たとえだれからも愛されなかったとしても。

 栗本薫『翼あるもの』は、まだボーイズ・ラブとかJUNEといわれるジャンルが存在しなかった頃に書かれた作品です。

 この作品は上下巻で同じ出来事を別の視点から描くという凝った構成になっているのですが、ぼくが取り上げたいのは主に下巻で描かれている森田透の物語です。

 透は、上巻の主人公である今西良の、いわばシャドウとして生きてきた若者です。

 良と同じグループで芸能人としてデビューしたものの、良の影であることに甘んじることができずに脱退、その後は転落の人生を送っていきます。

 しかし、そうなってなお、透は良のことを忘れることができません。

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