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「創作で重要なのは、完璧ではなく完成」と明言したのに全然作品を完成させられなかった話

『創作で重要なのは、完璧ではなく完成』

そんなタイトルの漫画をTwitterに投稿したら、1万を超えるいいねと、5000を超えるRTをいただいた。


そんな漫画を描いておきながらそれ以降の僕は、作品を完成させることができなくなった。

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『仮想通貨体験記』は好評だった。仮想通貨体験記は、僕が仮想通貨で300万円を損した実体験を元に描いた漫画だ。ブログに投稿し人気を博した。Googleの検索ワード「仮想通貨 漫画」で1位を獲得。電子書籍を配信すると、ピッコマでは28万を超えるいいねを獲得している。

それまでの僕は、雑誌連載を獲得するため、出版社に漫画の持ち込む日々を送っていた。


20歳からずっと、商業誌で通用する漫画を目指して漫画を描いてきた。僕が元々真面目な性格もあり、ルールを崩すことは自分の中で許せなかった。例えば、起承転結といった物語のルールだったり、主人公を作品の中で成長させるといったルールだったりだ。他にも「ああしなければならない」「こうしなければならない」という縛りの中で漫画を描いていた。


その結果起きたのは、全然漫画を完成させられないという事態。

50ページの漫画を完成させるのに1年かかる、なんてことが何度かあった。

面白さを追求すると、どこかのルールが壊れてしまう。壊れたルールを修正すると、また違うどこかが壊れてしまう。そんなことを繰り返して、あーでもない、こーでもない、と言いながら、一向に作品が完成しないという事態がよく起こっていた。

『仮想通貨体験記』を描いたときは逆に、めんどうなルールは一切気にしなかった。当時の僕は、ルールに縛られて作品を作ることに疲れていた。起承転結も、主人公の成長も、全部無視して、自分の中の「面白い」に従って、ただただ筆を進めていった。

作品は思った以上に好評だった。

Googleの検索ワード「仮想通貨 漫画」で1位を獲得(現在は違います)。電子書籍を配信すると、ピッコマでは28万を超えるいいねを獲得している。

悩まずに完結させた仮想通貨体験記が好評だったこともあり、『創作で重要なのは、完璧ではなく完成』という漫画を描いた。その漫画もTwitter上では好評。1万を超えるいいねと、5000を超えるRTをいただいた。


以降、創作漫画が完成することはなかった。


仮想通貨体験記は息抜きのつもりでもあった。「次からはまた、ちゃんとした創作漫画を描こう。」そう思っていた。それからまた作品を考える日々が始まった。「面白くない。」「納得いかない。」「ああじゃない。」「こうでもない。」描いても描いても、途中で止めては描き直し。新作はビックリするくらい一向に完成しなかった。

「漫画家って名乗ってるくせに全然漫画描かないじゃん。」「見事なまでのブーメラン。」そんなことを、匿名の誰かに言われたことも何度もあった。

自覚はしていた。創作が完成しないという自覚がありながら、当時の僕は他のことに逃げていた。漫画業で生活を安定させるのに必死だったという面もあるが、完成しないという現実を受け止めたくなかったのも事実だと思う。


いつの間にか、変なプライドがついてしまっていた。

「つまらない漫画は公開できない」「自分の評価を落としたくない」仮想通貨体験記がなまじ好評だったためか、「ヘタな作品は公開できない」という思いが、完成を邪魔した。僕はまた、完璧を目指してしまっていた。


このままでは新しい創作漫画は一生描けない。そんなことはわかっていた。


先日、とある音楽家の方とランチをした。佐々木慧太さん。メジャーシーンでも活躍したことのある音楽家だった。

彼は1日に5曲、曲をつくると言っていた。「考えるから悩む。悩むから完成しない。毎日のルーティンで作る5曲は考えないで作る」

そう言っていた。

佐々木さんの言っていたことはもっともだった。

確かに、僕の創作が完成しないのは悩んでいるからだった。悩むから創作の過程は選択の連続だ。次の展開をAにするかBにするか、CにするかDにするか。そんな選択が完成するまで続く。

確かに、その節々で悩まなければ、作品は完成する。考えないで作る。そんなことができれば、僕も変われるかもしれない。


思えば、仮想通貨体験記はそうやって作った漫画だった。めんどうなルールは一切気にせず、自分の中の「面白い」に従って、ただただ筆を進めていった。そうやって作った漫画は、納得する出来ではないものの、見事に完成した。


考えなくていいのだ。

そもそも今の僕に、納得のいく作品なんか作れるわけがない。完成させて出すことでしか、成長する術はない。わかっていながらできなかった。

でも、佐々木慧太さんの話を聴いて、今やらなければならないことがハッキリした。

下手でもいい。どんな作品でも読まない人は読まないし、読んでくれる人は読んでくれる。とにかく作品を作って公開しよう。


そう自分に言い聞かせながら、僕は新たな取り組みを始めた。

1週間に1本漫画を出す、#週刊かいち という企画。

目的は、迷わずに作ること。週に1本という、決められた期間の中で作品を投稿する。とにかく完成させることを体に覚えさせるのだ。クオリティはネーム程度でいい。一度最後まで作ってしまえば、後からいくらでもブラッシュアップはできる。


余計なプライドは捨てて、完成させることに拘ってみることにした。これで何か変わるかはわからないが、何も変わらなかったこの1年よりは確実に変化するはずだ。


できないことの多くは、やれば必ず出来るようになる。今までもそうだった。

できない自分を変えるため、僕はまた新たな挑戦をする。


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かいち
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