a bag of marblesと休む
本作品は、フランスの作家であるジョセフ・ジョッフォの「Un sac de billes」という自身の回想録を綴った小説を漫画にしたものだ。この作品は、本作品以外にも1975年に「小さな赤いビー玉」という名前で映画化されている。さらに、2017年にも「A Bag of Marbles (Un sac de billes)」という名称で映画化されている。いわば映画映えするストーリーなのだろう。なお、映画版は2つともみたことないので、いつかは見てみたい。
本作の物語は、ナチスドイツに侵略をされたフランスにおける、あるFrench Jewishの兄弟の物語だ。第二次世界大戦下のナチスドイツの行動の悲惨さを描く作品はさまざまある。本作品が私にとって稀有だと感じるのは、ナチスドイツ占領下のフランス(におけるユダヤ人の受難)を描いている作品であることに加えて、それが少年の目線で描かれているからだろう。
まず本作品を読み進める上で、ナチスに侵略されたフランスが上記の図のように、占領初期から中期においては、占領されている地域とFree Zone、いわゆる自由地域があったことは理解しておく必要があるだろう。
本作品は、占領地域のパリから自由地域へさまざまな困難を抱えながら移動をして、移動した先でも問題にぶつかりながら成長をしていく兄弟の話だ。
本作品前半は、占領地域のパリから自由地域に移動する話を第1部として、後半では、自由地域での発生する問題、家族との再開・別離・そして再開の話を第2部として扱っている。
絵柄は上記のように水彩画っぽい雰囲気。全体的に柔らかい筆圧もあり、苦難の物語でありながら悲壮感は少ない。少年目線の苦難はあるが伸び伸びとして目線が表現されているのであろうか。また、上記の1シーンは、今後発生する物語を大きく予感させる緊張感ある1シーン。とても良い雰囲気だ。
上記のように少しコマの中の描写が簡略化されすぎていて、集中力を欠いているように感じられる描写もある。が、全体的に構図も飽きないように映画的な構図で描かれているコマも多く、決して退屈はしないコマ運びだと思う。
また、本作品の特徴の1つだと思われるが、フランス北部から南部へのロードムビー的な要素も見どころの1つかと思われる。途中で危険な目にもあうが、機転を利かせて、また、兄弟助け合って、さらには色んな大人に助けられて切り抜けていく姿はとてもドラマチックだ。そして、南フランスに抜けたところから始まる第2部冒頭の1ページが上記のページだ。とても解放感ある雰囲気が伝わってくる良いページだと思う。
最後に、本作品は英語の作品ではあるが、とても読みやすく、2回も映画になるような作品であることからもわかるように、内容はドラマチックでありながら、のびのびとした子供の目線が感じられる作品だ。マウスやアンネの日記等とも比較しながら読んでみると良い漫画経験になるのではなかろうか。
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