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殺人者の心の内を探る。 ネタバレ「マインドハンター」感想

「海外ドラマフレンズ」は、海外ドラマ好きの26歳女性と29歳男性が海外ドラマについて自由に楽しく語るアカウントです。YouTubepodcastで音声配信もしてます。今回は「マインドハンター」について話していきたいと思います。

作品概要

マインドハンターは犯罪者プロファイリングを題材にしたNetfixオリジナルのドラマシリーズ。2017年にシーズン1、2019年にシーズン2が公開され、シーズン3の制作も決まっている(のだが制作は未定 ※後述)。

『セブン』や『ファイトクラブ』の監督であるデヴィッド・フィンチャーが製作総指揮を務めていることでも話題になった。本作のベースとなっているのは、『マインドハンター FBI連続殺人プロファイリング班』元FBI行動科学課の捜査官ジョン・ダグラスとマーク・オルシェイカーの共著であるノンフィクション本。

あらすじ

本作では「犯罪者プロファイリング」が題材となっている。犯罪者プロファイリングは「行動科学」を使って犯罪の性質や特長を分析し、犯人の特徴をあぶりだしていくという犯罪捜査の手法。現在では一般的になっているが、物語の舞台は1970年代で、まだ犯罪者プロファイリングが確立をしていなかった時代。

主人公のFBI捜査官ホールデン・フォードとその相棒のテンチらが、さまざまな凶悪犯罪者と直接面会を重ねたり、実際に凶悪犯罪を捜査しながら、犯罪者プロファイリングの手法を確立していく。

※以降ネタバレあり

感想① 淡々としたストーリー展開だけど、飽きずに見続けられる(29歳男性)

フェイバリット映画を聞かれ「ファイトクラブ」と答えたこともあるくらいのフィンチャー好きの自分は、デヴィッド・フィンチャーの犯罪サスペンスと聞いて観ないという選択肢はなく、公開直後にすぐ見始めた記憶がある。

本作にはいわゆる"ふつう"の犯罪サスペンスで観られるような派手な殺人シーンや激しく犯人を追い詰めていくような描写はほとんどないし、次回への期待を煽るわかりやすいクリフハンガーもないのだが、観れば観るほどのめりこんでしまう不思議な魅力があった。

ちなみに、フィンチャー映画で言えばセブンよりもゾディアックに近い雰囲気かもしれない。

基本的に会話劇が中心の本作だが、一番の見どころといえばやはり刑務所に収監されているシリアルキラーと実際に面会し、殺人を起こした心理を会話しながら丁寧に分析していくシーンだろう。シリアルキラーの発する言葉や挙動の一つひとつに神経を研ぎ澄ませながらインタビューを行っていくさまは、スリリングかつ観る側の怖いもの見たさとも言うべきような知的好奇心をくすぐってくる。また、ここでの会話のリズム感や不思議なテンポ感の気持ちよさも、観ていて怠くならない理由な気がする。

はじめは手探りでプロファイリングを行っていく主人公フォードだが、だんだんとコツをつかんみはじめ、目に見える成果も出していく。同時に、自信をつけたことで明らかに行動がエスカレートしていく。

FBIという巨大組織の中で、いわば新規事業部であるホールデンたちの行動科学科。凝り固まった組織内のルールや手続きとギリギリのところで付き合いながらプロジェクトを進めていくわけだが、そうした中でグレーな行為をいとわないホールデンはかっこよくもあるのだけど、「こりゃ長くは続かないな…」と見てる側をハラハラさせてくる。

仲間にたしなめられ、ついに上層部からも処分を検討されても行動を改めることはなかったホールデン。恋人にも愛想を尽かされ精神的にも追い詰められ始めたところでシーズン1のクライマックス、それまで信頼関係を積み上げてきたと思い込んでいたシリアルキラーに伸びに伸びた鼻っ柱を折られる。観てる側としてはある意味でスカッとする展開だった。

また、個人的に気に入ってるプロファイリングは、シーズン2に出てくるサムの息子(デビッド・バーコウィッツ)とのシーン。いわゆる劇場型のシリアルキラーで、新聞社や警察に犯行についての手紙を送ったことで、いっとき時の人となっていた人物。

どんな恐ろしい男なのかと思って見ていると、その実態は目立ちだがりで自己承認欲求にまみれた小人物であるということがプロファイリングを通して明らかになる。見事なプロファイリング術だった。こんなやつに命を奪われた人の内心を思うと、とても浮かばれない気持ちになる。

感想② 役者とキャラクターが魅力的!(26歳女性)

エド・ケンパー役のキャメロン・ブリトンがすごかった。まず、とにかくでかい。初登場のシーン (ホールデンとの初面会)の際の画面奥から看守と共に歩いてくるシーンの威圧感たるや。看守との比較で余計に大きく見える。ホールデンの首を掴むシーンでは、首に指が回ってしまうのではないかと思うくらい手がでかい。ホールデンが折れちゃう!

シーズン1最終話、入院中の病院ではベッドから体がはみ出ている。ホールデンとの対格差によって、余計に緊迫感が増すシーンになっていた。ちなみにキャメロン・ブリトンの身長は196cmと十分でかいが、実際のエド・ケンパーは206cmとキャメロンよりも10cmも大きいらしい。怖すぎ。

大きさによる迫力はもちろんだが、エド・ケンパーという人物の異様さ、言うなれば「ちぐはぐさ」を見事に演じていた。大きいからと言って「鈍い」「狂暴そう」といった雰囲気は一切なく、冷静で理知的な印象のケンパー。しかし、じつは面会中に人の話をまったく聞いていなかったりと、サイコパスな片鱗も見え隠れする。それでいてなぜか親しみやすく優しそうにも見えるなど、ちぐはぐな印象が見るものを不安にさせてくる。眼鏡と髭のせいで表情が見えにくいのもあり、とにかく何を考えているか分からない。そんな感じで見事にエド・ケンパーという人物を体現していた(実際見た目もめっちゃ似てる)。

ちなみにキャメロン・ブリトンは「アンブレラ・アカデミー」でヘイゼル役を演じていたのだが、見た目が違いすぎて全く気付かなかった…。

また、主人公のホールデン・フォード役ジョナサン・グロフも素晴らしかった。実はミュージカル俳優として華々しい経歴の持ち主で、「春のめざめ」にて第61回のトニー賞主演男優賞ノミネートされたほか、「ハミルトン」でジョージ3世役、「アナ雪」シリーズではクリストフ役を演じるなど、枚挙にいとまがない。gleeで他の「春のめざめ」組とともに活躍していたのも印象に残っている。

本作での彼を見て、最高の「無表情俳優」だと思った。ライアン・ゴズリングにも劣らない無表情俳優と呼びたい。無表情だけど、実はものすごく感情豊かで、顔が全然変わらないのになぜか伝わってくるという微細な演技が素晴らしいと思った。

また、表情と同じく淡々とした話し方・声も魅力的だった。ディズニーで王子様を演じるような、本来はハイトーンで綺麗な声の持ち主であるジョナサン・グロフ。いっそ幼い印象すら受けるのだが、まったく抑揚を付けずに犯罪者と対等に話すから、見てて不思議な気持ちになった。むしろ全てのキャラクターと同じトーンで話すので、それがこの作品全体に淡々とした印象を与えるのかもしれない。

感想③ シリアルキラー好きも大満足(29歳男性)

『殺人博物館』というサイトを以前からよく見ているようなシリアルキラーに興味のある人間なのだが、やはりエドケンパーやサムの息子(デビッド・バーコウィッツ)、チャールズ・マンソンなど、有名シリアルキラーがつぎつぎに登場するのはうれしかった。顔も皆そっくりだし。

ちなみにチャールズ・マンソン役のデイモン・ハリマンはワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッドでも同人物の役を演じている。

関係ないけど、シーズン1では毎回スポット的にある殺人犯のシーンが差し込まれるのだが、それがBTKであることを予想しており、実際に的中したのはうれしかった。あと殺人博物館はほぼテキストで構成されていてめちゃくちゃ軽いので、スマホが通信制限されていても見られるのでおすすめです。

シーズン3の制作がとん挫?

シーズン3製作が決定していたのだが、無期限保留になっているというニュースが。なんと!

こちらの記事によると、

・2019年12月の時点でジョナサン・グロフやホルト・マッキャラニーら出演者たちは契約から解放された
・製作総指揮・監督のデヴィッド・フィンチャーが、ただいま別の企画に集中しているという事情があった。

だそう。なんとかシーズン3の製作お願いします!

音声でも話しています↓


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