IQ160を買った話。
2023年7月、Phase OneのIQ160を買った。自分が購入してきた機材の中で一番高い買い物だと思う。
当時、長めの休みを取って家でゴロゴロしていると、知り合いのカメラマンさんから荷物運びの手伝いを頼まれた。目的地までの車中で「IQ160っていうデジタルバックがマップカメラに出てましたよ。あれはオススメです」と教えてもらった。
デジタルバックは渡部さとるさんの「旅するカメラ」などで「普通のカメラとは別物」と書かれており、いつか使ってみたいと思っていた。
IQ160はデジタルバックの中でも最も大きいセンサー(53.9mm×40.4mm)を搭載した機種で、645DFなどのボディなら普通のデジタル一眼レフカメラと同じように使える、という点が魅力的だった。値段もデジタルバックだけで60万円と高額だったが想像よりは安く、機材を整理すれば手の届く範囲であったことも購入の後押しとなった。
PENTAX645システムに泣く泣く別れを告げ、入れ替わりでマップカメラから645DF&IQ160がやってきた。
ボディとデジタルバックを恐る恐る合体させボディの電源を入れると、ボデイ側はOnになるものの、デジタルバックの背面液晶は真っ暗のまま。
「何かお作法が足りないのか、それとも初期不良・・・?」と冷や汗をかいていると、デジタルバックのバッテリーを入れていないことに気づき、再度やり直し無事起動した。
起動に成功した後は、拍子抜けするほど普通のデジタルカメラとして使えた。ボディ、バックとも設定をいじれるところはあまり無く、デジタルバックは「フィルムカメラをデジタル化する機材」というのが一番しっくりくる表現だと思う。IQ160は発売から10年以上経過(2011年7月発売)しているものの、素人目に見てもとても良い写りだった。EOSでいえば初代1DXが出るころに作られた機種ということなるが、中判デジタルの世界ではとっくの昔に高画素で破綻のないデジタル画像は完成していたことに驚いた(ちなみに、IQ160のデータ保存形式はRAWデータのみとなっているが、一般的な現像ソフト(C1、LR)で現像可能)。
一番嬉しかったのは中判フィルムカメラのレンズをフィルム時代と同じように使えるようになったことだ。中判フィルムユーザーとしては、75〜110mmの中望遠レンズを「標準レンズ」として使えるのはとてもしっくり来るし、4433センサー用に焦点距離を換算し直すストレスがなくなったのも良かった。
「何も怖がることはなかったんだ」と安心して使い慣れた頃、センサー清掃の見積りで腰を抜かす話はまた今度。