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たまにはスタイルを変えても悪くない/2023.05.18
ベチャ。
穿いていた黒のパンツの上に、チャップがたっぷり塗られた目玉焼きが落ちていた。
目玉焼きの味付けは基本的に塩だが、今日はケチャップで食べたい気分だった。
ごはんと一緒に食べようとしたとき、ごはんの上にあった目玉焼きはバランスを崩して、パンツの上に落ちた。
目玉焼きを拾うが、ケチャップがパンツにベッタリと付いていた。
うわあーーーー!
急いで、ティッシュでケチャップを拭き取った。
パンツの色が黒いから、ケチャップが取れているのかわからない。
パンツを脱ぎ、ケチャップが付いたところに鼻を近づけてにおいを嗅ぐ。
ケチャップの匂いがバッチリ染み付いていた。
これは洗わないといけないやつだ。
持っているパンツはあれしかない。
他に穿いていくものと言えば、スカートくらい。
会社での格好はパンツスタイルだ。
スカートを穿いて会社に行くことは滅多にない。
初めて就職した会社で、パンツじゃなくてスカートを穿いてきなさい、とお局さんに言われたことがある。
それを拒むといじめに遭い、会社を辞めた過去がある。
重い荷物を運ぶことが多かったので、スカートよりパンツの方が良かったのだ。
それからいくつかの会社で働いていたが、そこでもパンツスタイルで仕事をしていた。
そこでは服装について、特に何も言われなかった。
稀に仕事のあとに、そのまま推しの舞台やライブに行くことがあった。
そのときは、スカートを穿いて仕事をしていた。
周りから「デート?」と聞かれることがあって、どう反応すれば良いか困った。
スカートを穿いた姿を鏡で見た。
うん、悪くない。
今日は重いものを運ばないから、靴もローファーじゃなくて、ヒールがあるパンプスを履こうかな。
お気に入りのパイソン柄のパンプスをシューズボックスから出して履く。
あら。
今日のあたし、すっごく素敵。
さっきまでケチャップがパンツにべっとり付いて凹んでいたのに、それが今はどこにいったのやら。
パンプスを履くとき、歩き方がいつもより意識してしまう。
あたしは歩くのが雑で、靴底が内側に向かって斜めにすり減ってしまう。
パンプスも普段と同じように歩いたら、地面に設置する面が他に比べて少ないからグラグラして危ない。
だから、そうならないように歩き方がいつもより丁寧に、ゆっくり歩くようになる。
ゆっくり歩くから、いつもより早めに家を出る。
なんとなくだけど、自然と背筋がピンとなる。
仕事中。
座って作業している時も、背筋はピンとなっていた。
なんだか仕事ができる人っぽく見えているのか、別の部署の人から仕事の質問をされることが多かった。(でも全然答えられず、上司にまわしてばっかりだった)
たまにはこのスタイルで働くのも、悪くないかもしれない。
ただし。
通勤電車で出発駅から到着駅まで、ずっと立ちっぱなしじゃなければ……。
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