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未修者がロースクールに入る前・後にやるべきこと
こんにちは。他学部からの「純粋未修」として法科大学院に入学し、2年時に予備試験に合格したうえで、3年時に令和6年度の司法試験に合格したさとうと申します。
思えば、未修者として法科大学院に入学してから、勉強がうまくいかずに苦しいことも、うまくいって楽しいことも、いろいろありました。
それでも、周りと比べてうまくいったのは、手前味噌ではありますが、自分の勉強のやり方が良かったからではないかと思います。周りをみていても、他の学問領域ではうまくいっていたのにもかかわらず、司法試験向けの勉強という観点から見ると効率の悪い勉強をしている人も多かったです。
そこで、本記事では、未修者として新たに法科大学院の門を叩く方々に向けて、今後の勉強方針を立てるうえで参考にしていただくべく、私の経験談を交えつつ、心構えや勉強法を紹介していきたいと思います。
予備校はちゃんと受講しよう
法科大学院の未修コースでは、あの膨大な量がある商法を、たった14回の授業で学ぶことになっています。端的に言います。そんなことは無理です。既修者が4年かけて勉強したことを、たったの14回・20時間前後の授業で追いつけると考えるのは、もはや既修者に失礼です。
そのため、未修者は必ず予備校の基礎講座は受けてください。授業開始前に受講を終え、法科大学院の授業は復習に利用するくらいの心持ちで講座を消費した方が心も学習も楽になります。
論証の覚え方
未修者が学習でぶつかる壁の一つが論証です。たまに、予備校教材の論証を一言一句覚えようとする方がいますが、その必要はありません。論証は以下のパーツに分解できます(このパーツの名称が分からないという方は予備校の基礎講座で必ず言及されているのでそれを参照してください)。
まず、論点の手がかりとなる条文です。これは学んでいくうちに、この条文が問題になるのだ、というのは分かるようになるので覚える必要はありません。条文を六法で引いて読んでおくだけで大丈夫です。面倒くさがって条文すら引かない人がいますが、論外です。未修者の成績はおおよそ「六法の汚さ」でわかります。六法は引きまくりましょう。
次に、条文解釈の理由付けです。これは理解が必要な部分であり、覚える必要はありません。なんなら、試験で書く必要もない場合も多いのですが、どうしてそのような理由付けになっているのかという部分は理解しておく必要があります。その理解のためには予備校の基礎講座や基本書などをよく参照しておいてください。
最後に、規範の部分です。これには、(ほぼ)一言一句覚えるべきものと、理解して自分の言葉で書ければ良いものがあります。前者には、文言の定義と最高裁の判例があります。文言の定義は、(定義自体が論点の場合を除けば、)学者によって多少言葉遣いは違うかもしれませんが、同じ内容を言っています。最高裁判例は、法学において絶対的な権威があります。これらは、法学者にとって共通理解になっているところがあり、個人の好き勝手に書くと減点対象になりかねないため、基本書等の文言を正確にアウトプットできるようにしたいです。
後者は、それ以外のものです。例えば、学説上の論点ではあるけれども、最高裁判例が確立していない場合には、自分が決めた立場から自分の言葉で説明できれば構いません。
つまり、一言一句覚えておくべきは、定義と最高裁判例の規範部分だけであり、それ以外は一定の立場から自分の言葉で説明ができれば構いません。暗記対象は絞りつつ、どのような場面でその論証が問題になるかとか、あてはめはどのようにすべきかといった理解主体の勉強をしていきましょう(暗記が必要ないというわけではないので為念)。
法科大学院の勉強との向き合い方
「法科大学院と司法試験の勉強をどう両立させればいいですか?」
よく聞かれる質問ですが、全くおかしな質問です。現行の司法試験制度を外観すれば、法科大学院は司法試験を受けるための道具にすぎないからです。にもかかわらず、法科大学院での学習は司法試験に直結せず、未修者の足を引っ張っています。
しかも、ほとんどの法科大学院では、未修2年目になると、ソクラテスが始まります。ソクラテスとは、本来、教授に当てられた学生がその場で思考して回答することによって、法的思考を深めることを目的としています。
しかし、当てられる問題が事前に余裕を持って与えられるのでほとんどの法科大学院では、宿題でやってきたことの発表会になってしまっています。しかも、毎年やることが同じなので、既修者も先輩ノートを用意していて、それを読み上げてその場しのぎで授業を躱しています。
未修者の皆さんはそんな茶番に付き合うほど暇ではないはずです。ましてや、法科大学院の予習に何時間もかけて司法試験向けの勉強をしないのでは本末転倒です。
司法試験の合格のことだけを考えるのであればの話ではありますが、法科大学院では、予習は自分が当てられそうなところだけほどほどに、参考になりそうな議論があればそこだけ授業中メモしておくなどつまみ食いしておいて、よくわからない純粋な学問的な部分は聞き流したほうがよいです。
なお、たまに授業を聞かないと解けないような試験問題を出すロースクールがあると聞きます(司法試験に出ない法律を出題するなど)。そんなものは既修者も解けませんから対策はほどほどにしておきましょう。
論文を書く練習をしよう
未修者はインプットに時間がかかりすぎて、論文に時間が割けない傾向にあります。しかし、アウトプットの重要性は言うまでもありません。アウトプットの段階になって、条文や論証を忘れたり、どの論証を書けば分からなくなったりと、自分の弱点が明らかになるものです。
そのため、予備校の基礎講座の受講とともに論証の暗記を進めておき、受講が一段落したら、1週間に1〜3通くらいを目安に予備校の論文講座の問題を解いておくことをお勧めします。最初は答案構成にとどめるのではなく、実際に書いてみて自分に足らないところを実感してみてください。
最後に
法科大学院に厳しいことを言ってきましたが、私にとって法科大学院はとても楽しいところでした。仲間にも出会えましたし、初めて来た街でいろんなところに行けました。勉強にうまくつきあえれば、(年甲斐もなく)こんなに青春を謳歌できる場所はないと思います。ぜひ、勉強に苦心しながらも自分なりの勉強スタイルを確立して、法科大学院未修生として楽しい学生生活を送っていってください。