東京→福岡Iターン、または森について
移住してきた福岡の家はターミナル駅に近いのに森にも近いというコンパクトシティらしいいいとこ取りのエリアだった。
福岡も東京もあまり変わらない
移住前から変わらず東京の会社でフルリモートの在宅勤務を続けているので、Zoomの向こうでは東京基準の会話が続く。しかし家を一歩でると木が生い茂り、鳥と虫が鳴る。
夏の暑い日になるとジリジリと照りつける日差しのせいかぼんやりとここはどこなのか判然としなくなる。
福岡に移住したからといって生活はあまり変わらなかった。
月曜から金曜は毎日自室のPCの前で仕事をして、お酒は飲まないので夜は近所を散歩する程度。
週末は子どもと公園で遊ぶなりコンビニでアイスを買って食べてみたりするなどしていると過ぎていく。
買い物はほとんどAmazonで済ませているし、地域の交流に参加するわけでもない。
東京と生活が変わらないのは、多くの時間を家で過ごしているからだろう。
「住みやすい場所」は暮らし方によるのかもしれない
東京にいるのも福岡にいるのもあまり変わらないような気がしながら3年がたった。
私が変わったことといえば、羽田で飛行機が離陸するときに、「これから帰るんだな」という意識になったことと、東京の友人知人と疎遠になったことくらいだろう。
でも、東京にいたころは密に交流をしていたかというとそうでもないので、福岡にいるからではなくライフステージの変化によるもののような気もする。
事実、SNSでイベント情報を見ては「これに行きたい・・が、家の用事もあるので行けないだろう」は東京でもよくあることだった。
もっと言えば、仕事があるから、アルバイトがあるから、と何かしら理由をつけて結局家にいた。出かけたとしても深夜にラーメン屋やファミレスに行ってみる程度である。
どこに住んでいても家にこもっているので、結果として代わり映えがしない低体温な日々をおくっている。
涅槃(ねはん)、つまり悟りの境地のような気さえする。
まだ壮年でこれは良くない気もするが、なにしろ悟りを開いてしまっているので、どうしたいという気持ちもない。
悟りを開くといえば聞こえは良いかもしれないが、ただの無気力なおじさんである。
おまえはどうしたいかと聞かれたら
涅槃でも仕事をしている。タスクは目的があるから良い。
低体温であろうと無気力であろうと、いつまでになにをどうするか定め、息を止めて何かを作ったり伝えたりすることはできる。だって指揮命令系統があるから。
キャリアの話になると話は別だ。どうなりたいかと問われても、息を止めずに涅槃に波風を立てる働き方は、今はイメージしづらい。
なりたいものもないし、やりたいこともない。なにせ涅槃だから。
そう思っていたら、メジャーリーガーのダルビッシュ有が200勝したあとのインタビューで気がついた。
そう、200勝したあとの目標は201勝なのだ。
木はたくさん増えたら森になるのだ。
それだけのことだと思ってみれば、涅槃の働き方みたいなものがあるような気がした。
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