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映画「花束みたいな恋をした」の余韻の中にいたいんだよ

曲が止まり、エンドロールが消え、真っ暗だった劇場が明るくなる。

同時に劇場スタッフが二名、スクリーンの前に立つ。




「新型コロナウイルス対策で規制退場を行っております。A列の方から順番に――。」


もったいない。

今話しかけないで。

まだ上書きしないで。


まだふたりの物語の余韻の中にいたいんだよ。



まるで、麦くんと初めて出会った日に、朝帰りしてベッドに飛び込んで家族の声を遮断している絹ちゃんと同じ気持ちでした。


(もちろんちゃんとスタッフさんの指示に従って映画館をでました。I列でよかった!)


本作は、麦くん(菅田将暉)と絹ちゃん(有村架純)が、2015年から2020年の5年間に渡り、恋をしてその恋が終わるまでのお話です。

これでもかといわんばかりに映画や本、漫画やゲームの固有名詞がバンバン登場してポップカルチャーの移り変わりと共に物語が進んでいきます。

同じ時代を、同じような場所で、同じような年齢で生きている三軒茶屋在住のサブカルクソ女にはぶっ刺さってしまいました。

映画の感想なんて書いたことないけど、どうしても脳内がぐちゃぐちゃなので整理したく、つらつら書いてみようと思います。

・サブカルチャーってなんだ

麦くんと絹ちゃんはいわゆるサブカル人間です。

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「押井守がわかるのか」「この本棚、ほぼうちと同じじゃん」「クロノスタシスって知ってる?」「ジャックパーセル履いてるんだ」「なんか、服装似てるな」「早稲田松竹と下高井戸シネマのラインナップが――」


こんなに好きなものが同じなんて、自分がもう一人いるみたい。二人が惹かれあうきっかけはその好きなサブカルが交わる瞬間でした。


サブカルの定義がよくわからなかったので辞書で調べたんですが、小難しいことばかり書いてあって余計に分からなくなりました。対義語がメインカルチャーであるとすれば、一番分かりやすくて楽な解釈は「大勢が知らないカルチャー」のことかな。


ただ、時代や流行の変化に応じてサブだったものはいずれメインにもなりうるので(逆も然り。80年代ファッションとか)、ここの線引きは難しいし、だからこそわかりづらい曖昧な定義になっちゃってるのかなとも思います。

例えばお笑いだったら、霜降り明星が好きって2015年に明言していたファンの方は、周りからは無名の芸人が好きなサブカルの人、という認定をされていたかもしれない。お笑い好きな人ならそれこそ粗品が知る人ぞ知る、みたいな存在だったのかもしれない。でも、今霜降りが好きなんですって言ったらあーほぼ毎日バラエティでみるよねーと、今後はむしろサブカル勢が嘲笑っちゃう感じ。だから厳密には「大衆が知ってる・知らない」で区切るのはすごく雑なんですけど。

麦くんが「ショーシャンクの空に」がマニアックだと発言する男性を小馬鹿にしているシーン、ああ自分もこういう節あるかも・・・とか、「ワンオク、聴く?」に対して「聴けます」って言う返事も・・・
大衆に迎合しない、世間が知らないものを知っている自分が正義でありかっこいい。そんな風に思ってしまう痛々しい自分を突き付けられた気がして、ここらへんは共感性羞恥の嵐でしんどかったです。

Snow Manの岩本照くんをJr.時代から10年くらい応援してるんだよとか、この映画に「佐々木インマイマイン」に出てた役者さんが結構いたよねとか、ちょっとマニアックなもの、私知ってるんだよって、なんか言いたくなってしまうダサさ。

サブカルの寒い感じはそれだけじゃない。絹ちゃんはラーメンの食べ歩きオタクだったのに、麦くんと付き合ってからはぱたりとラーメンを食べに行かなくなります。天竺鼠のライブだって、日程忘れるなんてありえない。本当に好きなんじゃなくて、少し尖ったものが好きな自分に酔いしれてるだけなんじゃないの?そう、広く浅くのサブカル好きは、やや流されやすい。私にも思い当たる節がある。こんなところまで描写しなくていいよと、ここもすごく恥ずかしくなっちゃうポイントでした。
冒頭のイヤホンに対する熱弁もそう。ファミレスで隣に座ったおじさんの知識をまるで自分の大切な信念かのように語ってしまう感じ。くぅ〜、、、


というのは置いておいて、共通の趣味から麦くんと絹ちゃんは次第に惹かれていきました。

でもそれってつまりその人自身じゃなくて、その人を形成しているカルチャーを好きになっただけなんだよね。

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じゃあ、その人って何なんだろう(壮大)

その奥のその人自身の「人格」とか「自己」って何なんだろう。


麦くんと絹ちゃんは最終的にはお別れしてしまうわけだけど、もしかしたら好きなものの奥にある人格とか自己の、根底の部分が実はそもそも違っていたのかもしれない。

社会の変化とともにふたりの考え方に少しずつズレは生じていったけど、実は最初からめちゃくちゃ別の考え方をする人間だったのかもしれない。。。とか、色々考えたんですけどもう良く分かりません。。。(困惑)

好きな人にしろ友人にしろ、その人が好きなものこそがその人のアイデンティティだと錯覚してしまいそうだけど、その奥のその人自身を見る努力をすべきなのかなと、感じました。


・私は麦くんになるのか、絹ちゃんになるのか

麦くんはイラストが好きで、それを仕事にするために頑張るけど、なかなかお金にならない。(いらすとやのシーン、すごくつらかった。)絹ちゃんとずっと一緒にいるためには、絹ちゃんとの生活を現状維持するためには、就職をしなくちゃ。

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好きなことを仕事にしたいという理想を捨てて、就職という現実を選ぶ麦くん。
一方でイベント会社への転職を決意して、好きなことを仕事にするという理想を選ぶ絹ちゃん。

本当は好きなこと仕事にしたいという気持ち、でもそれが無理だと悟ってしまった気持ち、好きだったものに心が動かなくなってしまったときの気持ち、理想ばかり語る人に思わずいつまで学生気分なんだって言ってしまう気持ち、他人への嫉妬や羨ましい気持ち。
私自身もその感情を一通り抱いたことがあるので、麦くんのすべてに共感出来てつらかった。(そんな経験を経て4月に転職を控えているのですけどね・・・)
それが分かっていたから転職の件を相談できなかった絹ちゃんの行動もとても理解できる。
理想と現実どっちもバランスよくなんて難しいけど、今の自分は麦くんであり絹ちゃん、どちらの立場でもある(と思っている)ので、わかるわかるよ、、、二人まとめてぎゅっと抱きしめたい、、、と思わずにはいられませんでした。

数年後はどっち寄りの考え方になってるのかな。変わりたくないのに、社会や現実での新しい出会いは、簡単に人を変えてしまう。
私は理想主義者なのか、現実主義者なのか?

一緒にいるために少し前に進んだだけなのに、書店で手に取る本とか、作業中にイヤホンしてしまうとことか、日常生活の中で些細な変化が垣間見えるのがとても切なかったです。

最初は仕事終わったあとにイラスト書けるねって話してたのに、実際は20時以降も働いてて全くそんな余裕ないところとか、目を瞑りたいくらい現実のあるあるで残酷でした。
本当に好きなことだったら時間割いてでもできるでしょ?と思う反面、まずそんな体力ないし、仕事も責任持ってそこそこ楽しくやれてるなら、睡眠時間削ってまでやるのは相当覚悟がいるよな、、、とも思いました。言い訳を並べてるだけだけど、いざ実践するとなるとハードルはやっぱり高いと思う。
麦くんへ。今はコロナの影響でテレワークが主流になって、比較的前より自分の時間が作れるようになってきていてね、、、どうか、イラスト続けて欲しいなと、未来の麦くんに個人的に願ってます。
大人になるとか、社会に出るとか、つらいことがほんとうに多い


・「花束みたいな恋をした」の意味

「女の子に花の名前を教わると、男の子はその花をを見るたびに一生その子のことを思い出しちゃうんだって」

真夜中に缶ビール買って歩いてみたり、ベッドの上でお菓子食べながら漫画読んで泣いたり、一緒に映画館や美術館行ったり、老夫婦が経営しているパン屋さんで焼きそばパンを買って多摩川沿いを散歩したり、クリスマスに同じプレゼント渡したり、ねこを拾ってジブリのキャラクターの名前をつけたり。
一生その子のことを思い出してしまうようなふたりで一緒に過ごした花のような瞬間を、ひとつひとつ束ねて花束にして、きれいなままで残しておくんだろう。

私はこんな風に解釈したから、とても素敵なタイトルだなと感じました。

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きっと絹ちゃんはドライヤーするたびに麦くんのことを思い出すんだろう。


・でも本当はこの映画に共感したくない


この映画はごくごくありふれた、少し周りに流されやすい男女のお話。

「全く共感できなかった」
「そもそも人を好きになることの導入が趣味っていうのがよくわからない」

と言っていた友人の言葉が脳裏から離れません。
私もそんなふうに生きたい。そんな恋愛がしたい。自分の揺るがない判断基準をしっかり持ちたい。
この映画に共感してしまってる時点で、難しいのかも。


・すきなシーンまとめ

しゅだぴちは最近ラジオばっか聞いてたから忘れかけてたけど、ああ、演技すごいんだった
就活で髪切っちゃうの寂しかったな。大学生の髪型がとっても似合ってた。

有村架純はほんとに可愛すぎる。歌も上手いんか。。カラオケのシーンがプリティすぎました。一生クロノスタシス歌えんわ。

まだまだ触れたい箇所は多いのですが、とりあえずあとはもう記憶に残しておきたいすきなポイントかきなぐっておわります。
シナリオ本を入手できたら、また更新します


・この人たちか、この世の中に実写版映画作品を増やしたのは
・映画の半券、しおりにするタイプですか
・電車に揺られると表現した
・山音さんの絵好きですって言われた
・サンキュー押しボタン式信号
・こういうコミュニケーションは頻繁にしたい方です
・始まりは終わりの始まり
・泣いてるの?いまどこ?
・新生活のシーン全部愛しい
・パズドラしかやる気起きないんだ
・麦くんの最低なプロポーズ
・仕事とは責任だ(げろげろ)
・別れを決意した二人の表情とそれを交互に映す結婚式のシーン
・最後のファミレス
・結婚して子供作ってディズニーとかいこうよ、空気みたいな夫婦になろうよ
・またハードルを下げるの?
・やっぱりまだやり直せるって思っちゃう気持ちと、こういう時に冷静な女性
・出てくるのは結局ありがとうという言葉
・羊文学のライブで出会ったおふたりに幸あれ ベイキャンプ、崎山蒼志
・もう戻れないことを悟ったふたりの涙
・押しボタン式赤信号の前で抱き合うふたり
・ミイラ展正直引いてた
・SMAPが解散しなかったら別れなかったのかな
・物語の後半あまり笑ってなかった麦くんの最後の笑顔

好きなことを犠牲にしないとうまく生きれないこの社会はとても不自由。わたしはどうやって生きていこう。


私にとっては恋愛映画というより、人生や生き方について考えさせられる映画でした。
大切な映画がまたひとつ増えました。

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はじまりのうたの大好きなシーンも添えておきます。

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