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第91話 怪談『踏切』(バス・お題 『12月』)

友人Tの話になります。 

ある夜、踏切で待っていると前方に白いワンピースを着た女性が立っていたそうです。
辺りには友人とワンピースを着た女性しかいなかったそうです。 

 ふっとその女性が倒れて遮断器の向こうでパタリと突っ伏した。
遮断器が上がり助けに向かってみると、気を失っているだけみたいで
声をかけてみると
微かな声で  
「ありがとうございます。助かりました」 

それが12月の初めの方でした。
その後もちょくちょくとその女性と、踏切で会う事に気づきました。
話してみると、とても楽しくて、すっかり仲良くなったので、思い切って、

  「良かったら今度、お茶でも私の家でしませんか?ここから近いんです」 

と誘ってみると 

「いいんですか?是非!」
と、とても乗り気だったので、来週良かったらと誘い、別れたそうです。

ただ、友人T君ですが、一つ気になる事があったそうです。 

それは服は毎回少し違ったりはするんですが、必ず白のワンピースを着てるそうです。 

そして、12月のこの寒い時期にも関わらずワンピースしか着てない事。
寒くないのかな?
もしかしてこの前倒れたのも寒くて倒れたのでは?
とか考えていたそうです。

そして、1週間が過ぎ約束の日、待ち合わせは、わかりやすいように踏切の所にしたそうです。 

時間通りに来た彼女はいつも通りのワンピース姿でした。
12月も半ば、流石に寒いのではと

「寒くないですか?」 

「大丈夫ですよ」 

とニッコリと。
そして、自分の家に行き、お茶をする事に。
話しも盛り上がり、この人と付き合ったりできるといいなと考えたそうです。
T君は思い切って、 

「あのもし良かったら僕と付き合いませんか?」

そう言うと少し困った顔になってるのか
何も言わなくなったそうです。

少し気まずい雰囲気になってしまって

「あ、お茶入れ直しますね」 

と台所に向かいお茶を入れ直していると

「もう少し、早く貴方と出会いたかった」

と声が。部屋に戻ってみると、そこには誰もいなかったそうです。

玄関から出ようにも台所を通らないと出れない為、通った形跡はなく、窓も空いておらずでそこには最初から誰もいなかったみたいな感じになっていたそうです。

T君、またその女性と会えないかと踏切の前を通るようにしたそうですが、二度と現れなかったそ うです。



動画はこちら。


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