「母子共に健康です」

赤ちゃんを生みました。

予定日より、はるかに早く。早産。
色々な合併症の末、帝王切開。

ようやく術後の麻酔が切れ、体に繋がれた管を取られ、シャワーを浴びる時に見た、鏡に映った私。

妊娠線と手術跡でボロボロの腹部。
長期入院で荒れた肌、髪、むくんだ顔、脚。
授乳に備えて醜く膨れた乳房と乳首。

かつて男の人たちが、お世辞や嘘でも「綺麗だ」と言ってくれた部位の全てが、
私が私たらしめるために微力ながら努めて保った“女性”の全てが、
もう、壊れた状態で私を映し出していた。

でも、そんなこと以上に、女でなくなったこと以上に、
子どもをまともにすら産めない自分に嫌気が差す。

色々なことと天秤にかけ続け、それで選んだ出産という選択肢すら、まともに叶えられない自分。

保育器の中で、まだ沢山の管に繋がれて、それでも小さな手で私の指を握り返してくれた我が子を見て、
「ごめんね」という気持ちが溢れて涙がこぼれかけるけど、全面衛生が当然のNICUで、果たして涙などという分泌液を零していいのか?と、必死に堪えた。

私は本当に、

本当に、どこまでいっても、
中途半端で愚かで、未熟だ。

我が子はそれでも懸命に育ってくれていて、
「大丈夫だよ」と言われている様で、
生まれたばかりの赤ちゃんに励まされる私の第二の人生のスタート。

母子共に無事でよかったね、と口々に言われ、頷き相槌を打つことしかできない。

誰の励ましも、夫の言葉すら、全然胸に響かなかった。

私は一体、何になったのか。

女としても、社会人としても、母としても、
どれもうまくやれてない気がする。

予約していた無痛分娩、覚悟していた母子同室、不安だった授乳、鞄に用意していた子ども用退院服。

全部、杞憂だったなあ。

看護師さんと二人で、静かな部屋で搾乳しながら、
かけてくれた言葉。

「おっぱい、たくさん出るね、よかった。
体がどんどん、お母さんになってるね。」

そうか。
私の体はちゃんと、母親になれているのか。

生まれたばかりの自分の赤ちゃんを
早く抱きしめられます様に。

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