【シャニマス】黛冬優子 -ノンセンス・プロンプ-考察 バカバカしくて大切な嘘
こんにちは。カイリキー王と言います。
皆さんは冬優子の新P-SSR【ノンセンス・プロンプ】のコミュはもう読まれたでしょうか。
冬優子が好きだって人はどうにかあがいて絶対に読んでください。
冬優子がアイドルを続ける理由が更新され、
そのほぼ全てが比喩で展開されるという非常にシャニマスらしい内容となっており、
そして実はバレンタインらしい濃厚でプラトニックなラブ(?)ストーリーでもあります。
このコミュの真の魅力はトゥルーに全て凝縮されています。トゥルーの考察が最重要になりますが、そのために前提コミュも解説していきます。
細部に仕掛けられた仕掛けであったり、このコミュの魅力を少しでもお伝え出来たらと思うので、よかったら最後までお読みください。
※ネタバレが多く含まれます。
個人的な解釈も含まれます。コミュだけでは全てが語られないので、皆さんの考察の一助になれれば幸いです。
最初に【ノンセンス・プロンプ】がどういう話かを全て語ってしまうと、
【三文ノワール】
まず、一つ前に実装された冬優子P-SSR【三文ノワール】と【ノンセンス・プロンプ】は意図的に対になっています。
物語的にも完全に陸続きになっており、前編・後編みたいな扱いだと思ってください。
関係性としては5thライブのDAY1とDAY2と非常に似た構造となっており、
【三文ノワール】はPがほとんど関与しなかったときの世界、【ノンセンス・プロンプ】はPが関与したときの世界です。
なので今回は【三文ノワール】と比較しながら考察していきます。
まず三文ノワールの概要を非常にシンプルにまとめると、
【三文ノワール】を一言で表すと
”黛冬優子がアイドルをやる理由は何か?”
というコミュです。
【三文ノワール】のテーマを明確に表してる言葉は作中にもあって、
それは、「アイドル÷黛冬優子= 」です。
これは自分の女優の才能を自覚してしまった冬優子がプロデューサーにした問いです。
文脈的に他の言葉に言い換えるなら、「黛冬優子がアイドルをやる理由は?」という意味となると考えられます。
ちなみにPは何も答えられませんでした。(三文ノワールのPは本当に何もしないんです…)
【三文ノワール】の中で冬優子はこの質問をPにする直前に、女優を促す監督に次のように返します。
ここで着目したいのは冬優子が口にするアイドルを続ける理由が、
「トップアイドルになるって決めたから」という半ばプライドのようなものである点です。
なぜアイドルでないといけないのかを説明することはこのときの冬優子にはできていません。
冬優子はトップアイドルを目指してがむしゃらに走り続けている描写は幾度とあり、少なくとも冬優子の自認ではアイドルの才能はなく努力で成り上がってきた人物です。
また感謝祭や最近のコミュであっても、あさひという本物の天才を前にし才能の差を痛感している描写があります。
そんな誰よりも「才能」を渇望してきた冬優子だからこそ、自分に「女優という天性の才能」があると気づいてしまったことの大きな揺らぎ、
さらには「今」しか評価されないアイドルと、「永遠」に評価されうる女優。
主観的・客観的な色んな要素が絡み合って冬優子の中に整理しきれない想いが積もっていきます。
ここまでが【三文ノワール】の解説です。
そして今回の主役、【ノンセンス・プロンプ】の内容に繋がっていきます。
(ガチャ名は「リアリストに横たわって」。これも良い。)
ちなみに重要な点なのですが、何もできなかった【三文ノワール】のPとはうって変わり、
【ノンセンス・プロンプ】のPは過去1でイケメンな対応を取り続けます。
当コミュではしつこいほどに「時間」がモチーフとして出てきます。
というか、「今」と「永遠」がモチーフとしてずっと出てきます。
顕著なのはコミュ内で出てくる絵画で、サルバドール・ダリの作品である「記憶の固執」、通称「溶けた時計」です。
冬優子は美術館のこの絵画の前で、心配した係の人に声をかけられるほど長く無自覚に立ち止まります。
この絵画は「やわらかいもの」と「固いもの」への固執を描いたとされており、同時に絵画の中の3つの時計は過去・現在・未来は一時停止した瞬間も同時に表現しているともいわれています。
解説も不要かもしれませんがこのコミュでは、
「やわらかいもの」は今だけ評価される刹那的なアイドル、
「固いもの」は永遠に残りうる映画、を暗に示していると考えられます。
他にも冬優子はコミュの中で時計を故障し、それが原因で遅刻したり、
その時計を紛失したりととにかく「時間」がモチーフで物語は展開されます。
実はこの「時間」というテーマは【三文ノワール】の最初のコミュから始まっています。
会話は冬優子の急な質問から始まります。
これは冬優子が自分の女優適正に気づく前のやり取りです。
ちょっとした雑談ではあるものの冬優子は真剣です。
少し茶化してるかのような返答をするPに「答えになってない」とやや怒ります。
その中の一つの返答に次のようなものがあります。
「万が一、冬優子がアイドルを辞めるような「何か」があれば
それは俺もプロデューサーを辞めるような事態だろうから。
アイドルとプロデューサーはコインの表と裏みたいなものだからさ。」
これもやはりほしかった返答とは違い冬優子は機嫌を悪くします。
ただこの返答こそが【ノンセンス・プロンプ】の内容そのものなります。
では内容に入っていきましょう。
【ノンセンス・プロンプ】
【ノンセンス・プロンプ】では冬優子はあるテーマパークのリポートをやることになります。
テーマパークの最後の頼みの綱として冬優子に白羽の矢が立ったというわけです。
このテーマパークは昔はそれなりに人が入っていたようですが、娯楽が増えた今の時代となっては、懐かしがってきてくれる人くらいしかいないそうです。
冬優子も子供の頃に来たことがあるようですが、それ以来は一度も来ていないようです。
冬優子には一時的にもてはやされ今は退れてしまったテーマパークと、
アイドルの運命とを重ねて見えます。
思えば、冬優子STEPでは「ミラクル♡ミラージュ」や「アイドル」など子供の頃に好きだったものを忘れている描写もありました。
冬優子は時間の流れで好きだったものを忘れてしまう側の人の気持ちがよくわかるのでしょう。
それらへの想いは心の奥には確かに残っていましたが、今回は割愛しておきます。
冬優子はできうる最善のリポートを終えたあと、
Pに連れられて観覧車に乗って話します。
二人はテーマパークのリポートについて語りつつ、アイドル活動についても重ねて話します。
そんなことを話しているとゴンドラが止まってしまいます。それを受けて冬優子以下のように続けます。
非常に重要な会話で表現も見てほしいので一旦会話をそのまま張ります。
ここまでの内容は【三文ノワール】で冬優子が出していた答えです。
アイドルには抗えない運命がある。もしもそうだとしても、自分はトップアイドルになると決めたから、アイドルというフィールドで抵抗する、と。
【ノンセンス・プロンプ】ではここからPが転機を与えます。
冬優子は、あんたはそうでも新しい遊園地ができれば客はそっちに行く。今でないものに、それほど価値なんてない。変わらないものなんてないんだから。と反論します。
「そうして誰もいなくなって…」
冬優子が何かを言いかけた途中で、Pが口を挟みます。
「それでも、ひとりだけいるかもしれない」と。
観覧車は再び動き始めます。
そして演出ムービー。
明らかに冬優子の中の靄が晴れたのがわかります。
そして、今までよりも更に強い感情を持ってPの背中を眺めている様子も伺えます。
このゴンドラの中でなされた会話の中で冬優子が「何」を想い、「何」が変わったのでしょうか。
その答えは作中で全てを語られることはありませんがその答えを探るためのヒントはトゥルーの中に隠されています。
【ノンセンス・プロンプ】不斉原子
まずサブタイトルになっている不斉原子とは何かを解説します。
非常に端的に説明すると、「対に鏡像になっている原子」を指します。
それらの原子は鏡映しのようなものとなります。
ではこの不斉原子とはこのコミュでは何の比喩でしょうか。
冬優子のコミュのテーマには対になっているものがいくつも存在します。
冬優子とふゆ。アイドルと女優。凡人と天才。
色々考えながら読んでいただけたらと思います。
それではコミュの内容に触れています。
冬優子のリポートの甲斐あって、テーマパークは大盛況。TVニュースでも取り上げられるほどの成果が出ていました。
そしてここから冬優子の独白が始まります。
ここで最も重要になるのがここで言及されている「嘘」が何かです。
そして、その答えが、【三文ノワール】で出された
「アイドル÷冬優子= 」の答え、つまり、「アイドルを続ける理由」となります。
※答えが明言されているわけではないので、あくまで考察である点はご了承ください。
私の考察を結論から言うと、
答えはP-Sr【ザ・冬優子イズム】のトゥルー、
「暗闇の中でも見つけてくれたから」にあると考えられます。
このカードは冬優子の最も最初に実装されたカードなのですが、
【ザ・冬優子イズム】というカード名に負けず、今となっては非常に大きい意味を持つカードでもあります。
それは、
「トップアイドルになる」という目標が生まれたのがこのカードだからです。
つまり、冬優子が監督に答えた「アイドルを続ける理由」その始まりのコミュということになります。
まずはコミュ内容をご覧ください。
時系列は明言されていませんが、恐らくstraylight.run()よりも前のはずです。
練習も愚痴を言いながらで、今の冬優子と比較するとパフォーマンスは雲泥の差のはずです。
その当時の冬優子の投げかけた問への答え。
「ああ、間違いなく冬優子が一番だよ」
「俺は冬優子の最初のファンなんだからな」
この始まりのコミュの言葉が【ノンセンス・プロンプ】で冬優子が語った「嘘」だと考えます。
冬優子はこの言葉をゴンドラの中で聞いて何を想ったのでしょうか。
なぜアイドルを続けようと思えたのでしょうか。
なぜ観覧車から降りたあと晴れた顔をし、Pの背中を眺めていたのでしょうか。
【ノンセンス・プロンプ】の冬優子のセリフに以下のようなものがあります
「騙し続けて、ずっと。幽霊なんていらないから。
もっともっと長く。永遠なんかよりもっと。
あなた自身気づくことのないその嘘で。」
ここでいう幽霊とは、【三文ノワール】で使われた表現で、未来での評価のことです。
トゥルーであった「箱はまだ開けない」と言うセリフは、
箱が開くときに猫の鳴き声がしていたことから、シュレディンガーの猫を連想させるものと考えられます。
これは、二つの可能性が重なり合ってる状態という意味となります。
なので、「アイドル」でいくか、「女優」でいくか、まだ明確に決めたわけではないということでしょう。
ただ、それはここで決断するつもりはない、「今」を生きていけば勝手に決まっていくはずだから、と迷いは振り切っているように見えます。
最後に、Pが冬優子に時計を渡すシーンがあります。時間がくるってしまい、なくしてしまっていた例の時計です。
そのときのPの言葉をご覧ください。
「電池を交換して」
このコミュにおいて「時計」は「アイドル・黛冬優子」のメタファーでした。
では、アイドル・黛冬優子にとっての「電池」は何だったのでしょうか。
それはアイドルを続ける理由。
冬優子が監督に口にした「トップアイドルになる」でしょう。
そしてそれは今も変わっていないはずです。
ただ、同じ言葉でも意味は更新されているのではないでしょうか。
なぜトップアイドルになりたいと想ったのか、冬優子にとっての本当に大切なものに気づいて。
それは、冬優子にとってバカバカしくてだからこそ大切な嘘。
酸素のようなもの。
酸素は呼吸にも、燃焼にも使い、一番大切なのに忘れがちになります。
それはコインの表と裏のような存在、不斉原子のような対となる存在。
「アイドル÷黛冬優子= 」
私の答えはお察しの通りですが本当の答えは明言されていません。
是非皆さんも考察していただけたらと思います。
オマケ
本コミュの内容は「エンタメ」全般に同様のことが言えて、「シャニマス」そのものも同じ運命を背負っています。
バカバカしい世界でも最高のパフォーマンスを出せば、評価されるはずと抗う姿といい、冬優子はシャニマスを体現している人物と言えます。
また、コインの表と裏という表現は、「バイ・スパイラル」以降形を変えずっと使われている表現です。
例えば同時期に実装された幽谷霧子【廻廻娩淘】と八宮めぐる【ふたり色 クレオール】の両コミュでも別アイドルのコミュでありながら同じテーマの表と裏を描いていました。
今年のシャニマスは「表と裏の両方の肯定」がテーマなのだと思います。