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138-42 山口県阿武町4630万円誤振込事件の判決出ました

 ついに空前の誤振込・使い込み事件の判決が出ましたね。被告の田口翔(25)が主張する無罪ではなく有罪判決。ただし執行猶予付きました(懲役3年執行猶予5年)。

 無罪を主張しているところだけ取ると田口君は全く反省していないと捉えてしまうかもしれないがそうではない。お金はすでに返金し阿武町とは民事訴訟で和解している(一応は被害者が許しているってことですね)。ただ刑事の責任に関しては自分には当てはまらないと主張している。

 なざ田口君は無罪を主張するのか?それは罪に問われた「電子計算機使用詐欺罪」(以下「同罪」という。)の解釈の問題だ。同罪の構成要件は①コンピューターなどに虚偽の情報を入力して記録した②不法な利益を得た、の2点を満たす必要がある。
 
 田口君側は「(誤入金があったとはいえ)自分の口座から自分のID・PWで別の所へお金を振り替えただけだから①は成立しない。道義的には悪いことだが同罪には当たらない」という解釈だ。

 一方検察側は誤入金したお金を自分のお金を偽って(正当な権限があると装って)他の口座へ振り替えた時点で「虚偽の情報」に当たると解釈して、その解釈が裁判所で通ったということだ。

 常識的に考えればそりゃ田口君が悪いだろう。その点は一応田口君も分かっている。ただ「電子計算機使用詐欺罪」に自分(田口君)が当てはまるかといえば構成要件から当てはまらないと考えた。民事上の責任と道義上の責任はあるが刑事上の責任はない。民事はお金も戻して町と和解したし、道義上の責任はもう世間から散々バッシング(社会的制裁)を受けてこれ以上取りようがないという考えは一定程度理解できる。そもそも論でいえば阿武町が間違えて田口君へ全額給付金を誤入金してしまったところから始まるからだ。

 一方で田口は刑事責任を負うべきだという意見も、他人の金と分かっている4630万円を使い込んだことには変わりないんだからこの意見も当然理解できる。

 筆者としてはどっちの言い分も理があると考えていてどっちの側にも付けないな、という事件だ。

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