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四月の読書記録 農村医療回顧録『朝もやついて』など
久しぶりに鴨川でも走ろうかと怠惰なベッドの上で考えつつ、toe(ポストロックバンド)を聴いた。歌よりはるかに饒舌な演奏が、ともすれば呟きのようなことばに質感を与えている。
松島松翠『朝もやついて』
佐久総合病院、2016年。
若月俊一のもとで佐久の健康管理システムをつくりあげた陰の功労者、松島松翠の回顧録。
佐久病院史にかかわる他の書物と比べて、個別具体的なエピソードが多いのが特徴。当時の運動体としての佐久病院を、一人称視点から追体験できるよい本だった。
色平哲郎『農村医療から世界を診る 良いケアのために』
あけび書房、2022年。
日経メディカルなどに執筆した記事集。賀川豊彦、中村哲、岩村昇、早川一光……いろいろな人物が紹介されていて、人脈の書として面白い。
地域でくらす人々の暮らしを診る医師が、世界のさまざまな時事問題や活動家、書物に関心を払い、タイトル通り「世界を診て」いる視野の広さに驚かされる。そうした人脈や視野を広げる姿勢、農村の生活と世界の問題との間の連続性、生活から立ち上がる哲学問題や社会運動に対する取り組み方に興味がわく一冊。