もう二昔前ぐらいになるが、雑種犬のネットサークルを主宰していた時に、とある愛犬雑誌から寄稿を求められ、流行りだした「MIX犬」について警鐘を鳴らす原稿を書いたことがある。
当時ちょうど、ラブラドゥードルがカナダ・アメリカで話題となっていた頃で、日本でも今でいう「チワックス」など純血種の小型犬同士を掛け合わせるのが流行った。純血種より安いからという理由もあった。
その頃の風潮は、「両方のいいとこ取り」「可愛さ二倍」などといったもてはやし方が多かったのだが、中には奇をてらって、ハスキーとダックスフントとか、コーギーとゴールデンレトリバーなど、ありえない交配をしてとんでもない子犬を作る輩も現れていた。

当然そのような無理のある個体は、すぐに死んでしまったり、重い障害が出てきたりする。
ただでさえ日本のブリードにはダメな点が多く、股関節疾患を抱えたゴールデンレトリバーや異様なアレルギーを持った柴犬などが多数散見される中での、さらに奇妙な掛け合わせとなると、当たり前だがもう地獄だ。
買う方は、「一体どんな犬に育つんだろう?」というワクワク感でいっぱいなので、場合によっては純血種よりも高くなった「変なハイブリッド」を喜んで迎え入れる。
しかし1歳にもならず悲惨な死を遂げたり、障害が重すぎて安楽死を進められたりという悲劇が絶えず、私はそのことをとにかく世に問いたかった。

その原稿には、ペットショップの広告を扱う部門から待ったがかかった。そのような内情をバラされては困るからだ。
しかしその時の編集長が、掲載すると決断してくれた。たぶん、私のもとに届いているような悲劇が、やはり聞こえていたのだと思う。
まあ、そんな何百字かの文章など、雑種犬サークルの人以外には全く響かなかったとは思うのだが、少なくともそれからしばらくして「ハスキーとダックス」などという無茶苦茶な繁殖は消えていった。

私自身、この頃に飼っていた保護犬が「おそらくミニチュアシュナウザーのブリーダーが、サイズを小さくするためにジャックラッセルとかけ合わせたのだろう」と獣医が推察する小さな灰色とベージュが混ざった犬を飼っていたが、ものすごく凶暴で、まるで激怒症候群のようなところがあり、穏やかになるまで4年かかり、5年目で原因不明の多臓器不全で死んだ。

すべてを血のせいにするわけではないが、いらぬ悲劇は防ぐに越したことはない。

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