第17話 怪談『権現様』(バス・お題「山」)
私の母の田舎は山に囲まれ、隣の家も1キロは離れてるくらいの場所にあります。
田舎の家だけあって大きく家だけでかるく300平米はあったんじゃないかというくらいの家でした。
親戚も多く休みなどで集まると親戚10人以上は来てましたね。
集まるとご馳走が食べれるので嬉しかったですね。
買い物なんかも10キロは離れているため、移動販売車が来てました。
おばあさんと買い物している時にお菓子を持って走って逃げたりしてました。
おばあさんに払ってもらったりして
今では田舎でも車が普及してますので、そんな光景も珍しいかもしれませんね。
山に囲まれているので家の裏はもちろん山でした。
その山の上に少し朽ちたお社があり、そこをおばあちゃんなんかは「権現様」と読んでましたね。
親戚が集まるとそのお社にお供えをしてました。
お昼過ぎの事でした、
「バスくん権現様にお供えしてく来てもらえるかな」
「はーい」
そういって、私はお供えを持って行く事にしました。
玄関をでた所に大きな蛾がいました。
蛾の模様は様々ですが、私が見た時の蛾は人の目の模様でしたね。
あまりに気持ち悪くて今でも覚えてます。
その蛾を避けるようにし、私は「権現様」に向かいました。
山と行っても「権現様」までは私のおじいさんが草や木を切り開いて登れるようにしており、距離にして150メートル位のためよっぽどその道を外れない限りは迷子になる事もありません。
しかしその時に限りあの人の目のした蛾が道沿いにある木に止まってました。
そのまままっすぐに行けばすぐに「権現様」しかしその蛾は避けたいそう思ったら道を外れてしまいました。
そうしましたら、小さい山ですがもう右も左も分からなくなりました。
「権現様」も目に入っていたはずなのに今は何処かわからない、そんな状態でした。
怖さとだんだんと日が落ちてきて暗くなり始めてきました。
田舎は暗くなるのは早いですね、夕方でもかなりの暗さでした。
私は怖くなり、動けなくなりました、近くの木の下でうずくまり気づいたら疲れた事もあり眠っていたみたいです。
そして暫くした時に
「大丈夫かい?」
という声が聞こえてきました。
気づいたら目の前に帽子を被り、優しい目の感じの大人の方がいらっしゃいました。
「迷子かい、ついておいで」
そういってついていくと、何処をどう歩いたのか
分からなかったのですが、「権現様」のお社までつきました。
「ここからは帰れるかな?」
こくんと頷くと
「もう大丈夫だよ、ここから下にまっすぐ降りてね」
そういって私が見えなくなるまで見守ってくれてました。
家に着くと
「こんな時間までなにしてたの?
ダメじゃない」
と怒られました。
「怖い虫がいてそれで...」
と事情をはなしました。
「無事で良かったよー、でも誰だろうね、その人」
と言ってくれましたがおばあさんにも後でその事を話すと
「その蛾は悪いもの、悪いものに連れてかれそうになったんだよ、でも権現様が守ってくれたのさ、ちゃんとお礼言うんだよ」
と。
私は次の日母と一緒に権現様に行きお礼をいいました。
あの1度以外気持ちの悪い蛾も見なくなりました。
あの時にお兄さんが「もう大丈夫だよ」と言ってくれたのはもしかしたら悪いものはもう大丈夫だよと言う意味もあったのかもしれません。
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