知らない女のコと手を繋いで、こっちに手を振った、彼氏のなおとくん。
卒業間近。
進学先も決まり、暇をもてあましていた私はマッチングアプリで彼氏を作った。
1つ年下のなおとくん。
色黒で、細マッチョ。
走り屋だけど、本格的にレーサーになるために海外留学したいと夢を持っていた。
タイプではないけど、しっかり目を見て話を聞いてくれるあたたかい手の人。
私は正直、好きではなかった。
約1ヶ月後には高速バスで7時間かかるところへ引っ越す。
「俺なら、3時間で会いに行けるよ。」
なおとくんは気にしていないようだった。
そういう、おバカなとこがカワイイ。
(犯罪だよ、おバカさん♥️)
でも私は、すぐに別れるつもりだった。
友達と映画館に来た日。
お互い進学先が決まり、ようやく遊びにこれた。
「楽しみだね~映画。」
そう話していると、前の回が終わったようで、たくさんの人が出てきた。
(は?)
なおとくんが女のコと手を繋いで出てきた。
そして、私の目を見て手を振って外に出ていった。
「知り合い?」
友達が不思議そうに聞く。
「まぁ、···そんなあれだけど···。」
その場は濁して、館内にはいった。
映画が終わると、友達とお茶しようということになった。
携帯の電源を入れると、大量のメール。
「話したい」「電話でて」「なにしてんの?」「着信拒否とかやめて」などなど。
(映画見てるに決まってるじゃん!電源いれてないっつーの!)
とりあえずチラッと見て、お茶していた。
「携帯たくさん鳴ってるけど、大丈夫?」
友達が心配そうに聞いてくる。
「あー。さっきの実は彼氏なんだよねー。」
私は答えた。
「えっ‼️女のコと手を繋いでたでしょ?ショックじゃない?」
「ビックリした(笑)こんな経験初めてだから少し楽しい感じかも?」
「ちゃんと話したほうがいいって!私帰るから、じゃあ‼️」
友達が思ったより心配してくれて、帰ってしまった。
私は友達とやっと遊べたのに帰ってしまったこと、映画がなおとくんのことが気になって1割は楽しめなかったこと、とにかくイライラした気持ちで、電話をかけた。
なおとくんはすぐ出た。
「もしもし!何?何回も電話とかメールしないでよ。」
「ごめん、とりあえず話し長くなるから俺からかけ直す。」
ガチャ。
(どーでもいいとこ、律儀だな。ばか。そこじゃねーよ。)
なおとくんから、すぐかかってきた。
「俺、考えて、別れなきゃって分かってるから。でも傷付けたくなくて、女友達に頼んで映画館にわざといたんだ。でもやっぱり別れたくなくて。ごめん。今、空港にいる。」
(はっ?)
なおとくんの考えがさっぱり分からない。
とりあえず、空港の音がするのは分かる。
「俺、今から海外留学行く。このままじゃ、男として駄目だって思ったから、今日いこうと思う。」
(今日?そんな簡単に行けるの?というか、もう夕方だし東京まで行くのが精一杯では?)
「なおとくん、一旦落ち着こうよ。今から行ってどうするの?」
聞いてみた。
「俺だって分かんないよ‼️」
(私のほうがわからーーーーーん。)
「とりあえず、空港は一旦やめて。私も今行かれても、責任とれないっていうか。」
なんか怖くて、止めた。
「怒ってない?俺のこと、まだ好き?」
(···好きなわけないじゃん、とは言えないかぁ。)
「うーん、とりあえずちゃんと考えるから。」
好きとか嘘で言えない。
「分かった。大好きだよ。」
なおとくんがそういって、満足そうに電話を切った。
なおとくんのことは結局最後まで、さっぱり分からなかった。