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dApp Staking これまでとこれから

お久しぶりです!今日はタイトルの通りAstar NetworkのユニークなプロダクトであるdApp Stakingについて、今の状況と来年Q1にリリース予定の新装開店V3についてお伝えしようと思います。

コアチームに参加して約一年半、すでに色々ありましたがこれからの半年は半年前に思っていた半年後よりもずっとワクワクしています。何故ならTokenomics2.0とdApp Staking V3に本当に期待しているから。ポータルチームでやってきていますが、職業柄気づくことは当初(チームに入る前)から多々あり、またコミュニティでみなさんから聞くこともたくさんありましたし、色々問題を感じても、訴えても直す方法が簡単じゃなく、なかなか答えが出なかったのは辛かったですね。UIでは解決できないどころではなく、ネットワークの根幹部分で簡単じゃないどころか、本当に一大決心をしないと変えられない部分だったんですね。それが半年ほどかけ、アーキテクチャーが決まり、実装に入っています。こんなに嬉しいことはありません。

UIにおけるUXというのは常にバックエンドとの戦いといいますか、それは慣れていたのですが、ここまでの大型改修に関われているのはAstarの一ファンとしては感慨深いものであります。

それでは見ていきましょう。



dApp Stakingって何?

dApp StakingはAstarが考案した、完全にオリジナルなプロダクト(ステーキングメカニズム)です。ネットワーク上で開発を続け貢献する開発者を支える仕組みを開発しました。PolkadotのパラチェーンであるAstar NetworkはリレイヤーであるPolkadotのShared Security下にあり、この重要なポイントにおいてリソースが必要ありません。詳しくはコインポストさんの記事がわかりやすいかなと思いますのでこちら参照ください。

ネットワークのバリデーターへのインセンティブを捻出する必要がない代わりに、通常のステーキングメカニズムを用いながらネットワーク上で活躍する開発者たちへのインセンティブを供給するシステムがdApp Stakingです。

dApp Stakingはいつでも3者間で成立します。ネットワーク、開発者そしてトークンホルダー(市場参加者)です。ネットワークのブロックリワードの一部を開発者、また他の一部をdApp Staking参加者のインセンティブとして割り当てられています。トークンホルダー(参加者)が応援したいdAppsを選び、Stakeする、そして開発者は参加者がStakeしてくれた枚数に応じてインセンティブを受け取ることができます。参加者はこのメカニズムに参加しトークンをロックし、ステーキングリワードを得ます。Astar Networkのステーキングは一般的な解釈と違い、ユーザーのウォレットから資金を移動することはありません。ウォレット内にロックされているだけなので、リスクも少ない(参加者に依存する比率が大きい)といえます。これは始まった時からこの先も変わることはありません。

しかし、Astar Networkが初めて稼働し始めてから気づいた問題も多く、ネットワーク始動から1年が過ぎた頃の2023年Q1頃には、これを解決していくためのディスカッションが増えていきました。共通認識となったのがdApp Stakingのメカニズムの改善にはトークノミクスの改善が不可欠である、ということでした。

抱える問題、解決したいこと

dApp Stakingの問題

まず第一に大問題だと感じていたのがトークノミクスの開発者インセンティブ割り当て(Build2Earn)が固定であり、それらが、ステーキングされている枚数に応じて配分されることでした。つまり1dAppしかなければ、そのdAppが全ての報酬を受け取るという状況も考えられるのです。

また新しくリストされたdAppが圧倒的に不利な状況であると言わざる負えない状況になっています。無論、マーケティングが優れていれば参加者を誘導することはできますし、それが本来望まれていたことでもあるのですが、うまく機能していません。

なぜなら、と考えれば、dApp Stakingに対し参加者のエンゲージメントを強めるものが特にない、という3番目の問題に辿りつきます。参加者は1度dApp(s)を選べば常にリワードを受け取っている状態であり、claimしなければウォレットには入らないものの、資格を失うことはありません。つまり1年何もしなくても1年分のリワードが参加者には入ってくるので、どのdAppsにステークするかは、関係がない状況になります。これでは新規参入のdApp(s)に勝ち目はほぼないわけです。一部のdAppsに多額の報酬がいくことは望まれていませんでしたし、参加者が真に望み、それが開発に還元されていたとしても、上限はあるべきではないか、という考えに至りました。現状のままdApp Stakingがスケールできることは不可能であり、200dApps以上をサポートできる仕組みが必要と認識しました。

参加者にdAppsが頑張っているか、可能性があるかを見極めて選んでほしいという思想はあるのに対し、判断材料が乏しいのも問題でした。データの可視化は当初からの予定ではあったものの、各dAppsが受け取っている報酬は意識的に表には出ないよう設計されていました。開発者の負担を減らし開発に集中できる状況を作り出すことが目的ではあったものの、多額の報酬に引き換えられるほどの開発状況が確認できなかったり問題視されていました。

他にも、開発者が長期に渡りインセンティブをclaimしていない場合もあることも問題視しています。dApp StakingのメカニズムではeraというPolkadotのブロック生成の単位をコアに使っており、データがera毎に蓄積されるため、unclaimが溜まるということはネットワークに負荷をかけているということになり、解決が必要と感じていました。(そして開発のインセンティブなのに、要らないのであれば、単純に売られない方法が欲しいですしね)

 ✅ dApp Stakingの問題まとめ

  • 開発者リワードの割り当てが常に固定であり、必ず報酬がもらえる仕組みになっている、スケールできない

  • 新規参入でステーカーの獲得の壁が大きい

  • 参加者のエンゲージメントを高める方法があまりない

  • データの可視化ができていない

  • Claimされていないトークンはネットワークの負荷と売り圧にしか繋がらない


トークノミクスの問題

そして、これらに対し解決方法を探していくとトークノミクスの改訂なしには成し遂げられないという問題にぶつかります。トークノミクスを見直すのであれば、常々感じていた問題も含め、しっかり見直そうということになりました。

トークノミクスの解決したい一番は高いインフレーションです。コミュニティ間でも度々問題視され、ASTRのバリュエーションはもっと高くてもいいはずなのに、トークノミクスが悪い、と言われていました。インフレーションをできるだけ下げるという使命のもと、外部の専門チームを招き徹底的に検証しました。

ガス代にも問題がありました。Astar EVMのガス代が安過ぎたのです。これではバーンしても全く効果が表れず、そしてガス代を収入にするコレーター(パラチェーンのノード運営とポルカドットのバリデーターにトランザクションを渡す役目)も当てにできません。

dApp Stakingの開発者および参加者リワード割り当ての修正、こちらは上記のdApp Stakingで述べた通りです。

その他にもコレーターの収入が多いという指摘もありました。コレーターはノードを守る大事な役割ですが、セキュリティは担っていないので、高くするとビジネス目的で集権的になってしまいます。

ということで、ブロックリワードの割り当ての全てに対して検討をし直しました。こちらが現在の割り当てです。

現在のブロックリワードの割り当て

 ✅ Tokenomicsの問題まとめ

  • 高く、固定のインフレーション

  • dApp Stakingの問題(上記参照)

  • Astar Native とAstar EVMでのガス代の違い

  • トレジャリーとコレーターへの割り当てが多い

専門チームからのリポートの元、議論がなされ、たどり着いた先がコアチームが今実装に取り組んでいる新トークノミクスとdApp Staking V3になります。

トークノミクス2.0

先にトークノミクス2.0を見ていきましょう。上の章で挙げた問題点を下記のように解決してきます。

Tokenomics 2.0

 TVLに応じた変動性のインフレーション

TVLとはdApp StakingでロックされるASTRです。高いほどASTRは安定し、しかし、参加者のステーキング報酬が発生します。つまりTVLが低い状態では必要のない報酬を生成されないような構造をトークノミクス自体に組み込んでいきます。(賢い!!)ターゲットTVLは50%になるのでTVLが50%になった時、全てのブロックリワードが生成されるつまりこの図で言う215.25枚が1ブロックで生成されることになります。

全体の割り当て

現在のものと比較してみると一目瞭然ですが、ほぼdApp Stakingと言える割り当てになっています。Treasuryは60%減り10.76 ASTR/blockです。全体の5%の割り当て。これもdApp StakingそのものがTreasuryの役目を担い、すでに稼働しているGrantシステムのUnstoppable Community Grantをはじめ、ガバナンス実装後にはコミュニティプールが今後さらに活発に使われていくことを想定しています。コレーター割当は49%減の6.89 ASTR/blockです。同じく見直されるガスフィーにより調整が取れる目論見です。全体の91.8%はdApp Stakingで構成されており、うち24.4%が開発者のインセンティブに割り当てられています。これは現在よりも増えており、スケールするためになるべく割り当てを増やしたいという意図があります。

トランザクションフィーの調整

Astar NativeとAstar EVM間でのガス代に差がありました。そして特にAstar EVMの方が安過ぎたので、ガス代を同じになるように調整していきます。そしてガス代の20%がコレーターに支払われ、80%はBurnされます。

不要なインフレーションはミントしない、もしくはburn

先にお伝えしたようにTVLによりミントするインフレーションを変動することと、スケールするために割当てた開発者用のリワードについては不要分はバーンする設計になっています。こちらはdApp Stakingの部分で触れていきますが、全体的に必要なインフレーションと不必要なものをしっかり分別でき、要らないものは存在させない設計になっています。

MaartenからForumに出されたプロポーザルです。これを元に実装中です。



dApp Staking v3

dAppStaking V3

さて、やっと本題なのですが、ここまでdApp Stakingを実現するためにもトークノミクスを先に見直してきました。V3の解決方法を見ていきましょう。


Vote / Build ピリオド

大きい変化の一番は一定期間がすぎるとステーキングが解除されることにあります。参加者のエンゲージメントを高めるとともに、初期参入のdAppsにStakingしたままでSleep to Earnという状態を打開するためのメカニズムです。

1つのdAppStakingの期間が3ヶ月位(quater)として、そのうち2週間ほどをVoting Periodそして残りの11週間をBuilding Periodと仮定します。

Vote Period
・ Voting Period期間中はリワードはもらえません。この期間に生成されたブロックリワード(Staker分もBuild2Earn分も)はボーナスプールに入ります。
・ この期間にdAppsにVoteされたASTRトークンだけがボーナスの対象になります。
・ ボーナスは参加者向けで開発者向けではありません。

Build Period
・ Voteしてステーキングされたトークンに対しBasic Rewardが発生します。
・ Voteできていない場合、参加者はリワードを受け取ることができません。
・  Vote はいつでもできます。その日からBasic Rewardを受け取ることができますが、ボーナスが発生するのはVoting 期間にVoteできたASTR トークンだけになります。
・ Build Periodにステーキングを解除したり、他のdAppsに移動したりするとその時点以降それらのトークンはボーナスを受け取る資格がなくなります。


Tier システム

dApp Staking V3ではプロジェクトがインセンティブを受け取るスロットを競争していくことになります。4つのTierが設定され、それぞれのTierに条件となるASTR staking量が設定されます。Tier毎にスロット数が異なります。

dAppsはステーカーを集めなければリワードをもらえません。まさにパッシブインカムだったものが、エコシステムへの貢献者に対し適正なジャッジメントができるようになりました。そしてそれは参加者であるステーカーのVoteにより決まります。

一番低いTierである、Tier 4への条件を満たさないプロジェクトにはリワードは支給されません。しかし、Vote/Build periodを通して条件を満たした時点(もしくは翌日から)リワードの対象になり、また条件を満たしていても全体の中でプロジェクトが集めたASTRが他のプロジェクトより少なく、スロットが埋まってしまった場合は下のTierに下がるか、外れてしまいます。
各Tier毎に異なるリワードが固定で設定され、era毎にリワードが発生します。

このTier システムはASTRのマーケット価格にも影響を受ける変動的なシステムになり、トークン価格が上がった場合、固定のASTR枚数を減らすことにより、必要以上にリワードが多くなることを防ぐとともに、より多くのdAppsをサポートできるスケールが可能となるメカニズムになっています。

変動Tierシステム

dApp Staking Burnメカニズム

プロジェクトはVote期間中により多くのASTRトークンを集め、より良いTierを狙うことになります。 しかしながらリストされた全てのプロジェクトでTierスロットが毎回全て埋まるとも考えられません。その場合、開きスロットに割り当てられたリワードはBurnされます。

Burnとはトークンをマーケットから抹消することです。供給量が減るので1枚あたりのValueが上がります。前章でも触れた通り、エコシステムに必要なinflationを大事に、不必要なものが流通されないように改修できています。

Burnメカニズム

他にもBurnされるトークンがあります。
・ステーカーのボーナスリワード:一定期間claimされない場合
・開発者リワード:一定期間claimされない場合

UIはどんな感じに?

データを大事にしながらゲーム感覚でステーキングに参加できる、そんなUIにしたいなと思っています。dApp hubとして、エコシステムの中心的役割としてリストされているプロジェクトが発信できる場を兼ね備えることができれば良いですね。ここら辺はイーサリアム上の良いアプリケーションを使っていくこともできるようになるのがAstar zkEVMの期待できるところでもありますね。

最後に、最初に出されたプロポーザルはこちらです。基本的なファンクションについては変わっていません。


おわり(ガバナンス、$ASTR、Astar zkEVM)

さてトークノミクス、dAppStakingどちらか一方を話していても、どちらも密接に繋がっているため、今回はいったい何が起こっているのか、合わせて書いてみました。

現在トークノミクス2.0の第一フェーズが実装中になります。これが完了するとまずトランザクションフィーが徐々に移行していき、その後コレーター、Treasuryのアロケーションが変更になります。その後はdApp Stakingそのもののリリースをもってトークノミクス2.0のリリースも完了になります。

それと同時にGovernanceに対しての提案も始まっています。Astar NetworkのガバナンスはdApp Stakingが中心になっていきます。ネットワークに貢献をする開発者が大きな意思決定パワーを持つべきだと考え、dApp Stakingに参加するもの(開発者、ステーカー)のみが、いわゆるガバナンストークンを受け取れる仕組みが考えられています。下記のプロポーザルがベースとなり近いうちに進捗が共有されることと思います。

Astar zkEVMの新チェーン追加により、ASTR トークンはどうなるのかという心配や困惑の声をたくさん聞きました。創太さんはもとより、コアチーム全体でいかにASTRにバリューを持たせるか、を常に考えている中での決断であります。イーサリアムに進出することにより、大きなチャンスが掴めると信じています。基軸通貨はETHになりますが、こちらに$ASTRっていつ使うの?というところを書き出しています。(正確にはテストネットの進捗を待ちましょう。)

Astar zkEVMが発表されたすぐ後に公開されたLawrenceさんのこちらの記事、「ポルカドットを離れるのではなく、むしろ逆」という、物書きの方の角度の切り取り方って素敵!とこちらもハッとしてしまい感謝しかありませんでした。ということで是非みなさん読んでください。

Youさんの記事はみんなの心の拠りどころ、日本のコミュニティがしっかり教養をもっているのはみんなyouさんのおかげですね。私もたくさん勉強させていただきました。Astar zkEVMの発表時の内容と考察も参考にされてください。

それでは、私はポータルチームの一員としてdApp Staking V3頑張ってまいります。わからないこと、伝えたいこと、お叱り不安、協業、パートナーシップ、全部Discordにどうぞ!

今年に入りAstar Networkでは猛烈に日本チームの採用が行われました。BDが急に分厚くなり、Xでの日本コミュニティ向けの発信も増えています。ハッカソンや勉強会の機会も多数ありますのでこの機会にXのAstar Network Japanのフォローもよろしくお願いします😁


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