ちょっと視点を変えて:毒「子」という存在

先日CSで見ていた「ミルドレッド・ピアース 幸せの代償」というドラマ。

社長夫人のミルドレッドは、長女と次女に恵まれて裕福な暮らしをしていた。だが1929年、世界大恐慌の煽りをうけて夫は自分の会社をなくしてしまう。

お金に困って、自慢のパイを売って家計の足しにする日々に、夫の浮気が発覚。夫は自分の不甲斐なさを突きつけるようなミルドレッドよりも、裕福な女に囲われる方を選んだのだった…。

この中のキーパーソンは、実は長女。

ミルドレッドは特にお金が欲しくて結婚したわけではなく、夫もお金に執着がないゆえに会社経営に失敗したのですが、この長女はまさに金の亡者。

というところから始まる長いお話です。以下、ネタバレですのでどうしても読みたい方だけ、文字を反転させて読んでください。

人間関係が構築できず、学校も嫌い、友達もいない、ピアノを弾くのが唯一世間に「認められる」点という長女。

両親の離婚も「恥」と捉え、必死になって働くミルドレッドを馬鹿にし、蔑み、暴言の限りを尽くすことも…。ミルドレッドはその都度諌め、叱り、なんとか和解しようと努力を続けます(次女は幼いうちに亡くなり、余計にミルドレッドが長女を甘やかすという部分もあります)。

ミルドレッドはお菓子作り・お料理の腕をビジネスに昇華させ自分の店を持ち、景気の回復にうまく乗り、チェーン店を出すまでにのし上がります。

長女はその間もわがまま三昧、常に母親に攻撃を仕掛け、父親にはうまく取り入り(時には嘘をついて)、悪い仲間と付き合ってみたり、交際相手が裕福だとわかるやいなや妊娠したと嘘をついて脅迫したりと危ない人間に…。

最終的に、ミルドレッドは「お前なんて私の子供じゃない」と長女を追い出します。

夫もようやく長女の正体に気づき、自分の責任に気づき、ミルドレッドのもとに戻ってきます。

監督の視点は、「離婚されたかわいそうなミルドレッド」「女手ひとつで子育てする大変なミルドレッド」「努力が報われ、悲しいことがあっても頑張るミルドレッド」「飛んでる女ミルドレッド」を描いているように見せて、

・夫の浮気ぐらい許していれば、離婚されずに済んだのに

・自分がわがままだから苦労するんだ

・努力努力って女の努力なんて結局色仕掛けじゃないか

・次女を失ったのは奔放に生きる女への戒め

・女の仕事なんてどうせうまくいかない、最終的には夫の助けが必要

という、20世紀前半の男女差別を色濃く打ち出した超男尊女卑が見え隠れするというもの(笑)←正直、ものすごく不愉快な場面も多いです。ケイト・ウィンスレットの素晴らしい演技というのもありますが。

でもこの長女は、まさしく毒子と言っても過言ではないでしょう。

今の時代なら反抗性何とかとか、反社会性何とかとか、「病名」がつくのかもしれません。

不良娘というジャンルではなく、世間的・社会的には何とかなっているのに、父親には普通の娘なのに、母親だけに異様なまでに嫉妬心・対抗心をむき出しにして攻撃し続けるというのはもう、ね。

つくづく、もし私がこういう娘であれば毒母も虐待はできなかっただろうにと思うと、羨ましい思いでいっぱいになりました。

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