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#3 ブランドとブランディングの違い


Difference between brand and branding

マーケットとマーケティングが違うように、ブランドとブランディングも違う。そして「ブランド」という言葉を一つとっても人によって解釈はそれぞれだ。

多くの著名経営者がブランドについて以下のように語っているが、もちろん解釈はそれぞれだ。

“Your brand is what other people say about you when you’re not in the room.” 
ー  Jeff Bezos, Founder of Amazon

“Brand is just a perception, and perception will match reality over time. Sometimes it will be ahead, other times it will be behind. But brand is simply a collective impression some have about a product.”
ー  Elon Musk, Founder of Tesla

“Too many companies want their brands to reflect some idealized, perfected image of themselves. As a consequence, their brands acquire no texture, no character and no public trust.” 
ー  Richard Branson, Founder of Virgin Group

“If people believe they share values with a company, they will stay loyal to the brand.” 
ー  Howard Schultz, CEO of Starbucks

“If your business is not a brand, it is a commodity.” 
ー  Donald Trump, President of The Trump Organization


これらを読むだけでも、人によって意味合いや定義がバラバラであることが分かる。

ブランドとブランディングについて、これが正解である!というものはないと思うが、ここでは自分なりのブランドとブランディングに対する解釈を書きたい。


- 日英Wikipediaによる「ブランド」の定義 - 

ブランドとブランディングの違いを述べていく上で、まずはWikipediaによる両者の説明がどのようにされているのかを見ていきたい。

A brand is a name, term, design, symbol, or other feature that distinguishes an organization or product from its rivals in the eyes of the customer. Brands are used in business, marketing, and advertising.
ブランドとは、ある財・サービスを、他の同カテゴリーの財やサービスと区別するためのあらゆる概念。当該財サービス(それらに関してのあらゆる情報発信点を含む)と消費者の接触点(タッチポイントまたはコンタクトポイント)で接する当該財サービスのあらゆる角度からの情報と、それらを伝達するメディア特性、消費者の経験、意思思想なども加味され、結果として消費者の中で当該財サービスに対して出来上がるイメージ総体。



- 日英Wikipediaから見えてくる「ブランド」定義の特徴と自分の見解 -

両言語の説明において共通している点は、大きく2つあると思う。

1つは、ブランドとは同カテゴリーにおける他の商品やサービス、ライバルと「区別」するということ。英語ではdifferentiateではなく、distinguishが使われていることから、単なる「区別」ではなく「際立たせる」的な意味合いを含めているようにも感じる。

もう1つは、その「区別」「際立たせる」対象が、「消費者」であるということ。

ここからが自分の見解になるが、日本語説明の最後に書いてある「消費者の中で当該財サービスに対して出来上がるイメージ総体」がブランドの本質に近いと思う。
ただ、絶対に違うと思うのは、イメージの総体が出来上がるのは「消費者だけではない」ということ。ブランドのイメージは、消費者だけでなく「従業員といった内部の人間」や「非消費者」にまで及ぶということである。

例えば、一般人が消費することはないであろう「エルメス (HERMES) 」や「フェラーリ (Ferrari) 」といったラグジュアリーブランドに対しても、我々一般人は何らかのイメージを抱いている。企業で勤めている人やどこかでバイトしている人は自分たちが働いている会社に対してイメージを抱いている。

また、海外旅行に行ったことがない人でも、ハワイやパリに対して何らかのイメージを抱いているだろう。日本語Wikipediaの説明では、ブランドの範囲を「財・サービス」と定義しているが、ブランドの範囲はそれらに限らず、あらゆるものがブランドになるということも言っておきたい。場所もブランドになり得るし、繊維といった素材もブランドになる。「吸湿発熱繊維」という東レの素材は、ユニクロの「ヒートテック」というブランドとして広く認知されている。空気や水、日光(太陽の光)や星空もブランドになり得るだろう。

少し脱線したが、これらの例えからも分かるように、ブランドの対象者は消費者だけでなく、「ブランドを認知しているすべての人」である


- 日英Wikipediaによる「ブランディング」の定義 -

Branding is a set of marketing and communication methods that help to distinguish a company or products from competitors, aiming to create a lasting impression in the minds of customers.
ブランディングとは、ブランドに対する共感や信頼などを通じて顧客にとっての価値を高めていく、企業と組織のマーケティング戦略の1つ。ブランドとして認知されていないものをブランドに育て上げる、あるいはブランド構成要素を強化し、活性・維持管理していくこと。



- 日英Wikipediaから見えてくる「ブランディング」定義の特徴と自分の見解 -

ここで共通している大きな特徴は、ブランディングをマーケティングの戦略や手法の1つであると述べていることだろう。つまり、マーケティングの方が範囲がより広く、または上位概念としてあり、そのマーケティングの中にブランディングが一部として含まれているということだろう。

自分の考えはこれとは全く違う。ブランディングは企業・事業経営により密接に関係しており、マーケティングよりも上位概念・上流工程であると考えている。ブランディングとマーケティングは似たような文脈や、時には同じものとして語れることが多いが、自分は両者は切っても切れない関係ではあるが、全くの別物であると思っている。両者は対極にあるものとさえ思っている。ブランディングの仕事をしていて、日々それを感じている。ブランディングとマーケティングの違いや、それに対する自分の考えについては別の機会に書くつもりなので、その時までとっておくことにする。

一言言うとすれば、強いブランドを創るためにはブランディングもマーケティングもどちらも死ぬほど重要で片手落ちになってはならないということである。

Wikipediaの日本語説明にある「ブランディングとは、ブランドに対する共感や信頼などを通じて顧客にとっての価値を高めていく」というものは、共感や信頼という情緒的な側面に触れていることは良いと思う。ただ、繰り返しでしつこいとは思うが、その対象は「顧客」だけではないと自分は強く思っている。



- 自分が考えるブランドとブランディングの違い -

「ブランドとは、ブランドを認知している人が思い描くそのブランドに対するイメージのこと」
「ブランディングとは、そのイメージを「意図的」に創り出すこと」


シンプルに、かつ教科書的に書くとこのようなことだと思っている。
ブランディングの経験を踏まえた自分の解釈をさらに載せると、違いは以下のようなものであると考えている。

「ブランドとは、企業やビジネスの生き様や志そのもの」
「ブランディングとは、その生き様や志が何かを解き、それをカタチとして創り出し、組織や商品に宿すこと」


ブランドの成否の80%ぐらいは、そのブランドの経営者やオーナーに全てかかっていると思っている。経営者やオーナーがブランドに対してどれだけの意志があるのか、熱があるのか、覚悟があるのかが成否を分けると考えている。そして、その意志や熱、覚悟といったものをカタチにし、五感を通じて届けていく必要がある。

1.  自分たちのブランドの生き様や志とはどういうものなのかを自分に対して深く問い続ける
2.  問い続けて出てきた答えをカタチとして表現する
3.  創り出されたカタチを伝えていく

この3ステップがあるべき姿で、順序は変えてはならない。
個人的には、1と2がブランディングであり、3はブランディングとマーケティングの両方であると考えている。

なので、たとえ一流のクリエーターに依頼しカッコいいCMを打ち出して、世間から高い評価を得たとしても、それは表面的で一時的な魔法のようなものであり、コアであるブランドがそこに宿っていなければ、いずれ魔法が解け、現実に引き戻されていくのは時間の問題である。

ヴァージングループのリチャード・ブランソンやテスラのイーロン・マスクが言っていることは、このようなことだと思う。

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