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「マザーグール」感想。「鬼滅の刃」と類似性があるという指摘は、慧眼だと思いました。
1.はじめに
この記事は、よしきさんが2024年のお勧め漫画6位に上げていた「マザーグール」を、2025年2月6日にようやく読み終えたので、その感想記事になります。
先に断っておくと、私はかわいい女の子が出てくる漫画は好きですが、百合作品及びクソデカ感情には興味がない人なので、「マザーグール」が想定している読者層では絶対にありません。そして、通しで1回読んだ時点での感想なので、作中に書かれていることを読み飛ばしたりしている可能性はあります。あとは、ネタバレは無茶苦茶あるので、それもご容赦いただければ幸いです。
2.「鬼滅の刃」と「マザーグール」の話
私が「マザーグール」読むことになったのは、よしきさんのお勧めのおかげなのですが、より具体的には「鬼滅の刃」と「マザーグール」は「同じことをやりたかったのではないか」という、よしきさんの次の記事を読んだのがすべてのはじまりになります。
「鬼滅の刃」は私は今でも名作だと思っていて、特にお館様自爆からの最終決戦まで(具体的には16巻から23巻まで)は、これが一続きの話なのは奇跡だなと思っています。
そして、この時点ではまだ「マザーグール」は読んでいませんでしたが、私は無惨様のことがとても好きなので、「世界で一番やさしい鬼退治」というのは私的にはこういうことだよ、ということで書いたのが以下の記事です。
「鬼滅の刃」については私の中では整理がついたので、残る「マザーグール」についても、読んでみて「世界で一番やさしい鬼退治」について確認しないとなといけないなと思っていました。
3.「世界で一番やさしい鬼退治」について
まず、私が「マザーグール」で一番気になっていた「世界で一番やさしい鬼退治」についてですが、島の謎が明らかになってくる後半(具体的には7巻以降)は、なるほどなーと思いながら読みました。
「鬼滅の刃」と「マザーグール」は、漫画のジャンルとしては全然違いますが、少なくとも「世界で一番やさしい鬼退治」については、確かに類似性がありました。
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ただ、雑コラを用意しておいてなんですが、確かに類似性はあるのですが、個人的にはあまりやさしくはなかったかなと思ってます。(鬼退治の方は納得ですが)誰に対してかというと、私に対してやさしくない。「マザーグール」の結末は、私にはあまり前向きなものには思えなかったので、個人的には「鬼滅の刃」の方が好きです。
4.感想 その1 序盤について
というわけで、ここからは「マザーグール」の感想を書いていきます。私が「マザーグール」全巻をkindleで購入したのが2024年8月20日です。その後、4巻まで読んで放置していたのですが、2025年2月6日に5巻から最後まで読み切って、感想を書いています。
まず、初めに書きたいのは、私にとって「マザーグール」の序盤は、とても読むのが大変だったということです。それで、この理由ですが、「初見ではモブと主要キャラの違いが分からなかったから」です。つまり、登場したエルレシアン女学院の子が、私には退場するのか生き残るのかが分からなかったので、全員の名前や関係性を押さえておかないといけないのではと思った結果、読むのに疲れてしまったというわけです。
これが解消したのは、5巻で主人公側にまともに対抗できる武力がそろって、退場者が明らかに減ったことと、6巻のキャラクター紹介を見て、最終メンバーがほぼ固定されたことが分かって、安心できたからというのが大きいです。
「鬼滅の刃」で例えるなら、竈門炭次郎とモブ隊士の違いが分からないまま、鬼狩りを見守るようなものです。キャラクターに愛着を持つことは、作品に没入するためには重要ですが、モブ隊士の場合、すぐに退場してしままうので、愛着の持ち逃げみたいになるのがしんどいです。(まあ「鬼滅の刃」には、サイコロステーキ先輩という超ド級のモブがいるんですけど)
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6巻のキャラクター紹介を見たことで、ようやく「マザーグール」を安心して読み進められるようになったのと、7巻以降は島の謎解きパートが面白くなってくることもあって、最後まで一気に読み切ることができました。
というわけで、私にとっては「マザーグール」は、特に1、2巻が読んでいてしんどい作品で、序盤を超えるのに半年ほどかかってしまいました。ただ、これは「マザーグール」という作品のせいというよりも、私がこの作品の読み方を分かっていなかったせいだと思っています。
「マザーグール」の序盤について私の事情を書いてきたわけですが、この結果、私の中で評価が非常に高くなったキャラクターがいます。それが、Sマリア教団の設立者である「辻中環(つじなか たまき)」さんです。
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辻中環さんは、エルレシアン女学院の子の中でも、圧倒的な悪役であり、明らかに性格も外見も醜く設定されています。そして、色々あって「Sマリア教団」というカルトを設立した結果、自滅してしまうわけです。
このあたりは、正直なところよしきさんの4巻の記事を読んだ方がよいので、紹介しておきます。
さて、物語的には純粋な悪役であり、エルレシアン女学院の子を誰も救わない辻中環さんですが、彼女に救われた人がいます。それが私です。
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上記のSマリア教団の設立シーンを読んだときに、私が思ったのは、「なんて分かりやすい全滅フラグなんだ。つまり、ここに出てくるキャラクターは名前とか覚えなくても大丈夫だな。」という喜びでした。ここは、自分でも歪んだ読み方をしていると自覚しているのですが、「マザーグール」という極めて展開が読みにくい作品における、辻中環さんの分かりやすぎるダメダメっぷりは、私を救ってくれました。
5.感想 その2 主人公の話
「マザーグール」の主人公は誰かというと、最後まで読んだ結論としては、私は草間トリノさんだと思っています。ただ、私が草間トリノさんが主人公だと認識したのは5巻からで、それまではエルレシアン女学院の子たちの群像劇だと思っていました。
ちなみに私が、草間トリノさんを主人公だと考えたのは、なによりも島の謎解きを一番頑張っていたからです。エルレシアン女学院的な人間関係でも、妙に中心にいるなあとは思いましたが、そちらは副次的な理由になります。
その意味では、私は「マザーグール」という作品は、不親切な作品だなあと、思っています。なんせ、1巻の時点では草間トリノさんは名前すら分かりませんからね。桐島朔也さんの思い人というだけで、存在を押さえておく余裕は、私にはありませんでした。
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画像を貼るために、改めて1巻を読み直すと、草間トリノさんと小井戸ひなさんがセットで描かれているところとか、なるほどと思うわけですが、初見で重要人物だと見抜くのは、私には無理でした。
6.感想 その3 タイトルについて
作品のタイトルである「マザーグール」が、「マザーグース」にかけているのはよいとして、作中における「マザーグール」が、何を指しているのかは、最後まで読んでも私は分かりませんでした。
私なりに考えると、次の3つぐらいが思いつくわけですが、
①はじまりの女の子(おっぱいが14個ある人)
②謎の少年が好きだった女の子(魂を固定させている人)
③草間トリノさん
この中に答えってあるんですかね。一応、個人的には①が有力かなと思っていますが、作中では明確な答えは示されていなかったように思えます。
個人的に気になっているのは、そもそもエルレシアン女学院の子達を襲ってくる謎の化け物は「グール」なのか、ということです。作中では一貫して「化け物」呼びだったと思うので、実は「グール」という概念が無い可能性すら私は疑っています。誰かが「人から生まれた人でない化け物ってグールみたい」な感じで言及してくれれば、分かりやすかったのですが。明らかにマイナーな「インブンチェ」の話は出てくるのに、なぜ「グール」が出てこないのか、最後まで不思議でした。
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まあ、私が3つ思いつくぐらいなので、実際のところは「マザーグール」は多義的な概念だというのが公式見解なのかなと思いますが、個人的には作中で1つぐらいは言及して欲しかったなと思っています。例えば「寄生獣」みたいな感じで。ここも、私は「マザーグール」の不親切なところだと思っています。
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7.感想 その4 エルレシアン女学院について
「マザーグール」を読んでいて、主要人物の性格及び能力のために、エルレシアン女学院での人間関係を設定しているというのは分かるのですが、エルレシアン女学院は鬼殺隊より地獄めいているのではと思いました。鬼殺隊は少なくとも自由意志で加入していますからね。
思いが強いほど強い、みたいなのは確かに真理だと思うのですが、そもそもエルレシアン女学院ってお嬢様学校ですよね、お嬢様学校ってこんなにサツバツとしているのが基本なの?というのは、読んでいて最後まで違和感が消えませんでした。
もちろん、クソデカ感情を味わうためには、必要なのだというのは、一理あると思いますが、個人的にはお嬢様学校はキラキラしていて欲しいという人なので。
ここから先は、思いついただけで、自分でもネタだと思って書きますが、「マザーグール」という作品と「鬼滅の刃」の類似性をさらに推し進めるならば、こうなります。
「マザーグール」は、大戦という外乱すら乗り越えてきた島の秩序が、エルレシアン女学院という蛮族の精鋭(スクールカースト上位)達によって、破壊され簒奪される物語である。
この場合、はたして被害者はどちらだったのか。まあ、流石にそのためにフェリーを沈めるのはかなりどうかと思うので、あくまでネタです。
8.感想 その5 個人的に見たかった結末について
「マザーグール」の結末は、私にとっては「あまりやさしくはなかった鬼退治」なわけですが、じゃあどういう結末が見たかったかについて、簡単に書きます。
基本的には、富士鷹ジュビロ先生のセリフの通りだと思ってます。最後に愛と勇気を与えてあげないといけない。
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「マザーグール」の結末では、魂を固定化して復活させたという展開なわけですが、私はそれはあくまで心の声が聞こえる人たちの理屈であって、エルレシアン女学院の中で一番親和性が高い東伏見笙子様ですら、目も見えるし耳も聞こえるわけですから、そこは人間として復活させるべきだったと思っています。
そこから考えると、私が見たかった「マザーグール」の結末はこんな感じです。ネタバレ全開過ぎるけど、もはや許してもらうしかない。
①小井戸ひなさんが死んで、草間トリノさんの感情が爆発する。
②草間トリノさんの感情を、東伏見笙子様が謎の少年に転写する。
③謎の少年が喪失の痛みを理解しているなかで、桐島朔也さんが謎の少年の「失えない」能力をコピーする。
④桐島朔也さんが「失えない」能力で、小井戸ひなさんを元に戻して、草間トリノさんの感情が爆発する。(2回目)
⑤草間トリノさんの感情を、東伏見笙子様が謎の少年に転写する。(2回目)
⑥謎の少年が復活の喜びを理解する。
⑦謎の少年の協力のもと桐島朔也さんが「失えない」能力で、エルレシアン女学院の子達(辻中環さんとか)を復活させまくる。どこまで復活させられるかは設定次第だけど、個人的には140人全員復活できましたでいいと思う。
⑧全員で修学旅行から帰宅して、エルレシアン女学院の奇跡と呼ばれる。
辻中環さんが復活したら、色々な人が色々と気まずくなるのは間違いないですが、そこは尊いものを知って完全体となった東伏見笙子様に何とかしてもらいましょう。
謎の少年の「失えない」能力をコピーするのが誰がよいかについては、個人的には、草間トリノさんを見てきた桐島朔也さんが適任かなと思うのですが、正直なところここはあまり自信がないので、「マザーグール」有識者の意見を聞いてみたいところではあります。
能力のコピーができるとか、ご都合展開にもほどがありますが、島の設定自体がファンタジーですし、エルレシアン女学院の生徒なら何とかなります。(暴言)それに、そもそも尊いものの喪失を知ることだけが「やさしい鬼退治」というのは、個人的にはどうかと思っていて、喪失の悲しみを知ったのだから、復活の喜びも知って2度美味しいでいいのではと私は思うわけです。別に、謎の少年は無惨様と違って邪悪なわけじゃないですしね。
9.おわりに
「マザーグール」は、自分だけなら絶対に読まなかった作品だと思いますし、記事にも書いたように不親切なところがある作品だと思っています。ただ、何だかんだ言って、結構楽しんで読むことができました。
その上で、私が一番興味があった、「鬼滅の刃」と「マザーグール」が「同じことをやりたかったのではないか」という点については、なるほど慧眼であるとしか言いようがありません。その上で、終わり方は「鬼滅の刃」の方が、私は好きですね。
それでは、ごきげんよう。