あの春は忙しかった
この春休みは驚くほどヒマだった。中高両方入学の春に比べればそりゃヒマだろう。それから小学生のいない家庭の春休みはヒマなのである。もう中学生は小学校最後の春休みの小6を表現した芸人さんで、彼は中学生ではないのだ。
だから去年のMはもう中学生の小学生で小学生のいない春休みは初めてだった。
それにしたって前年比ヒマすぎではないか?と思い出すと洗濯機を修理したのと、側弯症の件があったのだった。
装具を作ったんだった。
装具代は装具師に直接現金で払うんだけど、装具師の口下手なお兄さんの説明では1個も分からず用紙をもらって振り込みに行った。10万ポッキリならまだしも9万何千何百何十何円とかそんな小銭今時揃わないんだけどみたいな額面でお釣りのないように用意してきましたよね的に言われてヒィッってなったから振り込みで良かったかもしれない、手数料はかかったけど平和だった。
一連の流れでヒィッと思ったのはそれだけで、言われた通りにあっちへ行ってこっちへ持っていってとオリエンテーリングよろしく回れば全部ことが済む仕組みになっている。
前もって調べる必要はない事柄だったけど深く調べない方針なのもある。
地方に住んでいて一番いい医療機関ないし先生がいたとしても都市部であることがほとんどで、こちらからはとても通えない。
最新の映画は近所の映画館ではやらないし、人気の本はどこの書店にも置いていないそういう環境で育つとこの情報過多時代でも手に取れないものは見ない方かいいと考えるようになる。今は最新のカルチャーはどこに住んでいてもリアルタイムで視聴できるけど医療はまだまだ格差がある。
Kも診断があった頃からググってはいるから一通りのサイトには目を通した。結果、ポータルサイト(医療機関や学会公式)かビジネスかで、その他は手術の体験談。確かにネット上の情報は少なくて、最新のコルセットとか体操とかそういうのが多い。でもそういうことは要らなくて、Kが何を知りたいかって、装具治療をしている人の日常で、それは、まあ、ない。
特に何も起こらないからである。