介護ロボットで何ができるの?
みなさんが考えるロボットのイメージとは違い、厚生労働省の定義では「情報を感知し(センサー系)、判断し(知能・制御系)、動作する(駆動系)もの」をロボットと呼んでいます。そして、その中でもロボット技術が応用され利用者の自立支援や介護者の負担の軽減に役立つ介護機器を会議ロボットと定義しています。
どのような種類があるのか、いかに介護ロボットを導入して「介護をする側・される側の心身の負担が軽くなる」のか、今後の介護ロボットの未来などを解説します。
介護ロボットの種類
介護ロボットの主な種類は下記です。
また、装着型・非装着型など利用方法もさまざまです。
ここからは、上記で紹介した各種介護ロボットの概要、開発要件、開発中・販売中製品の特徴、導入施設での声を説明します。また、実際に現在導入できる製品についてもご紹介いたします。
移乗支援
移乗支援(装着型)
ロボット技術を用いて介助者のパワーアシストを行う装着型の機器
厚生労働省の定義
介助者が装着して用い、移乗介助の際の腰の負担を軽減する
介助者が一人で着脱可能であること
ベッド、車いす、便器の間の移乗に用いることができる
開発中・販売中製品の特徴
マジックテープなどを使い簡単に一人で着脱できる
腰に着脱可能なサポート器具をリュックのように背負ったり、腰回りに装着して利用
柔らかい素材や、エアバックなどを使って体の動きに寄り添う
筋肉の動きを検知し、サポートする
ケーブルなどがなく、動ける範囲は無制限で転倒防止にも役立つ
重さは3kg~
想定される利用シーン
ベッド回り、トイレ、浴室、抱きおこしや介護者の身体負担が大きい介助作業
人の体や重いものを持つ時だけではなく、中腰のシーンが多いためそこでも活躍
実際の利用施設の声
当初は「装着が面倒」「機器の重さに慣れる必要がある」「狭いところでは使いづらいのでは?」という意見が出てしまい、事業所内ではデメリットが多い印象になってしまっていた。しかし、装着後は毎年出ていた腰痛による休職が減り、職員自身にとってなくてはならない存在になった。また、利用者からも「前よりも職員に負担がかかっていないように見えるので介助の頼みづらさが減った」との声があがった。
移乗支援(非装着型)
ロボット技術を用いて介助者による抱え上げ動作のパワーアシストを行う非装着型の機器
厚生労働省の定義
移乗開始から終了まで、介助者が一人で使用することができる
ベッドと車椅子の間の移乗に用いることができる(※ベッドと車いすの間の移乗における使い勝手は、ステージゲート審査での評価対象となる点に留意すること)
要介護者を移乗させる際、介助者の力の全部又は一部のパワーアシストを行うこと
開発中・販売中製品の特徴
利用者に機器へ座ってもらったりベッドに機能がついていて離床をサポートするもの
利用者自身の力を利用する機器もある
利用者が乗る部分の着脱ができるものもある
防滴仕様で脱衣所からシャワー室への載せ替えができるものもある
想定される利用シーン
要介護度が比較的高め(座位保持困難)な要介護者のベッド、浴室、トイレなどへの移動
実際の利用施設の声
自力で立つことができない方や、介助者が2人必要な方の介助の際に役立ち、職員だけではなく介助を受ける側の負担も軽減された。腰痛予防だけではなく、2人必要だったシーンを1人で対応できるようになるため業務の生産性が上がっている。また、排泄時に職員がずっと体を支える必要がないため、利用者の羞恥心の軽減や尊厳を守ることができ、支えること自体も介助者の経験に左右されなくなり全ての職員が過不足のない介助ができるようになっている。
移動支援
移動支援(屋外移動)
高齢者等の外出をサポートし、荷物等を安全に運搬できるロボット技術を用いた以下の特徴を持つ歩行支援機器
厚生労働省の定義
モーター等により、移動をアシストする(上り坂では推進し、かつ下り坂ではブレーキをかける駆動力がはたらくもの)
荷物を載せて移動することができる
モーター等により、移動をアシストする(上り坂では推進し、かつ下り坂ではブレーキをかける駆動力がはたらくもの)
4つ以上の車輪を有する
不整地を安定的に移動できる車輪径である(砂利道、歩道の段差を通行する際の安定性は、ステージゲート審査での評価対象となる点に留意すること)
通常の状態又は折りたたむことで、普通自動車の車内やトランクに搭載することができる大きさである
マニュアルのブレーキがついている
雨天時に屋外に放置しても機能に支障がないよう、防水対策がなされている
介助者が持ち上げられる重量(30kg以下)である
開発中・販売中製品の特徴
押して歩く手押し車やカート型の形が主で、乗車して操作するものは少数
買い物を想定しているものが多く、前方をふさがないものや折りたためるコンパクトなものが多い
周囲の危険を感知し家族へ通知する機能を持つものもある
特につらい坂道の上り下りに特化したものもある
感覚的に使いやすいインターフェースになっている
自らの足で歩くような感覚で支援をする
歩行をサポートし、外出への億劫な気持ちを減らしたり躓きにくくするような機器
移動支援(屋内移動)
高齢者等の屋内移動や立ち座りをサポートし、特にトイレへの往復やトイレ内での姿勢保持を支援するロボット技術を用いた歩行支援機器
厚生労働省の定義
一人で使用できる又は一人の介助者の支援の下で使用できる
使用者が自らの足で歩行することを支援することができる。搭乗するものは対象としない
食堂や居間での椅子からの立ち上がりやベッドからの立ち上がりを主に想定し、使用者が椅座位・端座位から立ち上がる動作を支援することができる
従来の歩行補助具等を併用してもよい
標準的な家庭のトイレの中でも、特別な操作を必要とせずに使用でき、トイレの中での一連の動作(便座への立ち座り、ズボンの上げ下げ、清拭、トイレ内での方向転換)の際の転倒を防ぐため、姿勢の安定化が可能であれば、加点評価する
開発中・販売中製品の特徴
トイレなど、被介助者の座位からの立ち上がり動作および立位を維持するもの、任意の高さで止まるものなどがある
見た目は手押しカートのような形だが、アームなど稼働する部分が多くありそこで利用者の体を支えている
トイレ動作における利用者の身体旋回、着脱衣動作を支持する機器もある
被介護者のペースで歩いて移動できる
ベッド端座位、椅子、ソファー、便座等からサドルに乗り移り、立ち上がり・座り込みを補助し、立ち上がり後は通常の歩行車として使用できる
スマホやインターネット・クラウドに接続することで、見守りや介護記録管理、ヘルスケア、運動モチベーション喚起に繋がるサービスを提案する機器もある
転倒による衝撃を低減する装着型もある
想定される利用シーン
トイレ内動作、住宅内(浴室除く)、病院、介護施設屋内
自力での立ち上がり・着座に不安がある方
移動支援(装着移動)
高齢者等の外出等をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器
厚生労働省の定義
自立歩行できる使用者の転倒に繋がるような動作等を検知し、使用者に通知して、転倒を予防することができる。または、自立して起居できる使用者の立ち座りや歩行を支援できる。
自立歩行できる使用者の転倒に繋がるような動作等を検知し、使用者に通知して、転倒を予防することができる。または、自立して起居できる使用者の立ち座りや歩行を支援できる。
歩行補助具等を併用してもよい。
開発中・販売中製品の特徴
移乗支援と同様、腰に装着し負担が軽くなるものが多い
ボディスーツのように利用者が全身に身に着けることで関節の動きをサポートするものもある
想定される利用シーン
室内、屋外(舗装された道)
杖などを用いてでも自立が可能で、足を振り出すことができる要介護者
排泄支援
排泄物の処理にロボット技術を用いた設置位置の調整可能な以下の様な特徴を持つトイレ
厚生労働省の定義
排泄物のにおいが室内に広がらないよう、排泄物を室外へ流す、又は、容器や袋に密閉して隔離するもの
室内での設置位置を調整可能なものもある
開発中・販売中製品の特徴
脱臭効果
においが漏れないような仕様
センサーライトで位置がわかりやすくなっており夜間も使いやすい機器もある
家具に似せたデザインで居室に置いてあっても抵抗感が少ない
ロボットアームが臀部に残った水分~乾燥まで行うので介助者に臀部を拭かれる抵抗感や不快感を払拭できる
居室内のベッド横または近くに設置して使われることが多い
想定される利用シーン
居室(特にベッド周辺)
自力もしくは介助があれば移動が可能な方
夜間頻尿等の身体状況の問題や居宅内のトイレまでが遠い、段差がある、和式等の住環境の問題により居室内に腰掛トイレが必要な方
手足が不自由でお尻を拭けない高齢者
期待できる効果
排泄物の匂いや、トイレが部屋にあるということで羞恥心から介助者や家族を遠ざけたり、排せつを我慢してしまいおむつへの移行が早まってしまうことや、頻繁に処理をしなくてはならないといった職員の負担の改善が期待できる。
排泄支援(排泄予測)
ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器
厚生労働省の定義
使用者が装着する場合には、容易に着脱可能であること
使用者の生体情報等に基づき排尿又は排便を予測することができる
予測結果に基づき的確なタイミングで使用者をトイレに誘導することができる
開発中・販売中製品の特徴
手で持てるマウス、リモコンくらいの小さな機器
超音波を利用して膀胱の変化を捉え、排尿のタイミングを事前、事後で介助者にお知らせ
排尿のパターンをグラフで表示し、排泄リズムを「みえる」化できるものもある
起き上がりを検知する機能や排泄ケアを記録する機能があるものもある
想定される利用シーン
高齢者や排泄に悩みを抱えている方
実際の利用施設の声
下剤を服用後、一度に大量の便が出るとおむつから便があふれ、衣服やシーツが汚染されてしまう利用者がいたが、このロボットを導入することで、便が少量出たタイミングで駆け付けることができるようになった。また、排泄直後におむつ交換できるため、皮膚が弱い利用者の皮膚トラブルを未然に防ぐことができるようになった。
排泄支援(動作支援)
ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器
厚生労働省の定義
使用者が一人で使用できる又は一人の介助者の支援の下で使用できる
トイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援することができる
トイレ内での方向転換、便座への立ち座り、清拭の支援が可能であれば、加点評価する
トイレ内での使用者の姿勢や排泄の終了などを検知して介助者に伝えることが可能であれば、加点評価する
標準的な家庭のトイレ内で使用可能であれば、加点評価する
開発中・販売中製品の特徴
排泄後、要介護者は自然な軌道で支えられながら立ち上がることができ、立位状態の姿勢を保持できる
想定される利用シーン
排泄場面での立ち上がり介助や、立位保持の介助を必要とする被介護者
見守り・コミュニケーション
介護施設見守り
介護施設において使用する、センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた以下の様な特徴を持つ機器およびプラットフォーム
厚生労働省の定義
複数の要介護者を同時に見守ることが可能
施設内各所にいる複数の介護従事者へ同時に情報共有することが可能
昼夜問わず使用できる
要介護者が自発的に助けを求める行動(ボタンを押す、声を出す等)から得る情報だけに依存しない
要介護者がベッドから離れようとしている状態又は離れたことを検知し、介護従事者へ通報できる
認知症の方の見守りプラットフォームとして、機能の拡張又は他の機器・ソフトウェアと接続ができる
開発中・販売中製品の特徴
介護現場を映像で確認できる
検知履歴・映像録画機能がある
生体異常や離床、徘徊の検知、通知があり状態の把握ができる
身体拘束せずに利用者の行動をモニタリングできる想定される利用シーン
居室やベッドの近くに設置し24時間又は夜間のみ使用
実際の利用施設の声
不要な訪室を減らすことができ、余計な体力を使わずに済むようになった。また全体的にバタバタ感もなくなっている。勤務中の歩数も感覚ではあるが1/3くらいまで軽減できている。
在宅介護見守り
在宅介護において使用する、転倒検知センサーや外部通信機能を備えたロボット技術を用いた機器のプラットフォーム
厚生労働省の定義
複数の部屋を同時に見守ることが可能
浴室での見守りが可能
暗所でも使用できる
要介護者が自発的に助けを求める行動(ボタンを押す、声を出す等)から得る情報だけに依存しない
要介護者が端末を持ち歩く又は身に付けることを必須としない
要介護者が転倒したことを検知し、介護従事者へ通報できる
要介護者の生活や体調の変化に関する指標を、開発者が少なくとも1つ設定・検知し、介護従事者へ情報共有できる
認知症の方の見守りプラットフォームとして、機能の拡張又は他の機器・ソフトウェアと接続ができる
開発中・販売中製品の特徴
自宅で一人で生活する被介護者が転倒し動けなくなった場合、加速度センサー等のセンサー情報をもとに自動検知し介護者へ通報
複数部屋の見守りができる
離床など、各種異常検知機能を搭載している
要介護者の生活や体調の変化に関する指標を家族及び介護従事者等と共有が可能
スマートフォン、タブレット、PCなどからいつでも状況を把握可能
想定される利用シーン
一人暮らしの高齢者、家族、介護従事者
自宅内の各部屋、脱衣所、玄関等
実際の利用施設の声
生活のパターンが抽出できることで、ご利用者が自分自身で生活をしっかりと営まれているのかということを確認することができる。利用者が誤って部屋の設定温度を変更し高温状態になっていることがあったが、その場合もいち早く通知で確認することができたため大事に至らなかった。
コミュニケーション
高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器
厚生労働省の定義
高齢者等の日常生活全般が支援対象となり得る
高齢者等の言語や顔、存在等を認識し、得られた情報を元に判断して情報伝達ができる
双方向の情報伝達によって高齢者等の活動を促し、ADL(日常生活活動)を維持向上することができる
開発中・販売中製品の特徴
コミュニケーション機器なので会話機能は標準装備
音声による家電操作機能ができるものがある
見守り機能の種類は様々で安否情報、救助要請、活動量など
レクリエーション機能がついているものもあり、体操、ヨガ、クイズなど種類も複数ある
起床時にコミュニケーションをとって介助者が来るまでの時間をつなぐ目的もある
想定される利用シーン
介護施設、在宅介護全般
ベッドからの離床時に介助などが必要とされている方が居る高齢者施設
実際の利用施設の声
職員の方の投げかけに対して言語ではなかなか反応しにくい方でも、ロボットを使うことで明らかに表情やうなずき、体の動きなどに変化がある。また、スピーカーとしても使える機器は、テレビの音が聞き取りやすくなったり家族とのアクリル板越しの面会で会話がしやすくなったりしている。
入浴支援
ロボット技術を用いて浴槽に出入りする際の一連の動作を支援する機器厚生労働省の定義
要介護者が一人で使用できる又は一人の介助者の支援の下で使用できる
要介護者の浴室から浴槽への出入り動作、浴槽をまたぎ湯船につかるまでの一連の動作を支援できる
機器を使用しても、少なくとも胸部まで湯に浸かることができる
要介護者の家族が入浴する際に邪魔にならないよう、介助者が一人で取り外し又は収納・片付けをすることができる
特別な工事なしに設置できる
開発中・販売中製品の特徴
水圧式で感電の心配がない
座面が回転しシャワーチェアからの移乗が容易
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