そんな大事な事が「素人にわかりやすい」レベルまで分解できていいわけないですよね?何の勉強もしていないあなたが理解できている時点でなにかがおかしいと疑うべきです。
むかしむかし、当時大ブームだった「買ってはいけない」が実家に置いてありました。
世の中の食べ物や化粧品を実名で出して、人工甘味料や化学調味料が使われているとか、これは有害な化学物質で作られているとか言うのを強めの言葉で書き連ねた批判本です。
内容はけっこうわかりやすくて読みやすかったのですが、ひねくれた多感な時期に天邪鬼の目線でそれを読んでしまったおかげで、その中身はまっすぐ届かずに、結論ありきの煽動的でプロパガンダ臭い文言への嫌悪感のほうが強く残ったんですよね。
あのころは環境ホルモンとかダイオキシンとかBSEとかあったじゃないですか。そういう流行りに乗じて人々の不安を煽るだけ煽って、代わりにオーガニックだの自然派だのそういうものを売るというビジネスが社会全体に蔓延してたんですよ。
まあ今もですけど。現代でいう反ワクや陰謀論と親和する健康意識高い系商売と同じような感じですね。
間接的にとはいえ、週刊誌の知名度を利用してそういう風潮の片棒を担いでるなっていう感じはしましたので、直感的に悪認定しました。一応全部読みましたけど。(面白かったから)
これはどこの世界でもそうなのですが、強い言葉や大げさな表現、恐怖を道具に使ってくるのは、いつだって無知な人たちをコントロールしようとする人たちなんですよ。
主観や形容詞は極力省くようにっていうふうに教わってないか、わざとやってる人たちですよね。
薄汚い虫。
ー
現代まで脈々と続くそういう意識高い系みたいなのって、そこにお金をかけられるアタシ達、一段高いライフスタイルを生きるオレ達がかっこいいというマウント文化の系譜ですよね。
バブル期にマウント癖がついてしまった人たちの新しい遊び場。
ダメとされているものを食べている人、いいとされているものを選ばない人を見るだけで優越感を得ることができる。
高級車やアクセサリ、時計よりはずっと安いし、喜びは毎日続く。目に留まる度に得られる。
世の中で多数派とされているもの、大企業の製品を貶すだけで、自分はマジョリティどもとは違う特別な人間なのだと錯覚することができる。
最高のエンターテイメントじゃないですか。
だからマルチとも相性がよかったようですね。いわゆるマルチの売上トップ20の取り扱い商品ってご存じですか。栄養補助食品、化粧品、下着、台所用品、健康機器、美容機器ですって。
どんな人が狙われてるかがはっきりわかりますよね。
何も持っていない人の、他人と違う特別な存在になりたい、という気持ちは金になるんですよ。
ー
知識や教養の少ない人はその狭い視界でしか物事を理解することができないので「素人でもわかる説明が良い説明」とか言っているうちに、小学生並みの防御力で詐欺師や陰謀論にとりこまれたりしてしまいます。
人のやっていないことをやりたい。
人より上に立つ近道が欲しい。
その気持ちにつけ込まれてしまうんですよね。
幼いころに一を知って十を知った成功体験があると、456……って体系的に学ぶのが負けみたいに感じられてしまう。
10に早くたどり着く方法だけを探すようになるんです。
そうやって自分は他人とは違う特別な存在と演出しないと褒めてもらえなかったからですね。
もうその根を抜くことはできません。
偽りの天才性を金で買おうとしている限り、これからも誰かを見下しながら誰かに搾取され続けるしかない。
近道は売っています。ですが、たどり着けるとは限りません。
金で買えるのは優越”感”だけであって、楽して手に入るものは実はこの世にありません。
あなた以外の人たちは今日も、地道に階段を一歩づつ登りながら新しい景色を見ているんですが、わかりませんかね。
〇〇歳のあなたは、〇〇歳にふさわしい知識と教養と能力を身に着けていますか?
身に着けようと努力しましたか?
いまも努力を続けていますか?
そして、あなたは知らないでしょうけど、学び続けている人はゴール(10)などこの世のどこにも無いという事を知っているんです。
知らないのはあなただけなんです。
努力したことがないからわからないんですよね。
健康食品とか生活用品絡みの広告やレビュー、ステマ、だれかのおすすめだとかSNSやらなんやらかんやらそういうところにふわふわ漂うあの胡散臭さに敏感になってますか?
嘘、大げさ、紛らわしい、別にそれじゃなくてもできる。
「素人でもわかりやすい説明」って本当に信用できると思います?
そんな大事な事が「素人にわかりやすい」レベルまで分解できていいわけないですよね?
見栄張らなくていいですよ。
何の勉強もしていないあなたなんかにそんなにわかりやすく伝わる時点でなにかがおかしいと疑うべきです。
簡単に何かを買ってはいけないと言うような人から、物を買ってはいけません。
そういう意味では、そういう手口のサンプルとしてはいい本でした。
今度古本屋で探してみようかな。
おしまい。