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ダーツ。幅と深さで効果はどう変わるのか。

平面の布を立体にする手段の一つにダーツがあります。
普通に服を作る時は体の立体に合わせて布を摘んでダーツを作るので、何がどう作用しているのかは考えたことがありませんでした。ぬいぐるみ作りにしても粘土で作った土台に巻いたラップを展開すれば、勝手にダーツの形も出来てしまいます。なのでダーツの形が布の立体化にどう作用するかを考える必要もありませんでした。
ですが、それを考えねばならない時が来たのです。
ぐったりエビフライ部長を作るために。

始まり

単純な形ではありますが、人生初、全く参考にする型紙無しでぬいぐるみを作りました。

このぐったりエビフライ部長を10cmで作った時、顔の緩やかなアールはくるみボタンの土台に布を巻いたことで出来ました。それを15倍にしたぬいぐるみの顔、およそ30cmの造形はどうしよう…ということになったのです。
作りたい形はフリスビーのようなモノです。楕円形の布とそれより二回り大きな楕円形、それを繋ぐマチを作ればできたのですが、そうすると角ができてしまう。薄べったいドームを作りたかったので、単純に考えて、ダーツかな、と思い至りました。

←マチの立体  ダーツの立体→


いつも通りに、まあ、簡単にできるだろうと思っていました。

ダーツの構造

ダーツは布のカットしたラインに対して水平の横幅と垂直の深さ(高さ)でできてます。

その形の差でどんな効果があるのか、幅と深さを違えて6パターン作ってみました。
まずは深さ3cmのダーツで幅が
6cm と 4cm と 2cm

幅3cmが一番立体が高く、幅が短くなるにつれてだんだんなだらかになります

次は深さ6cmのダーツで幅が
6cm と 4cm と 2cm

やはり幅が大きいほど立体が高くなります
では深さ3cmと6cmの違いはというと、斜めになっている距離が長くなっています。

横幅🟰立体の高さ
深さ🟰マチ

と考えると造形するにあたって効果を当て嵌めやすいかな、と思いました。
更に実際のぬいぐるみの型紙で考えてみます。
テディベアの型紙で頭の丸みを出すのに、大きめのダーツが作ってあることが結構あります。だいたいはこれに頭のマチパーツがあり、頭は3つのパーツでできてることが多いですが、とりあえずダーツのマチとしての効果を脳内で整理するために絵にしてみました。

このアウトライン側の辺(横幅)の長さで頭の丸みが変わり、アウトラインから中央に向かっての長さ(深さ)でマチに当たる部分ができる…感じでしょうか。

次に深さは“マチ”の役割だけなのか、長さによってできる差は何か、という疑問です。
寸法は違いますが、深さの短いものと長いものを見る角度を変えて比べてみました。

幅が長くて深さが短い
幅が短くて深さが長い

この2つを比べると深さが短く幅が長い方がダーツの終わりが目立つのがわかります。

○幅5×深さ5→角度が急、ダーツ終わりが目立つ

○幅2×深さ10→緩やかなカーブ、終わりが馴染みやすい。エクボができにくい。

となると、幅に対して一定以上の深さがないとダーツが目立ってキレイな仕上がりでなくなってしまうということになると思います。
マチを付ける方法ではなくダーツで立体にする理由の一つとして自然でなだらかな立体化を挙げるなら、深さの確保は大事ということです。試作を見る限りでは
幅の半分:深さ=1:3
くらいまでを基準の長さにするのが良さそうです。

もうダーツをいじるの怖くない

なんだか分かりづらい上に面白みがなくなってきたので、ダーツでぬいを作る実例を一つ。
最近ハイキュー!の月島くんを作ったのですが彼の前髪の短さが並ではなく、どうしても頭の中央にあるダーツが髪で隠しきれませんでした。
そこで思い立ったのがダーツの分割。

左の頭は仮付け前髪をめくっています

顔の型紙の外周と後頭部の型紙の外周が同じ長さにすればどんなアレンジを加えても縫い合わせはできます。なので、深さの短いダーツを3つ作ることで深さの長いダーツ1つの代わりにしました。多少元の形とは違うものができますが、そこはお好みで。私はその出来栄えがかなり気に入ったので採用しました。これで今後も前髪ベリーショートのキャラにも対応可能になりました!
こういう発見があるので“ものづくり”はやめられません。すごく楽しい…。

以上が“ダーツ”の効果実験でした。
何に役に立つのか、いつ役に立つのかは分かりませんが、色々腑に落ちて納得できたので楽しかったです。読んでくださった皆様に「へぇ〜」くらいに思っていただけて、更に立体造形の一助となれていたらとても嬉しいです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

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