息が詰まるようなこの場所で
個人的に大好きな心理描写が秀逸な一作です。
人間のコンプレックスやトラウマを皮肉感満載に描いていて、あるあるという共感への想いが読者を増やしていると思います。
以前にバトルロワイアルという問題作が有名となりましたが、あれも素晴らしい心理描写でした。
中学生のクラスメートに殺し合いをさせるという前代未聞の作品でしたが、
出版に至ったのは、あの心理描写の素晴らしさが読む者を熱中させるからだと思います。
この作品にも通じるところがあり、会話が続くシーンはほとんどなく、
短い会話の後には、心理描写、情景描写の巧みさが物語にリアリティと深みを与え、
先が気になってどんどん読み進めてしまいます。
私のように東京の東側の下町に住んでいる人間からすると、
タワマンに住んでいるだけで羨ましくもあり、リッチなんだろうなと思うのですが、
タワマンの最上階と低層階に住んでいる人同士ではこうも違うのかと勉強にもなります。
人間って結局どこまで行っても意地やプライドの張り合いなのかな~と読み進めていくんですが、
エンディングが近づくにつれ、だんだん見栄やプライドの中身があらわになり、人間と人間の生のコミュニケーションが始まり、
最後はけっこう感動的に終わります。
人間と人間とは、親子もあり、友人同士、父親同士、奥さん同士と色々な人間関係が同時進行で進んでいき楽しいです。
一気読み間違いなしの作品です。