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メタ・バロンの一族(上)と休む
現在(2021年8月)は、過去に例を見ないコロナの拡大により、東京では医療現場は病床が逼迫していると報道されている。コロナはワクチンと治療薬両方揃わないと鎮静化しないのだろう。そして、日本でもコロナにより有名人・一般人ともに亡くなるべきでないタイミングで多くの人が亡くなった。死亡者が日本に比べて多い諸外国も同様なのだろう。その一人として、本作品の作者であるファン・ヒメネスもあげられる。ファン・ヒメネスは2020年、コロナにより亡くなった。
ファン・ヒメネスは、1943年アルゼンチン生まれの漫画家だ。16歳にしてバンドデシネを発表するという早熟っぷりだったようだ。
本作品は、メビウスの代表作である「アンカル」に出てくるメタ・バロンというキャラクターのいわゆるスピンオフ作品だ。「アンカル」に出てくるメタ・バロン一族の歴史を高祖父の時代から描いている。
第1章は、高祖父にあたるオトン・ファン・サルザの話だ。全てはここから始まる。つまり、オトンは初代メタバロンということだ。オトンの人生は壮絶でドラマチックな展開を経る。一族の秘密の漏洩、一族の存続の危機、家族や仲間の死、さらには最初の息子の死といった展開が60ページの中で矢継ぎ早に展開をしていく。
「アンカル」の物語の接続はこの1ページに集約されている。メビウスとヒメネスの絵柄の違いも是非堪能されたい。
第2章は、オトンの血を継ぐアグナルがどのように誕生したかを描くストーリーだ。2人目の息子であるアグナル誕生についてもドラマチックなストリーが展開される。第2章の見どころは、分け合ってアグナルが母と一緒に7年間修行するところ。あとは、以下のような摩訶不思議な生き物と、機械が同居している世界観だろうか。
肉食獣エオダクティル
殺人マシーン
第3章は、アグナル、つまり2代目メタバロンの話だ。この章では、アグナルの宿命が描かれている。ストーリー的にはものすごい面白い章だ。ストリーを語ろうとすると完全にネタバレになるのでここでは省略する。この章で一番印象に残ったのはオトンが持っていた銃だ。これかっこいい。
第4章は、衝撃の展開である。まさかという出来事が立て続けに発生する。そして、一連の悲劇の中生まれたのが3代目メタバロンとなるテット・ダシエである。本作品は一族で繰り返されるカルマのようなものが1つのテーマらしい。そして、初代、2代目と同様3代目も体に不具を抱えて誕生する。4章には、別のスピンオフ作品にもなっているテクノプリーストも登場するのでそこも楽しみである。そして、本作品を読んでようやくアンカルの世界に広がる世界が理解できた気持ちになる。そういう意味で本作品は、うまく本家「アンカル」の説明しきれていない部分を拾っている気がする。
そして、第4章で上巻は終了する。続きは本作品下巻の紹介で。