第31話 怪談『透過』(バス・お題『月』)
月の光は時に狂気を呼び起こす、そんな事聞いたことはありませんか?
ある地域に住んでいた恵子さんは学生時代、新聞部の取材で海で最近、子供が崖の上から飛び込み、亡くなるという事件が多い事を取材しておりました。
学校が終わり、夕暮れ時、海の近くの団地に行くことに、その団地は子供も多いはずでしたが、外には誰もおらず、買い物している主婦の姿さえ見かけない、昼とも夜とも言えない時間のその団地は、不思議な空間に思え、まるで違う世界に来たのではないかと錯覚するほどでした。
取材にきたと言えば聞こえはいいですが、具体的にやる事が思いつかず、団地の公園のブランコに座りボーッとしていたそうです。
気づくと隣のブランコに小学校低学年くらいの女の子が座っていました。
「おねーちゃん、こんな所でなにしてるの?」
まるで、その公園に人がいる事が不思議なような声でその女の子は聞いてきました。
「おねーちゃん、学校の新聞部なんだ、最近、この近くの海で事故が多いでしょ?
何でかなと思って」
「うん、時間がなくなる前に私たちはいくの」
「どういうこと?」
「良かったら私の家で少し遊びましょ?」
少し怖くなりましたが、これも取材だと思いその女の子の家で遊ぶことに
その女の子の家に行くと、子供たちが4、5人おり、中でゲームをしてました。
「おねーちゃんがね、私たちのこと知りたいって」
そう、公園にいた女の子が言うと、ゲームをしてるいる子達はまるで聞こえてないかのように、ただ黙々とコントローラーを握り、無表情でゲームを続けていました。
女の子が食卓のテーブルに座ると、
「不思議でしょ?実は私、あの崖からこの前、投下したの」
「どういうこと?」
「あの子供達には私のこと見えてるんだけど、私はもうこの世にいないと言えば分かりやすいかな
あ、大丈夫だよ、おねーちゃんが来ること、あの子供達は理解したから」
いったい私はどこに来たのか、恵子さん不思議な感覚に陥ったそうです。
「ほら、この団地静かでしょ、この時間は特に、少し出でいる月も紅くて、でね、その時間、月が紅い時に存在が無くなるようにあの崖から投下したの
そうする事で私たちの存在が周りから透過しないように順番にそうしようと決めてね」
「、、、意味が分からないよ、君はここにいるし、あの子供達もここに」
「ほら、今度はあの子だよ、次の綺麗な紅い月の日に」
そう言って指した先には坊主頭で黙々と、ゲームをしている子供がいました。
「やめようこんな事」
恵子さんが言うと
「やっぱりおねーちゃんには分からないか、ありがとう話聞いてくれて」
不思議な感覚のまま、その子供達がいた家を後にする事に、外にでると夕暮れ時の空に月が見えており、その月が怖いほど、紅く、紅く、紅くなっていました。
次の日、新聞部の部長にその事を報告すると、キョトンとした顔をして、
「子供が崖から飛び降りる?そんな事件あったか?」
そう言われ、色々な人に聞いて周りましたが、そんな事は無いと、あの事件そのものが無くなっていました。
恵子さん今でも夕暮れ時に紅い月がでているとその事を思い出すようです。
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