第35話 怪談『すべては闇の中』(バス・お題 万怪談)
(この話は、カードゲーム『万怪談』のリプレイです)
あれは忘れもしない三年前の夏、社員旅行で泊まった旅館での出来事です。
その日私達は、N駅に集まり、そこから行くことになりました。まあ電車で行こうって話になりました。で、行き先はN県のN市っていうところになるんですけれど、まあそこに着いて、早速ね、荷物をまとめて、のんびりしようかってことで、みんなは各々自由時間だったんで、何をしてもいいよってことだったんですね。
旅館とはいいつつも、実は民宿でして、近くに海がある、と。まあ海に、行ってもいいよと。で、温泉入ってもいいよと。まあそんな風なところでした。
で、会社の人の一人が釣りをしようって僕を誘ってきたんですね。
「釣りですか。まあ僕やったことないんですけど大丈夫ですかね」
「ああ大丈夫ですよ。あの、僕教えますんで」
「ああ、そうですか。じゃあ行きましょうか」
って言って、そこの民宿で竿を借りて行ったんですけれど、周りに誰もいないんですね。何か僕と友人の二人だけなんですよ。ちょっとね、気持ち悪かったですね。
で、着いて釣りを始めたら、これがですね、あの、まあそんなことあるのかなって思うんですけど、面白いほど沢山釣れて、もうすぐにバケツ一杯になったんですよ。で、もうどうしようかなって思って。
「もう一杯になったんでそろそろ帰りますか」
って振り向いたときに、その友人が僕をボンって海に突き落としたんですよ。えっ?て僕は思ったんですけれど、僕はそのまま気を失いまして、結局ね、気づくと病院でした。
これはね、僕、目覚めたときにはね、どうしよかって思ったんですけれど、その友人がなぜ突き落としたかっていうのはさすがにね、警察沙汰になりまして。警察が来て事情聞いたんですね。
そしたら「女の呻き声が聞こえてきた」ってその友人が証言するんですね。泣いてる声で、「あいつを突き落とせ、あいつを突き落とせ、あいつを突き落とせ!」って聞こえてきてそれが脳裏に離れなくて、僕のことを突き落としたって言うんですよ。ちょっとね、僕としては信じられない話だったんですけれど。
そんなことがあって僕が入院してると、その病院のところで、僕も呻き声を聴いちゃったんですね。で、その内容が「恨んでる、恨んでる、恨んでる」ってまるで僕のことを恨んでるかのように。その間ずっと高熱でうなされてまして。ちょうど3日目に熱は下がったんですよ。下がると同時にパタリとその奇妙な怪音は止んだんですね。
で、この話をですね、僕、全然関係ない人に話したんですよ。
「こんなことがあったんですよ」
そうすると、
「お前、その女の声ってこんな感じだったか」
って言われて
「そうです。なんでなんですか?」
って聞いたら、
「なんか俺のところにもその呻き声聞こえてきたぞ」
って言われたんですね。で、また別の友人にも話したら、また聞こえたって話ですね。
どうやらですよ。この話を聞いてしまうと、しかも真夜中にです、話が聞こえてくる、と。今こうやってこの話を聞いている皆さんも、真夜中に、あなたの家にも遊びに来るんだと思います。
このようにね、結局のところね、なんでその友人が僕のことを突き落としたのか、わかりませんでした。まあほんとに霊のせいかもしれないですし、もしくは僕に恨みがあったのか、解んないまま、その友人は会社を去って行きました。
世の中には、このように理屈で説明しきれない話が山ほどあるんだな、っていう風に思った次第です。
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