おかえりなさい
年間143試合のプロ野球のうち、たったの3試合。プロ入りから私が個人的に楽しみにしていた3戦も残すところあと1試合となった。2018年10月23日。「あと1イニング。投げたかった。頼むと思いながら見てた」と目を赤らめながら語った男の凱旋試合だ。
初日、試合は九回まで福岡ソフトバンクのリードのまま進みウグイス嬢から「ピッチャー甲斐野」と名前が呼ばれるとキリッとした表情でマウンドへ向かう。"慣れ親しんだ神宮"と人々は言うだろうが、私が思う彼の九回の神宮のマウンドは"俺のステージ"ではないだろうか。そんな神宮球場九回のスペシャリストだったがやはりプロのマウンドは難しい。2死を取るも連打と四球で押し出しに。1点を献上し、はじめてのセーブ・神宮球場でのセーブを挙げることができずにマウンドを降りた。
この時、私はブルペン付近の席にいたわけだが「こういう感じになるんだ」と思ったことが1点ある。それは途中交代するときの甲斐野投手の姿だ。大学時代は…少なくとも私が見ている大学3年以降の彼はイニングの途中でマウンドを降りたことはない。3年秋は六回あたりからマウンドに上がり最後まで。4年時にはクローザーとして大車輪の活躍を遂げたわけだからマウンドを降りるはずもない。そんな彼が途中交代になったとき、思考が働いてなのかベンチから遠く、円の外側に行った。「まだ投げたい」「最後まで投げたい」「あと1人」。その瞬間に何を思っていたのかは分からないが彼なりの意地が垣間見えて、元担当としては面白かった。
幸いにもまだ1戦ある。名将・工藤公康監督がどういう采配に出るのかは分からない。投げる機会があったのなら。昨日のブルペンでの様子を見る限り、同じ轍を踏むことはないだろう。今季の神宮球場ラス投。いい形で終えて欲しいものだ。
P.S 神宮球場が苦手とか行ってる人たちはタイムマシンでも作ってみてきて下さい。あれで苦手とかありえないんで。刹那な時しか見てないくせに語るな。