クレーの天使
谷川俊太郎さんの「クレーの天使」を読んだ感想です。
私がこの本を知ったきっかけは、ポッドキャストで聴いた朗読でした。
ちょっと渋めの男性が、ゆっくりと読み上げる詩の数々がすーっと心に響いてきて、すぐにタイトルを検索してみました。そして、数日後に都内の大きな本屋さんに行った際に購入しました。
この本は、クレーという画家のさまざまな天使の絵をもとに、谷川俊太郎さんが書いた詩集です。それまで私は天使というと、とてもピュアで、明るく、神聖で、賢いようなイメージを持っていました。けれど、この本に出てくる天使は、谷川俊太郎さんもあとがきで仰っているのですが、「ギリシャの神々のように人間的」です。泣いたり、笑ったり、おませだったり、忘れっぽかったり。そして、いつもわたしたちのそばにいてくれる存在のようで、読むとわたしは一人だけど、独りではないと感じました。家族や友達がいるのは確かですが、天使も、私の目には見えないけれど、私の心の中にもにいるんじゃないかな、とそんなふうに思えました。
さみしいとき、失敗して苦しいとき、人間関係がうまくいかないとき、なんとなく落ち込んでいる時、うまくいっているのに不安なとき、うれしいことがあったとき、ふとしたときに手に取る一冊になりました。クレーのシンプルな線で描かれた天使たち、谷川俊太郎さんの選び抜かれた言葉。以前、自分で朗読して録音して聴いてみたことがあります。私のおぼつかない朗読でも、その言葉の余韻というか、言葉そのものが持つ力と波長、そんなようなものがとても心地よく染みわたりました。そして、あまり好きではないと思っていた自身の声が「悪くない、案外好きな類」の声だなと思えたのも、嬉しい発見でした。
言葉は、自分を形作る要素のひとつだと最近よく感じています。谷川俊太郎さんは、その紡ぎ出される美しく誠実さを感じさせる言葉は、いつも新しい発見と感情と、世界の見方を教えてくれるものだと感じています。きっと、私はこの「クレーの天使」を今後も何度も何度も、読むのだろうと確信しています。