上京8年目/2024.07.18

スマホに保存している写真を見ていたとき。
操作ミスして、いちばん古い写真がある上へ飛んでしまった。

そこにある写真はなんで、あの日あのとき、その写真を撮ったのか、もう覚えていない。

なに残っているんだろう、と写真を見ていくと、実家の自室で大きなスーツケースの上に大きいバッグが乗って、さらにその上につばが広い麦わら帽子が乗った、まるでだんご3兄弟のような写真があった。

これ、上京のときに自力で持っていった荷物だ。

撮った日付っていつ？
と日付を見ると、2017年7月17日22時47分だった。

もう1枚見ると、どこで撮ったのかわからない夜明けの空の写真だった。
撮った日付は2017年7月18日5時32分。

じゃあ、この日に上京したってことか。
もういつ上京したとか、そのとき何歳とか覚えていない。
というか、今何歳？

今日が16日だから、明後日で上京して7年が経つということになる。

もうそんなに経つんだ。

7年前。
当時、暮らしていた実家から逃げたくて、県内でいちばん大きな街に引っ越そうではなく、子供のとき住んでみたいと憧れていた東京に行こうと、ネットを駆使して、家と仕事を見つけて、上京してきた。
生まれてから今日までを振り返ると、このときがすごく行動力があった。

上京したばかりのころは、お金が全然なかったので、生活を安定させるためがむしゃらに働いて、東京と故郷のギャップを感じながら生活していた。

働いて寝るだけの生活に心がヘトヘトになっていたとき、あるタレントのファンになって、ライブや舞台に行ったり、グッズを買ったりして、モノクロだった生活がカラフルになった。

その人に出会ったことで、手放してしまった作家になるという夢を思い出して、その夢を叶えるため、今日まで進んできた。

今日まで、よく東京で生きてきて、すごいね、あたし。

今のあたしは平日昼間は会社員として働いて、それ以外の時間は作家活動をしたり、大好きなアイドルのコンサートや舞台を観に行ったり、美味しいものを食べたり、好きなものを楽しんだりしている。

大変なこともあるけど、楽しく生きている。

でも、毎日ニュースやSNSを見て、あたし今こんなことしていて大丈夫？　とときどき不安な気持ちになることがある。

そのとき上京したころに戻って、全てやり直したいと思ってしまう。

電車や街中、SNSでよく見る婚活アプリや転職サイトの広告を見つけると、
「お前、ここで進路を変えないと、まずいよ」
とその広告のイメージキャラクターの人たちに言われているみたいで、心が落ち込んでいるときにそれを見ると、不安になる。

今のままで大丈夫？
このまま進んで大丈夫？
周りと同じ生き方しないとやばい？

あたしの思い描いた生活や人生はいつやってくるの？
今やっていることって間違っている？

いつまで毎朝、満員電車に乗って、遅延するたびにヒリヒリする気持ちにならないで済むの？

たまたま取れた資格があっても、実は苦手な仕事をいつまで続けるの？

来年の今ごろ、まだ東京にいるかな？
あたし、夢を叶えることできるよね？

上京8年目を迎えた、この日。
朝から会社に行き、退勤後は新しい作品をどうするか、近所のコーヒーショップで、閉店時間ギリギリまで考えていた。

次はなに書こうかな。
次はどんな絵を描こうかな。

そろそろ秋から年末までの予定を決めないと。
夢に一歩近づける、大きな予定を。

7年前。
わずかな貯金で上京した、あの行動力が再び湧き上がることがあらんことを。