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介護業界の外国人材について【老人ホームはグローバル!?】

介護業界の外国人材
近年、介護業界に外国籍を持つ人材が増えていることはご存じですか?今回はそんな介護の現場×外国籍の介護スタッフについてスポットを当てることにしました。当記事は、施設勤務経験のある現役看護師が、現場の声をまとめ執筆しています。

介護業界で、なぜ外国人労働者が増えているのか

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2017年、日本政府は発展途上国を支援する制度、「技能技術法」を制定しました。技能技術法は、外国人を日本に一定の期間招き入れ、技能を習得した後、その技術を持ち、「母国の発展に貢献できる人材を増やすこと」を目的に始められたものです。これは、外国人技能実習制度とも言われています。さまざまな経済格差が存在する国際社会の中で、国同士が互いに調和しながら、発展を目指すことが期待されます。特に日本は先進国として、国際社会での役割を果たすことが、求められています。中でも、フィリピン・ベトナム・インドネシアの東南アジア3国と日本は、経済連携の協定を結んでおり、この繋がりは、相手国からも強い要望を受けていると言われています。

日本から見ても、深刻な人手不足となっている産業を支えると言う点で、技能実習生は、大きな助けになるのです。
現在の介護業界には、慢性的な人手不足の現状があります。
その一方で、高齢者が増え続ける日本で、2025年には、約55万人の介護人材が必要になると予想されています。(*1)介護の現場に、技能実習生の方が来てくれることは、人手不足が叫ばれている、業界の大きな助けとなることが期待されています。
また技能実習生の方にも、「介護業界で働くことのメリット」があります。と言うのも、「介護士」は国家資格で、取得した場合には、「介護ビザ」と呼ばれるビザを取得することができ、介護職をしながら、一定期間の在留資格を得ることができるからです。

厳しい中、頑張る外国籍の介護職員

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しかし、異国で、介護職として働くことができるまでの道のりは、厳しいものです。それは次のような点が挙げられるからです。

◆日本語の問題
技能実習生として日本に入国するには、日本語能力検定試験でN4-N3(*2)程度のレベルを目指す必要があると言われています。特に介護職は、「人対人」の、コミュニケーションが重要とされる仕事です。N4は日本語を話し、生活上は、”ほぼ”問題のないレベルに該当します。しかし、そこまで達成するのも容易ではありません。また仕事だけでなく、プライベートでコミュニケーションがうまく取れないことにより、技能実習生の精神には大きな負担がかかります。そんな中でも、外国籍の技能実習生や介護職員同士で、日夜学習し、彼らは頑張っていますと、力強い姿を見せていました。


◆技能実習生を雇用するのには、手間とコストがかかる
技能実習生を募集・雇用するには、非常に手間がかかります。
通常の求人であれば、フリーペーパーに求人を掲載したり、店先に求人のポスターを掲示したりと言った方法で解決することもできます。
しかし、技能実習生の雇用については、そうはいきません。多くの企業が、監理団体への加入することに始まり、技能実習の開始までは、煩雑な手間と膨大な時間がかかると言われています。
とは言っても、大切な仲間を迎え入れたい気持ちは、どこの施設も同じです。
各介護施設では、技能実習生や外国籍介護スタッフも働きやすいように、さまざまな工夫がされています。例えば、施設内の案内(ポスター等)が日本語だけでなく、英語やベトナム語など、他言語で書いてある場面はよく見られます。

◆生活のフォローは
慣れない環境で働き、生活するのは非常に大変なことです。まして、国が違うのであれば、私たちの想像を、超えるかもしれません。技術実習生は、主にベトナム、インドネシア、フィリピン出身等、さまざまな国籍の方がいらっしゃいます。しかし、雇用先の企業等で、技能実習生に対する生活のフォローが充分にされているとは言いづらいようです。しかし、彼らの同郷同士や、技能実習生同士のコミュニティーの中で、「日本での楽しみを探し、余暇にお出かけしながら、お互いの困っている点はないかとフォローしあっている」と、技能実習生は話してくれました。

現場の声

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施設入所を検討中の方から、「失礼だとは思うが、実際に外国人の方が介護スタッフとしている場合、コミュニケーション問題が心配なんですが」と言ったの声を、時折聞くことがあります。日本がアメリカやヨーロッパのような、「大陸」ではないこと、戦後、グローバルな環境に触れることが少なかった、高齢の方が少なくないことからすると、考えられる心配だと言えます。技能実習生を受け入れている高齢者施設での勤務経験がある筆者が、現場で伺った生の声を、ここでご紹介します。

◆入居者や入居者家族の声◆
・最初は抵抗があったけれど、非常に丁寧にケアをしてくれる
・可愛い日本語で、頑張って話しかけてくれるので、コミュニケーションを取りたいと思う
・彼女たちはリアクションが大きいので、元気がもらえる、分け隔てない
・(技能実習生が)母国では、看護師の資格を持ち、働いていたと聞いている。介護士ではもったいないのでは?

◆日本人介護スタッフの声◆
・介護業界もグローバルになったと思う、利用者にも良い刺激になっている気がする
・高齢者に対して敬う心は、どこの国も変わらない
・国家試験をパスするために、非常に一生懸命に働いている
・日本語の学習だけでも大変なのに、尊敬する、こちらも刺激になる

◆技能実習生や外国籍の介護士の声◆
・おじいちゃん、おばあちゃんカワイイ、好き
・どこの国でも、介護の内容は変わらない
・家族のために一生懸命働くために来たけど、介護はやりがいがある。
・母国でも同じ仕事をしていた

利用者様と、外国籍スタッフのほっこりコラム

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「日本語を、教えてあげる」80代の元教員のAさん
Aさんは、元小学校の教師だったと言うご経験もあり、非常に厳格な方で、同施設では”気難しい性格”だと言われ、施設でも一人で過ごされることが多い場面がみられました。そんなAさんの入居する施設に、フィリピン出身の技能実習生が入ってきました。実習生は日本語を頑張って勉強し、少しですが、日本語でのコミュニケーションをとれるようになります。しかし技能実習生は、利用者様の前で、よく日本語を間違えることがありました。そんな実習生を見たAさんは、「君、こっちへ来なさい」と言い、技能実習生に英語と日本語を教え始めました。Aさんが、実習生に上手に教える姿をみた、他利用者様はびっくり。Aさんは優しく教え、技能実習生も、笑顔を見せます。Aさんの授業を受けながら、実習生は今日も、日本語でコミュニケーションを取っています。

「今じゃ、孫だよ」90代のBさん
Bさんは戦後、外国人の往来が多い地域にお住まいだった方です。戦後すぐは、現在のように国際交流が活発ではなく、Bさん自身も、外国人の方相手に、辛い思いをしたと話されてることがありました。その為もあってか、外国籍の介護スタッフに対し、最初はマイナスイメージがあったようです。しかし、レクリエーションの際に、外国籍の介護スタッフが、一生懸命に日本の歌を歌う姿を見て、Bさんは段々と外国籍の介護スタッフに対しての抵抗感が薄れていったと話します。「今じゃ、孫だよ。」とBさんは笑顔で話してくれました。

まとめ

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外国人技能実習生の制度により、発展途上国の人材育成且つ、日本の人材不足を補填することも期待されています。とは言っても、実習生が、日本の介護士の国家資格を取得するのは厳しいのが現状です。しかし、現場では、多くの技能実習生や外国籍の介護士が日夜努力をされており、彼らが在籍していることで、さまざまな良い声が聞かれました。筆者は、外国人の技能実習生・介護職員にしかできない「介護」を現場で見てきました。彼らの力が、未来の私たちのパワーになっていることは、間違いない事実です。

(*1)介護人材の確保・介護現場の革新.厚生労働省.社会保障審議会 介護保険部会.


(*2)技能実習「介護」における固有要件について.厚生労働省HP.厚生社会・援護局

フッターB


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