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皆伝 現代文 読解01 文章の構造/構成について

「テーマ=文章で書きたいこと」は、小説でも評論でも題名に書かれていることが多いんです。評論の場合は、題名と、最初の段落の一行目、最後の段落に書かれていることが多いですね。
「文章全体の意味」を理解するためには、下記の個所を読みましょう。こういった箇所がキーセンテンスです。
           
タイトル-主題/テーマです。何について書くかがわかります
第1段落の冒頭-全体に関しての意見 
     最後の行- この段落に関しての意見
第2段落の冒頭-この段落に関しての意見 
     最後の行- この段落に関しての意見
第3段落の冒頭-この段落に関しての意見 
     最後の行- 全体に関しての意見

こういうところと、問題文に引いてある傍線部を読むだけでも、文章全体の意味は分かると思います。もちろん、こういうキーセンテンスの書いてある個所や、傍線部に「それは」「そのような」とある場合には、前の部分も読んで、「それ」「その」の意味を理解する必要はあります。
キーセンテンスがわかると、この文章で筆者が一番言いたいことは何かという問題に対しては、最後の段落、特に最後の行に書いてあることが多いとわかります。時間の節約になりますね。小論文で、要約しなさいと出題されても、キーセンテンスをまとめれば、だいたい粗筋、要約になっています。
読解ができると、得点にもつながりやすいということが、わかったと思います。

第一段落の冒頭や、最後の段落の最後の文というように、どこに書いてあるかに注意して、キーセンテンスだと判断できるようにしましょう

(例文)
「          トランプ政権と人権
 トランプ政権は人権を軽視している。例えば、中東各国からの入国制限が挙げられる。これは安全な生活を求める人の人権を守ることに繋がらない
 ところで我々は歴史上、言論の自由への封殺がしばしば戦争につながったことを知っている。例えば、アジア太平洋戦争前と戦争中の日本が典型だ。そして、今トランプ政権はメディア批判を繰り返している。これが危険なことは明白である。
 結局、言論の自由を含む人権が守られてこそ、世界平和につながる。我々は彼らにその政策への否を訴え、ジャーナリストを支援する必要がある。それが平和につながるからだ。
                          
                   著者 報道の自由を守る会有志」

タイトルを見ると、テーマはトランプ政権と人権だとわかります。
第一段落の冒頭にある「トランプ政権は人権を軽視(している)」がキーセンテンスだとわかります。この文章全体のキーセンテンスですね。皆伝では、一文全部でなくても、一文の一部でもキーセンテンスと表現します。
「例えば」があるので、その具体例ですね。ここはそんなに大切ではありません。前に抽象的なことを言っているので、その説明を具体的に繰り返しているだけです。最後の行はもう一度「これ=入国制限は人権を守ることに繋がらない」と繰り返しているので、この段落の全体をまとめるキーセンテンスです。
第二段落も一行目にあるので「言論の自由への封殺がしばしば戦争につながった」がキーセンテンスだとわかります。その次は「例えば」なので、軽く読み流します。最後の行は「これが危険」とあるのでキーセンテンスですね。「これ」はメディア批判です。
最後の段落には「結局」というまとめる言葉があるので、キーセンテンスがあるとわかります。
「人権が守られてこそ、世界平和」がキーセンテンスです。最後の行は「それ=メディア批判を含む人権の軽視政策に否を訴えて、ジャーナリストを支援すること」が「平和につながるから」というキーセンテンスだとわかります。平和につながる「から」という理由が書いてあるので大事だということでもあります。

文章全体を起承転結などのグループ/意味段落に分けた時は、そのグループの冒頭と最後の一文が大事なんです。一文があまりに短い時(一行の半分以下)は、大抵は二文目も大切です。

「             温暖化について

 近頃、季節や天候が不順になっている。これは温暖化のせいらしい。そして、温暖化は人間生活にとって破壊的だという人がいる。が、本当にそうだろうか。
 温暖化によって、雨が降らなくなり、旱魃が起こっている地域がある。こうした地域では、食糧難も危惧されるだろう。一方で、これまで砂漠だった地域に雨が降り草原になったり、草原が森になったりすることもある。そうした地域では、食糧生産や燃料の調達が容易になり、人口も増える可能性がある。つまり、場所によって温暖化の影響は異なる。
 結局、温暖化は一部の人間にとっては有害であり、一部の人間にとっては有益なのである。」

 この文章で筆者が一番言いたいことは何か、一文を抜き出しなさい。

当然、キーセンテンスから抜き出します。一文なのでタイトルを書いてはいけませんけどね。

解答 結局、温暖化は一部の人間にとっては有害であり、一部の人間にとっては有益なのである。
補足 一文を抜き出すので、「文頭から。/丸」までを抜き書きします。書きぬくと表現する人もいます。
最後の段落が一番大切で、「結局」というまとめの言葉もあるし、タイトルの「温暖化」という言葉も入っています。三つの要素があるので、ここが筆者の一番言いたいことだとわかります。

キーセンテンスはどこかというと、太字のところです。
近頃、季節や天候が不順になっている。これは温暖化のせいらしい。そして、(一般論)温暖化は人間生活にとって破壊的だという人がいる。が、本当にそうだろうか
 (例えば)温暖化によって、雨が降らなくなり、旱魃が起こっている地域がある。こうした地域では、食糧難も危惧されるだろう。一方で、これまで砂漠だった地域に雨が降り草原になったり、草原が森になったりすることもある。そうした地域では、食糧生産や燃料の調達が容易になり、人口も増える可能性がある。つまり、場所によって温暖化の影響は異なる。
 結局、温暖化は一部の人間にとっては有害であり、一部の人間にとっては有益なのである。

第二段落の冒頭は、場所としてはキーセンテンスがありそうなんですけど、例えばという合の手を入れることができます。具体例を言っているとわかるので、大切ではありません。

*構成/文章の構造に関する出題があったら、場所以外にも、段落と接続詞(「しかし」、「つまり」)、副詞の「例えば」に特に注意します。例えばは具体例を書いています。たいていは大事ではないんですけど、「本文は、抽象論と具体例を交互に出している」を正誤判断しなさいという出題もあるので、気を付けましょうね。


◆よくある大きな構造(話の展開の仕方)としては、以下の三種類があります。殆どの場合は、全体を3つ、4つ(起承転結)に区切ることができます。構造・構成を問う出題は、共通入試で頻出の形式ですね。


一般論/引用と、それを否定する筆者の主張か、それに付加した筆者の主張
①一般論
「一般に、男は外で働き、女は家で働くのがいいと言われる」又は、引用=他人の意見「加藤は、その著書の『ジェンダー論』の中で、ジェンダーは時代と地域で異なると言う」
②結論は、筆者の意見「以上のことから考えて、私はジェンダーの再定義を提案したい」。

全体の文意を問われたら、②筆者の意見 をまとめましょう
筆者は、私はと書いてあるところに注目します。よくある誤選択肢は「田中は、『ジェンダー論』のなかで~と書いている」のように、著者と著作の組合せを間違えるものです。田中さんではなくて、加藤さんなら正文なんですけどね。

例)問「傍線部1について、筆者の考えを書きなさい
②自分/筆者の意見の書いてある部分から答を探しましょう。一般論や他人の意見などどうでもいいのです。


①抽象②具体例/例示を交互に出す
「トランプ政権と人権」という例に出した文章は、抽象と具体が交互に書いてありましたね。

抽象「共産主義は否定的に言われることが多い」具体「例えば財産権がない」

入試では、抽象の方が大事です。大抵の解答は、抽象部分にあるからです
例外的に、時折、具体例にキーワードを織り交ぜる著者もいますね。以下は例外。

例)問「傍線部1とはどういうことか?具体的に書きなさい」
この場合は、②具体例の部分から答を探して書きましょう。

また、問では、具体例を出して、抽象的な言葉のどれに当てはまるかを問われることもあります。
例)問「地獄の沙汰も金次第という言葉がある。これは本文中のA資本主義、B共産主義のどちらか?」
答はAですね。


対概念の比較対照/対比 
よくある対になった概念は、 A西洋とB東洋(日本) A自然とB人間 A前近代とB近代以降
ですね。

「A/Bを否定して、もう一方A/Bが優れていると言われることが多い(一般論)、実は、筆者の結論としてはどっちも大事、あるいは、BはAと同じだ」という折衷した結論に至る構成が多いんです。
例えば、東洋医学は根拠がなく、科学的な西洋医学は優れていると言われることが多い(一般論)。しかし(疑問を投げかけるための逆接の接続詞)、果たして本当にそうだろうか。結論として、筆者としては効果が出ている以上は東洋医学も、西洋医学と同じように扱うべきと考える」
こういう折衷(両方を引き立てる、一方を切り捨てない)で終えることが多いですね。

例)問「全体の文意を正しく書いてある選択肢を選べ」
1AもBも大事(折衷○) 2AはBより大事
1が正解のことが多いです。「より」と書いてある選択肢は、折衷ではないので、不正解のことが多いですね。
1西洋医学も東洋医学も大事 2西洋医学は東洋医学より優れている
1が正解です。

「西洋」「東洋」が、対立概念でもあるし、文中で繰り返し出てくるキーワードだということはわかります。比較なので、西洋と東洋の異なる点をはっきり読み取りましょう。そこがよく出題されます。
今回の文章では、西洋は科学的、東洋はそうではないというところが違いですね。
 
*話の変わり目では「ところで」「さて」などを使うこともあります。トランプ政権と人権の文章でも「ところで」と書いてあるので、ここで意味段落が変わったとわかります。
一文字下がっているという見た目の形式でわかるのが形式段落で、一文字下がっているかどうかに関係なく、話が変わったなというところが意味段落です。

キーセンテンスは、その文章で大切な文ということです。キーセンテンスを並べると、その文章を要約したことになります。つまり、あらすじを書くのと同じことです。キーセンテンスをつなげて読んだときに、その文章を過不足なく理解できれば、キーセンテンスを全て抜き出したことの証拠になります。逆に言えば、キーセンテンスを並べてもその文章が理解できないならば、自分が気付いていない、抜き出し忘れたキーセンテンスがあるということです。

タイトルや、段落の最初と最後という場所の他にも、キーセンテンスを見つける方法があるのでまとめてみます。9つあります。

⓪タイトルと同じ言葉のある文、段落の冒頭、または最後の文。
①各段落(特に最初の段落)の最初の文、(特に最後の段落の)最後の文 あまりに短い場合は二行のこともある。
②つまり、要するに、結局のところ の直後に書いてあることが多い。

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