警察官の一言
「運転免許試験場」での話。
試験官は現職の警察官である。実技試験を受ける際には、助手席に同乗して採点を行う。
私はマイクロバスを運転するために、中型免許(限定なし)の免許を取得したのだが、その試験には7回ほど落ちた。
5回目の試験に落ちた時に、発着場に戻ってきて車を降りる前に警察官が私に言った言葉が忘れられない。
「私は警察署での勤務で事故処理を担当している中で、大型車両の事故を何度も見てきました。それらの大半は確認ミスによるものです。車線変更や右左折の際のハンドル操作時に、必要な安全確認を怠ることで起こる事故が多い。方向指示器を出して、安全確認をしてからハンドルを動かすというのは鉄則です。みんな最初はやっているのに、だんだん慣れてくると忘れていきます」
「私は試験官をやりながら、あのような悲惨な事故を防ぐには、免許を取ろうとするひとに、その悲惨さを伝えることが大事だと思っています。今、試験で試されていることは、本当に実際の事故を防ぐために重要なことばかりです。それをしっかりと心に刻んでください。今日の試験では、目視とハンドル操作がほぼ同時であり、これでは安全を確認したことにはなりません。確認をしてからハンドルを動かす。そこをしっかりと修正して、次の試験に臨んでください」
免許試験場の試験は厳しいという話をよく聞くが、逆に、現場を知っている警察官が試験官だからこそ、このようなアドバイスができるのだろうと思った。
「事故を防ぎたいという思いを持って試験官をやっている」
という言葉。
そして、
「確認をしてからハンドルを動かす」
運転席に座った時にいつも思い返している。