債を差し引いた残額のことをいいます(純資産=資産-負債)。
家計のバランスシートの作成
持ち家なしの3人家族(夫、妻、子供)を想定して、以下のような資産と負債があると仮定して、家計のバランスシートを作成していきましょう。
資産:現預金¥2,500,000、スマホ¥20,000、ノートパソコン¥50,000、自動車¥300,000
※現預金は預金残高、スマホなどの財産は売却価格を価額とします。
負債:クレジットカード残債¥200,000、自動車ローンの残債¥600,000、奨学金の残債¥2,000,000
以下の表は、上記の資産と負債、そして純資産を整理した家計のバランスシートです。資産は左側、負債は右側、純資産は右下に入力します。
資産は左側に記入していきます。上から、現預金(¥2,500,000)、スマホ(¥20,000)、ノートパソコン(¥50,000)、自動車(¥300,000)と入力していきます。それぞの資産の金額を合計すると、資産の合計金額は2,870,000円となります。
負債は右側に記入していきます。上から、クレジットカード(¥200,000)、自動車ローン(¥600,000)、奨学金(¥2,000,000)と記入していきます。合計は、2,800,000円です。
純資産は、資産合計から負債合計を差し引いて求めます。金額は、資産(2,870,000円)-負債(2,800,000円)の70,000円でした。
結果をみると、純資産がプラスであることから、このご家庭の財政状態は債務超過(負債が資産より多い)の状況ではないことがわかります。ただ、負債が2,800,000円と多く、少し危険な状況であることがあります。そのため、現預金を増やす努力が必要であることがわかります。
このように、家計の状況を資産と負債の両面から把握することで、家計の財政状況をより明確にとらえることが可能になります。
純資産の差額から一年間の利益を求める
家計のバランスシートは一時点の財政状態を把握するための計算書類ですが、毎年(毎月でもO.K.)作成し、それを比較することで一年間の利益(純資産がどれだけ増えたか)を計算することもできます。
例えば、2019年12月31日の純資産が300万円だったとしましょう。そして、一年後の純資産が500万円だったとしましょう。この家計の一年間の利益はいくらでしょうか。
一年間の利益は500万円(2020年12月31日の純資産)から300万円(2019年12月31日の純資産)を差し引いた200万円と簡単に求められます。
利益を求めるためには、収益(給与など)から費用(家賃、生活費など)を差し引いて求めるのが一般的ですが、全ての収益と費用を把握しないと計算できないので少し手間がかかります。実際に給与などの収益は給与明細から把握できても費用を把握するのは普通の家庭ではなかなか難しいのではないでしょうか。
この方法を用いれば簡単に一年間の利益が計算できるので、黒字家計なのか赤字家計なのかを容易に把握することができるので、ぜひ計算してみてください。ただし、あくまでざっくりと求める方法であり、どのような原因で黒字になったのか赤字になったのかを分析するためには収益(給与など)と費用(家賃、生活費など)を把握しなければならない点は注意しておきましょう。
家計のバランスシートを作成してみた感想
家計のバランスシートで、家計の財政状態がかなり明確になったと思います。ただ、やはり実践するのには勇気がいるなと感じました。現実を突きつけられるというか。
私は学生時代に奨学金を借りていたため、我が家では奨学金の返済がかなり重い負担になっていることが改めて確認できました。ただ、現状把握は今後の純資産を増やすために非常に重要な一歩です。数値的に把握すれば、どのように改善すべきかの道筋が明らかになります。
家計のバランスシートの作成を実践してみた感想としては、比較的簡単に作成できたかなという印象です。資産や負債の把握は通常の家計であれば比較的簡単にできると思うので、家計のバランスシートの作成は簡単に実践できるかと思います。思った以上に、家計の状況が把握できるので一度作成してみることをお勧めします。ただ、持ち家や土地がある場合は、その時点の時価(売却価額)を把握する必要があるので、少し大変かもしれません。その場合は、ざっくりと自宅や土地の価額を入力して作成してみても良いかと思います。
家計のバランスシートの作成方法のまとめ
家計のバランスシートは以下のステップで作成できます。
①資産(現預金と換金価値のある財産)を把握する。
②負債(クレジットの残債、住宅ローンの残債、自動車ローンの残債など)を把握する。
③資産-負債で純資産を算定する。
④上記の金額を以下の家計のバランスシートに入力する。
参考文献
家計のバランスシートについては、アンドリュー・O・スミス.2019.『アメリカの高校生が学んでいるお金の教科書』の第1章「お金の計画の基本」に言及されています。この記事はその内容を拡張して記述しています。
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