幽谷霧子ガチ勢が神コミュを考察する【犬・猿・雉・霧】
こんにちは。
カイリキー王と言います。
皆さんはコラボフェスの霧子Ssr【犬・猿・雉・霧】のコミュはもう読まれたでしょうか。
実はこれはとんでもないコミュで、この一枚のカードの短いコミュに霧子の思想や魅力がこれでもかってくらい凝縮して詰め込まれています。
一人でも多くの人にこのカードの、霧子の魅力が伝わってほしいということを祈って考察をさせていただきます。
特に後半の怒涛の伏線回収にはびっくりしますよ。
ということでこのnoteではSsr【犬・猿・雉・霧】通称コラボフェス霧子を考察していきたいと思います。
コミュの概要を説明しながら、過去のコミュとの繋がりも含めて考察していきます。
このカードのサブタイトルは
①閉
②開
の二つから成り立っています。
カードのイラストで舞台になっている、「エレベーターの開閉」にちなんで話が展開される形となっているので、素直に読み取ればそこからコミュ名がついているようにも見えます。
ただこのコミュ名にはさらに深い意味が込められているようにも読み取れます。今回の考察の着地点はここになります。
※重大なネタバレを含みます。ご了承ください。
コミュ内容
①【閉】
概要
霧子はまみみ・咲耶の前で「銀河の桃太郎」という本を読んでいました。
病院のボランティアで読み聞かせをする本らしく、お見舞いの子たちが持ってきた本らしいです。
「銀河の桃太郎」の話を要約するとこうです。
作中で語られる物語はここまでです。
物語を聞いて「重い」と口をはさむまみみに対して、「でも…ほら…」と続ける霧子。
「きらきらしてるの…犬さんたちにライトがあたって…捕まるところ…」
「ふふふっ…まぶしいポーズの…犬さんとさるさんときじさん…」
このあとエレベーターに乗ってイラストのまぶしいポーズを取ってる間にドアが閉まるくだりがありますが、
一つ目のコミュの【閉】はこの「銀河の桃太郎」の概要を紹介してほとんど終わります。
考察
このコミュの見どころは二点あって、一つ目は、物語に浸食されていく「霧子の世界」を見れるところです。
霧子は物語や空想と現実をごちゃまぜにして世界を見ています。
それは霧子コミュでは何度も描かれますが、顕著に見えるのはPssr【縷・縷・屡・来】通称トワコレ霧子でしょう。
Pssr【縷・縷・屡・来】については、以前考察記事を書いたのでよかったら読んでみてほしいです。
これまで霧子と同じ世界を見れる人物として描かれていたのは、霧子のおかあさんと、プロデューサーの二人だけでした。
逆にアンティーカの面々は霧子のことを特別視しすぎて同じ世界を見れていないという描写が何度も描かれてきました。
霧子の頭の中が描かれるシーンはあまりなく、ほとんどの場合他の人との対話から人物像を読み取っていくことになります。
その中で霧子の内面が語られるコミュはPssr【琴・禽・空・華】やSssr【数・数・娘・娘】、霧子GRADなど非常に限られています。
今回の【閉】ではその中でも少し特殊な描かれ方がしていて、空想と現実の入り混じっている霧子の世界を霧子目線で描かれます。この霧子の世界の描かれ方は数ある霧子コミュの中でも珍しく、私の記憶ではSssr【霧・霧・奇・譚】だけだったと思います。
コミュ【閉】の見どころの二つ目は、アンティーカの他のメンバーが霧子と同じ世界を見れている描写があることです。
特に何もないかのように自然とコミュが進んでいきますが、実は一大事件です。
Pが霧子と同じ世界を見るという話だけで、トワコレのコミュ丸々全部使いましたからね。
そもそも霧子は【WING】では他人と違うことに苦しみ、孤独を感じ、そんな自分を変えるためにアイドルに志願したと語られます。
霧子【WING】は霧子を理解した上で読むとめちゃくちゃ深いので是非読み返してみてほしいのですが、一部を要約して紹介させてください。
霧子は、不安や自信がないことを覆い隠すために包帯をつけていました。ただ包帯をつける少女を見て周囲の人は怖がったりやめさせようとします。当然周囲から孤立してきました。自己肯定感を失い、そんな自分を変えるべくアイドルに志願したのです。ただある事務所のプロデューサーはそんな自分の異常さを、「魅力」だと口にします。アイドルをはじめ霧子を受け入れる人が増えてきたある日、隠してることももっと見せていきたい、と霧子はある主張します。カメラマンに対して、包帯をメインに映してほしいというものでした。霧子の中で孤独の象徴だった包帯が、アイデンティティに昇華した瞬間でした。マイナスからプラスへの転換です。
恐らく最近の霧子しかしらない人からすると、【WING】の霧子は想像もつかないほど周囲に怯え、心を閉ざしていました。そして当時の霧子のことはアンティーカのメンバーも今も詳しくは知らないでしょう。
Sssr【数・数・娘・娘】で霧子の考え方は母親譲りであることが読み取れるので、霧子の理解者は、おかあさんとプロデューサーの二人か、霧子のおとうさん含めた三人でした。
このように霧子は、アンティーカ含めてほとんど誰にも理解されず、理解されないことに慣れて生きてきたわけです。
ただ感謝祭の霧子個別コミュ【おいのり】では、霧子と同じ世界を見てくれる人がいてくれること望んでいるようにも見える描写があること、霧子は孤独よりも他人と共にいることを望むことからも、理解してもらいたいという気持ちがあるように見えます。
少し脱線しますが、この感謝祭の個別コミュの内容は、イベント【線たちの12月】と非常に類似しています。
ちなみにイベント【線たちの12月】では凛世と小糸の心の壁がゆっくり溶けていく過程が丁寧に描かれていましたが、実はそれと対となるようにイベント【明るい部屋】では霧子と小糸の心の距離が縮まる過程が描かれています。
小糸への接し方や小糸の反応は、恐らく意識的に対比して描かれているので、比較して読み比べると面白いですよ。
話を元に戻すと、そんな霧子の世界を今回のコミュでは、当たり前のようにアンティーカのメンバー全員が同じ世界を見ているかのように話します。その様子は言葉の節々に現れるので、コミュを読んでいただければ感じられるのではないかなと思います。
②【開】
概要
エレベーターに霧子・三峰・恋鐘の3人で乗っていたときのこと。
おばあさんが近づいてきていたので扉を開けて待っていました。
次に、ベビーカーを押す男性が近づいてきたのでそのまま待って乗ってもらいました。
すると、遠くから学生がエレベーターに向かって走ってきます。
霧子は迷いました。目の前で困っている学生を助けたい。ただ、おばあさんも男性も急いでいるかもしれない。上の階でエレベーターを待っている人もいるかもしれない。学生を乗せたあとにもさらに人が来るかもしれない。
霧子は答えを出し倦ねていたときに、恋鐘が「だから、あの人まで~!」と決断するのでした。
上の画像は一連の話があった後の会話です。
ここで注目したいのが、鬼の星の話を恋鐘からしていることです。霧子の脳内ではエレベーターのやり取り時に桃太郎のセリフが聞こえていたのですが、霧子からは口にはしていないんですよね。
「銀河の桃太郎」の話を他の恋鐘や三峰にもしたこと、恋鐘や三峰が霧子と同じように連想しながら経緯を見ていたことがわかるめちゃエモいシーンです。
恋鐘はエレベーターだから簡単に区切れたけれど、鬼の星から脱出する飛行船だと命がかかってるのでこうはいかなかった、と口にします。
エレベーターから降りてカフェにて。三峰がボソりと口にします。
「あれが鬼の星だったら、どうしたかなーって」
霧子は家に帰り、布団に入って思い返します。
そんなことを考えながら眠るのでした。
考察
このコミュがとんでもない化け物コミュでして、霧子の色んな要素が凝縮されています。
【WING】のときに見られた心配性の霧子も垣間見えたのもエモポイントです。霧子が時々見せる弱さに胸が締め付けられます。
まず真っ先に思い出すのが霧子【GRAD】です。霧子【GRAD】ではある童話と、自身の体験を連想して話が展開されます。
今回のコミュとも深い関りがある話となります。
【GRAD】で語られる童話はこうです。
「どっちにも理由があるから」とねずみと鳥の二人の幸せを願う霧子。
ただ目の前で泣き叫ぶ他の参加者を見て、GRADで優勝を目指すことは、他の参加者から優勝を譲ってもらうことだということを思い返します。
ただ好きでアイドルをやってるだけの自分に他人のパンを譲ってもらう権利なんてないのではないか。それならばアイドルじゃなく医者を目指してパンを作る側になるべきではないのか。自分はアイドルを続けるべきではないのではないか…。
実はGRADでは、パンを取り合う動物、自らエネルギーを作る植物、そして全ての生命の源である太陽へと登場人物が転換されていきます。
Pは霧子にパンをあげる犬さんになりたいのか?と聞きますが、霧子はわかりません、と口にします。その答えはコミュでは語られません。ただPsr【天・天・白・布】でのPはこんなことを口にしていました。
「霧子が、お日さまなんだ…」
ここで見逃さないでほしいのは、霧子は他人のパンを譲ってもらうことが嫌だったわけではないということです。
霧子の迷いは、「自分なんかになにかできるのだろうか」という自己肯定感の低さから生じている点です。
これは【WING】から霧子が抱えている根強い問題です。
霧子はこの世界が残酷だということを理解しています。大会があれば順位がつくし、優勝すれば、優勝できない人が生じることも理解しています。
病院に入りたくても入れない人もいれば、生きたくても生きれない人もいます。
ほんとは、何もできないかもしれない自分が、怖かっただけだったのです。
【GRAD】の「ねずみとパンの童話」も、「銀河の桃太郎」も結末は作中で語られていません。
物語や童話の先にある霧子の生き方に焦点が当たっています。
霧子の読み聞かせといえば、イベントコミュ【十五夜「おもちをつこう」】も欠かせません。
【十五夜「おもちをつこう」】は、霧子が絵本を作って病院の屋上で子供たちに読み聞かせをする、というものです。
ここでは割愛しますが、自作してまで霧子が子供たちに伝えたかった物語はどんなものか、めちゃ感動するので是非確認してみてほしいです。
ただ、この霧子の絵本も完成はしますが、物語は途中で終わります。
霧子いわく「わたしがこれから頑張りなさいっていう…そういうお話」だそうです。
また、イベント【ストーリー・ストーリー】では霧子は、「人生は物語じゃないから」と口にします。霧子は誰よりも童話や物語と人生をリンクさせているように描かれていたので、少し意外な言葉だったのですが、私なりに言い換えればこういう意味になります。
「物語は結末まで決まっていて完結しているが、人生は想いや努力で変えられる。」
Ssr【犬・猿・雉・霧】に話を戻します。考察したいのは、コミュ最後の霧子が眠る前に考えていたシーンです。
霧子は両親が医療従事者で、霧子本人もアイドルを始める以前から今も、病院でボランティアを続けています。病院で働く霧子にとって、閉めたくないけれど、閉めなきゃいけないという状況は珍しくないのかもしれません。
現実は物語のようにうまくいかないことも多く、無力感を感じることも多いのでしょう。
だからこそ「自分にできることは多くない」「本当はお祈りなんてなくてもちゃんと元気に帰ってくる」と言いながら、霧子はお祈りを続けているのかもしれません。
ただ、今回のエレベーターの話はそこから一歩進んでいます。
「開ボタン」を押して、扉を開けたのだから。
今回のコミュは①閉②開。ただコミュ内のエレベーターの扉に着目すると、①閉まる②開けるです。
開く、ではなく、開ける。
自動と能動。
願い次第で未来は変わります。
これは霧子だけでは到達しなかった世界です。
みんなを乗せたいアンティーカのお話。
残酷な世界で希望を望むお話。
霧子のコミュではたびたび、「別れ」「死」が話に出てきます。
それでもずっと忘れない、思いだしたいと霧子は口にします。
きっと、今の霧子たちならパンをつくることができる。
霧子はそんなことを考えながら眠りについたのではないでしょうか。
以上長くなりましたが、私の考察となります。
あくまで私から見た霧子なのでこれが真実とは限りません。霧子の人生は物語じゃないので。
ただもしも彼女を知る一助になれたならば、更にはこの考察がきっかけで霧子のことを少しでも好きになってくれたら大変うれしく思います。
長文をお読みいただきありがとうございました。