どうしてみんなと仲良くするほうがいいの?
この問いに対して文字を打つことに長く時間がかかってしまった。以前観たアジアンドキュメンタリーで、ISISに拉致されていた男の子が母親のもとへ帰ってきたけれども人格がまるで変わってしまった、母親に常に罵詈雑言を浴びせ手を上げ攻撃し、誰とも交わらず、常に銃弾戦ごっこをして独り遊んでいる、という映像。そういう子に、どんな言葉でこれを伝えることができるだろう。あまりにも傷ついた君の心に、母の抱きしめも呼びかけも届かないのなら、言葉なぞ無力だ、と思う。それでも、いつか、君が、自分の心を抱きしめられるその日が来たときのために。
この質問には、みんなと仲良くしたいと思わなかった経験と、それでも「仲良くしてね」と言われた経験がかくれていそうだね。
仲良くできないときは、どんなときだったろう?自分の思ったように相手が行動してくれなかったとき?相手の言葉で悲しくなってしまったとき?そういうときに「仲良くしてね」と言われると、自分の悲しい気持ちやムカムカの行き場がなくなったようで苦しくなるよね。だって仲良くしたくないんだから。今は自分の気持ちを大事にしたい。それでいいんだよ。
そういうとき大人が言う「仲良くしてね」は、「お互いの気持ちを大事にしてね」という意味だよ。だから君の気持ちはいちばんに大事にしてほしいんだ。そして、相手も相手で気持ちを大事にすることをゆるしてほしい。見える範囲にその子がいると攻撃したくなっちゃうときは、そんな気分が収まるまで遠くにいたっていいよ。そうやって、それぞれが自分の気持ちに集中できるように過ごしてほしい。
さて、ひとりになって自分の気持ちによく耳を澄ますと、いろんな声が聴こえてくるね。寂しかったとか、もっと遊びたかったとか、比べられて嫌だったとか。うんうん。その気持ち、大事にしてね。大事にすると、なんだかイライラしくしくドキドキしてた心が、落ち着いてくる。
落ち着いてくると、外の世界が楽しそうに見えてくるよ。また公園で遊びたくなってくるし、あの子と追いかけっこしたくなってくる。その時にはじめて「ごめんね」って言えたらいいんだ。ごめんねは、また遊べるようになる魔法の言葉。
大人はよく「みんなと仲良くね」と言うけど、これは私の意見だけど、必ず「みんな」と仲良くしなくってもいいよ。いちばん大事にしてほしいのは、じぶんの気持ちと仲良くすること。それと、自分の気持ちを大事にするときに、相手の気持ちを邪魔しないこと。それは、痛い思いをさせないこと。たとえばぶったり、蹴ったり、転ばせたり、嫌な言葉を言ったりしないこと。それは、自分の気持ちを大事にすることにもつながるよ。転んだら痛いよね、痛いときの自分の気持ちを考えてみて。そして、痛いときのあの子の気持ちを考えてみて。
相手の気持ちを邪魔しないで、そして自分の気持ちを大事にすれば、みんなと親友にならなくてもいいよ。でも、そうやって仲良くしたいときにだけ一緒に遊んで、したくないときはお互い自分なりに過ごすことができれば、それってもう「仲良し」なのかも!だってそれは、いつだって「お互いの気持ちを大事にしてる」ってことだから。