即死チート全部読んだけどもうちょっと何か読みたい思ったので「姉ちゃんは中二病」シリーズを読んでみた。
1.はじめに
藤孝先生がお勧めしていたこともあり、「姉ちゃんは中二病」1巻~7巻を読んだので感想を書きます。イラストは当然違う人(An2Aさん)ですが、かわいい絵をかいてもらっているなと思いました。
2.「姉ちゃんは中二病」と「即死チート」の共通点について
とりあえず、読んでいてこれは「即死チート」で見た設定だと思ったことを、並べます。
(1)舞台が同じ星辰(せいしん)高校
ついでに、「姉ちゃんは中二病」の主人公である坂木雄一くんは新1年生で、多分高遠夜霧くんと同学年のはずです。一応クラスは別みたい。
(2)クラスに獣人がいる
「即死チート」の獣人と言えば、鳳春人くん(鳥人)なわけですが、「姉ちゃんは中二病」では、小西妃里(こにしゆり)さん(猫人)がヒロイン級(公式にはヒロインではないが、描写的にまあこれはヒロインだろと思うレベル)で登場します。属性は、一応お嬢様かな。そして、獣人を支配する皇(すめらぎ)家の話は「即死チート」よりも詳しく書かれています。
(3)壇ノ浦千春さんが登場する
壇ノ浦千春さんというのは、「即死チート」のヒロインである壇ノ浦友千佳さんのお姉さんです。5巻での初登場こそ、体形が太いこともあってネタ扱いでしたが、6巻以降は壇ノ浦流瘦身術で瘦せたため、普通に美少女になりました。初対面の印象が悪すぎたので、主人公は全然相手にしていませんが、ヒロイン度合は相当に高い(個人的には上記の小西妃里さんよりも上かな)です。壇ノ浦千春さんが登場することは事前に知っていましたが、ここまでの主要メンバーだとは想像していなかったです。ちなみに、壇ノ浦千春さんは主人公の姉である坂木睦子さんと同級生(2年生)です。
(4)坂木睦子さん(姉ちゃん)の世界観(ワールドオーダー)が「努力だけが報われる残酷な世界」
世界観(ワールドオーダー)というのは、「即死チート」におけるギフトみたいなもので、例えば魔法は実は存在するみたいな世界観を持っていると、実際に魔法が使えるようになるみたいな概念です。「努力だけが報われる残酷な世界(ジャスト・ワールド)」といえば、「即死チート」では賢者アオイのギフトでしたね。ざっくり解説するなら、努力して手に入れた力のみが有効になるというものです。坂木睦子さんは、この世界観を用いて、主人公である弟の坂木雄一くんに、凄い強度の鍛錬をさせています。
3.主人公である坂木雄一くんについて
初めは、姉ちゃんに謎武術の鍛錬を強いられていたこともあり、強さは壇ノ浦友千佳さんと同じぐらいかなと思っていたのですが、4巻で即死耐性持ち(正確には心停止を自動回復する)であることが分かって、思ったよりも強いぞと感じ始めました。そして、ラストバトルでは、人類滅亡クラスの邪神をワンパンで倒した上に、「人類の守護者」であることが分かったので、賢者級は軽いと思います。(姉ちゃんとセットだと天盤級にとどきそう)
そして坂木雄一くんは、高遠夜霧くんよりも一般人なので普通にモテます。公式でもヒロイン1~3が登場しますし、壇ノ浦千春さんとかも含めればヒロインっぽいのは10人くらい登場します。
4.藤孝先生が好きそうなことについて
「姉ちゃんは中二病」と「即死チート」を読んだことで、作者である藤孝先生が好きそうなことが分かった気がするので並べます。
(1)謎武術
藤孝先生自身は、あとがきを読んでいても武術自体が好きなことは感じるのですが、作中では謎武術化(壇ノ浦流とか)することで、何でもありにするのが好きそうだなと思いました。
壇ノ浦友千佳さんが「即死チート」でヒロインに抜擢されたのは、壇ノ浦流を暴れさせたかったからというのが、理由の1つなのは間違いなさそうです。
(2)異能者の女の子
もちろん、異能者の男の子もたくさん出てきますが、あきらかに女の子の比率は高い気がします。そして「姉ちゃんは中二病」ではヒロインも兼ねるので、典型的なハーレムラノベになっています。(後述しますが、多分ここが「姉ちゃんは中二病」と「即死チート」の違いだと思ってます)
ちなみに、姉ちゃんこと坂木睦子さんは美少女ですが、残念過ぎるのでどうみてもヒロインには見えないのは、公式の意図する通りです。
(3)俺TUEEE
高遠夜霧くんは凄く分かりやすいですが、坂木雄一くんも想像以上に強くて、藤孝先生はこういう俺TUEEEものが本当に好きなんだろうなあと思いました。ちなみに、「姉ちゃんは中二病」のヒロインの1人に、ラノベ作家の先輩がいるのですが、次回作のネタだしで「クラスが異世界に転移する話」とか「俺TUEEEの極地とは何か」といった話題が出てきて、セルフネタだと思いました。
5.俺TUEEEものにおけるヒロインの話
強い主人公が、女の子を助けることで、女の子がヒロインに昇格するというのは、俺TUEEEものに限らずラノベの王道だと思います。2人目を助ければ、当然ヒロイン2が登場し、最終的にはハーレムラノベの出来上がりと。
私は主人公がヒロインを助けるのはすごく重要だと思っています。私が「即死チート」のUEGを気に入っているのも、一番の理由は眷属を非常に大事にするというところなわけで、主人公には身内となったヒロインを大事にしてほしいと思ってます。
ところが、俺TUEEE作品としてみると、ヒロインの存在はなかなか悩ましいのだなあと「姉ちゃんは中二病」を読んでいて思いました。1人、2人なら、主人公が守りつつ敵を蹴散らすでいいわけですが、10人とかいると全員を集めるだけで大変です。俺TUEEEなんだから、何人いようと主人公の能力で守ればいいだろというのは確かにあるのですが、この場合ヒロインはほぼ戦力外となります。さらに異能者ヒロインの場合、どうしても戦闘力にばらつきが生じてしまうという問題があって、強ければ主人公と肩を並べて戦えるみたいな展開もできますが、ヒロイン全員がそのクラスに強いと、そもそも主人公が俺TUEEEにならないのではという問題が出てきます。そして、戦闘力にばらつきがある場合、弱い方が空気になりやすいです。とか色々と考えた結果、俺TUEEEとハーレムヒロインというのは思った以上に相性が悪いのではと思ったわけです。
例えば「姉ちゃんは中二病」の正ヒロインは1巻から登場する「吸血鬼」の野呂愛子さんなのですが、後半は明らかに目立っていません。覚醒すれば強そうな雰囲気はあったのですが、本編では戦闘要員としては活躍しませんでした。正直なところ、坂木雄一くんにどう考えてもまともに相手されていない、壇ノ浦千春さんの方が目立っているぐらいです
ついでに言うと、個人的に「姉ちゃんは中二病」で一番かわいいのは、アウターのエンデさんだと思いました。アウターというのは、世界の理から外れた人間という意味で、不老かつほぼ不死で、あまりに暇なので人間を殺しあいさせたりして暇つぶしをする、人でなしの集団です。エンデさんはそのアウターの筆頭で、主人公と邪神の戦いに介入しまくります。ちなみに、ボクっ娘で、最低でも数百年は生きていそう。そして、人でなしということで性格はとても悪いです。個人的には「即死チート」の主神マルナリルナと同じくらいかな。立ち位置としては、主人公である坂木雄一くんの明確な敵でありながら、6巻、7巻では正ヒロイン達を押しのけて、目立ちまくりです。
このあたり、藤孝先生の作品には、倫理面でどう考えても問題があるキャラクターが登場しすぎるという問題はあるなと思いました。「姉ちゃんは中二病」の場合、一応元の日本が舞台なので、死んでもリセットできたりしないのでなおさらです。その上で、アウターの人でなし度は、結構やばいものがありました。
さて、「姉ちゃんは中二病」を読んで、上記の結論に達した結果、「即死チート」では、そのあたりを上手く処理しているのではないかと思ったわけです。
6.「即死チート」におけるヒロインの話
「即死チート」におけるヒロインは誰かというと、壇ノ浦友千佳さんに決まっている、ではありません。正解は、誰もいないです。即死チート14巻を読むと、高遠夜霧くんと壇ノ浦友千佳さんが元の世界に戻ってきた際に、友達になって欲しいと言って終わりました。つまり、高遠夜霧くん視点だと、あくまで壇ノ浦友千佳さんは、初めてできた同級生の友人でヒロインではありません。まあ、ここは自分でも書いていて、ちょっと無理があるなと思いました。普通に壇ノ浦友千佳さんがヒロインでいいと思います。
重要なのは、高遠夜霧くんは長年のΑΩ生活の結果、人間関係が極めて希薄であるという設定です。つまり、壇ノ浦友千佳さんですらヒロインか微妙なラインなわけで、ハーレムエンドなど絶対に発生しないということが確定していると言うわけです。(まあ、壇ノ浦友千佳さん視点だと、高遠夜霧くんは婿候補筆頭だと思いますけど)
「即死チート」では、例えば「研究所」の二宮諒子さんとか、「機関」のキャロル・S・レーンさんとか高遠夜霧くんをよく知っている女の子も登場して、一時期は一緒に行動したりすることもあったわけですが、彼女達はヒロインに昇格することは絶対にありませんでした。
そして、ヒロインが壇ノ浦友千佳さんしかいない状態で確定しているのであれば、後は簡単です。高遠夜霧くんは主人公として、壇ノ浦友千佳さんだけを守って、最後まで俺TUEEEをすればいいだけですね。そして、実際にそうしてきたわけです。
そう考えると、「即死チート」は想像以上によく考えられた作品のように思えてきました。
7.「即死チート」における研究所のはなし
「即死チート」における「独立行政法人高次生命科学研究所」(以下、「研究所」という。)の話をします。
私が「即死チート」に初めて強く興味を持って読んでみようかなと思ったのは、コミック版の高遠夜霧くんの過去編で、研究所って実にSCP財団みたいだなと思ったからでした。ところが、私の書籍版「即死チート」の感想では、研究所や過去編についてはほとんど触れていません。書籍版で追加されている巻末書下ろしは、ほとんどがΑΩの過去編であるにも関わらずです。
この理由を簡単にいうと、「即死チート」の研究所は、組織としてはたいして強くないと感じてしまって興味を失ったからです。具体的には、私は研究所は組織としては賢者級がいいところで、どう考えても賢者シオンの方が強いと判断しています。SCP財団は、一応SCP世界では最強組織という格はありますが、「研究所」は「機関」と比べてもなんか弱そうというのも拍車をかけてます。
例えば、高遠夜霧くんの安定化を図るため高遠朝霧さんを雇用した実験は、もっと早くから当然やるべきだったと思っていて(SCP財団におけるDクラスを用いた実験)、私が研究所の能力を疑う理由になっています。二宮諒子さんの反応を見ていると、研究所と名乗っているわりには、高遠夜霧くんを恐れ過ぎていたり、科学よりもオカルト要素の方が強そう(お札を張った回廊とか)なこともあり、前身はおかくしさまの村だと思っています。このあたり、即死チートへの恐怖が強すぎて、組織としての意思決定が上手くできていないと感じています。
以上の理由で、「即死チート」の研究所への興味を失っていた私ですが、「姉ちゃんは中二病」を読んだことで、「即死チート」における研究所は、高遠夜霧くんの人間関係をあえて希薄にし、ヒロインを限定するために設定したのではという仮説が生まれました。とりあえず、ここに気がついただけでも「姉ちゃんは中二病」を読んだ意味がありました。
ついでに、能力の付与方法も、世界観(ワールドオーダー)よりも、大賢者ミツキが支配する異世界でギフトをもらったのほうが、納得感があります。
その結果私の中では「即死チート」は「姉ちゃんは中二病」を踏まえて書かれた作品で間違いないと考えています。
まあ、「姉ちゃんは中二病」を読んでしまうと、元の日本というのが、私たちが知っている日本と同じかは微妙なところだと思いますが(例えばクラスに1人は獣人がいるのは、どう考えても違いますよね)
8.おわりに
藤孝先生は、間違いなくかわいい女の子を書く才能はあると思うのですが、合わせて倫理面で許容できるかを聞いてくることが多いのが悩ましいです。UEGとか賢者シオンとかテレサさんとか、エンデさんとか全部そうですね。エンデさんは本編の描写を拾うだけでも人類悪といった酷さですが、本編の描写もイラストも実に気合が入っていて、魅力的なのが実に困ります。
あと、壇ノ浦千春さんが痩せたらこれだけ変わったということは、「即死チート」では一貫してネタ要員だった守護霊のもこもこさんも、痩身すれば超美人(流石に人妻だから美少女はないな)になるのだろうかと思いました。なんというか、全く想像がつかないんですけど。
それでは、ごきげんよう。
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