#009 『絵本とは何か』を読む。 -第1章 絵本とは何か-
『絵本とは何か』(松居 直 ちくま文庫 2023年)を、読み進めている。
絵本の本質や魅力について学ぶことができるだけでなく、松居直の考えるよい絵本が多数紹介されているので、選書にも役立つ。
絵本について学びを深めたい方には、おすすめの一冊である。
一章ごとに、琴線に触れた部分を引用し、自分の思いや経験と結びつけて考えていきたい。
松居直(まついただし)とは
日本における絵本文化の発展に尽力し、数々の功績を残してきた松居直。
絵本について少しでも学んだことがある人ならば、その名を知らない人はいないだろう。
以下、簡単に紹介する。
1952年福音館書店創業に参画、編集部長、社長、会長、相談役を歴任。
NPOブックスタート初代理事長、会長を歴任。
日本国際児童図書評議会(JBBY)の設立に尽力、会長を歴任。
月刊絵本『こどものとも』創刊者。
石井桃子、瀬田貞治、松岡享子、松岡享子などと交流を深めるとともに、加古里子、赤羽末吉、堀内誠一、長 新太、瀬川康男、安野光雅、中川李枝子など、多くの絵本作家を発掘。
自身も絵本の文や再話などを手がけ、主な作品に『ももたろう』『ぴかくんめをまわす』『だいくとおにろく』など。
ディック・ブルーナの「うさこちゃん」シリーズや、エウゲーニー・M・ラチョフの『てぶくろ』など、戦後の日本に海外の優れた絵本を数多く紹介。
1965年絵本『ももたろう』でサンケイ児童出版文化賞、1993年出版界で初めてモービル児童文化賞 (現・ENEOS児童文化賞) を受賞。1996年日本児童文芸家協会より「児童文化功労者」の表彰を受ける。1997年AVACOのキリスト教視聴覚教育賞を受賞。
著書『絵本とは何か』(日本エディタースクール出版部([エディター叢書] 1973年/ちくま文庫 2023年)、『松居直のすすめる50の絵本 大人のための絵本入門』(教文館 2008年)、『絵本の力』(河合隼雄・柳田邦男 共著 岩波書店 2001年)など。
絵本は楽しむもの
絵本は教材ではない。
絵本の読み聞かせの効果として、言語の獲得、想像力や感性の発達、非認知能力の育成など、様々な効果が挙げられている。
しかし、絵本の読み聞かせを行う際、最も大切にしたいことは、子どもたちにとって絵本を読むことが楽しいということである。
先に挙げた様々な効果を得るという目的を達成するために、絵本の読み聞かせを行なっていると、子どももその意図を読み取り、純粋に絵本を楽しめなくなってしまう。
様々な効果は、副次的なもの。
子どもに絵本を手渡す存在として、肝に銘じておきたい。
かくいう私にも、過ちがあった。
長男がたどたどしくも平仮名が読めるようになった頃、絵本の読み聞かせを始める前に、「タイトル、読んでみて。」と、声をかけていた。
その声かけには、平仮名を覚えさせたいという意図があった。
絵本は楽しむものだという前提に立てば、絵本の楽しさを奪いかねない悪しき言動だった。
恥を忍んでここに記しておく。
絵本は父親に役割を与える
私も、絵本によって家族の中での役割を与えてもらっている父親の一人である。
長男(5歳10か月)は、夜寝る前に私の布団に入り込み、私に絵本を数冊読んでもらってから、妻の寝ているところへ移動する。
そのまま私の布団で寝てくれて構わないのだが、一緒に寝るのは母親とが良いらしい。
ともかく、長男には絵本を読んでもらうなら父親という意識がある。
次男(1歳4か月)も、絵本を読むのは父親だと思っている。
まだ、言葉で話すことはできないが、お気に入りの絵本を私に持って来る。
私に絵本を手渡し、膝の上に座る。
「準備はできたぞ。さぁ。」と言わんばかりの待ち構える姿が、ふてぶてしくも可愛らしい。
最近のお気に入りの絵本は、『じゃあじゃあ びりびり』『ぴょーん』『くっついた』『かお かお どんなかお』『だるまさん が・の・と』など。
日中、私と妻が家にいるときでも、絵本をもってくるのは決まって私の方だ。
やりたいことがあるときなど、少し大変だなと思うこともある反面、嬉しく、誇らしくも思う。
まとめ
絵本は楽しむもの
絵本は父親に役割を与える
絵本は楽しむものという当たり前のようで、見落としてしまいがちな大切なことが再確認できた。
男性の育児参加が叫ばれている現代、絵本の力はより見直されていくのではないか。
絵本の読み聞かせを通して、父親は、育児をする喜びを感じることができ、子どもは、父親からの愛情を感じることができる。
絵本は、親子の絆をつくり、幸せを運ぶ。
第2章へ続く。