BLワールド備忘録『赤と黒』
松岡なつき著 宙出版
装画 佳嶋
耽美の王道😃
北欧のプリンスと日本人留学生とのひと夏のアバンチュール💘
胸キュンが溢れて止まらない💕
あらすじ
地中海にある高級避寒地を訪れた留学生の篠崎和樹は、 欧州貴族たちの集うホテルで、とある国から亡命中の大公イリヤと出会う。ホテルの賭博場でルーレットに興じていたところ支配人から声をかけられる。
「さる高貴な方からのお誘いで別室にて1対1の御勝負はいかがなものかと」
自分を呼んでいるのは『彼』だ。和樹の直感がそう告げていた。あの菫いろの瞳。なぜこんなにも惹かれるのか?確かめてみたくなった。幼い頃から『神童』と呼ばれるほど、語学に堪能な和樹は霜雪を思わせるようなイリヤの髪の色『白銀』というロシア語を意図も簡単に発音して見せたことから、大公の『特別な友人』の地位を手にする。
異国のプリンスの退屈しのぎのルーレットのお相手として、はじめは平成を保っていた和樹だったが、イリヤの大胆な掛け方に誘発されてチップをすべて失ってしまう。
「負けたよ、もうすっからかんだ」肩を竦める和樹にイリヤはある提案をもちかける。チップの変わりに体の部位を担保にすれば良いと言うのだ。はじめは右手の指。次は左手を全部。その次は左の目を。和樹は時間をもて余したプリンスの酔狂な遊びに付き合うつもりでその申し出を引き受けた。実際に自分もまだ、負けたままで身を引くのは癪だったのだ。が、そのときはまだ、気づいていなかったのだ。その提案はとんでもない契約だったことに……‼️
✨✨✨✨
耽美の王道
時代設定は第一時世界対戦後のヨーロッパ。まだまだ、貴族の権力が存続していた頃、亡命中とは言え次期国王としての威厳と立ち居振る舞いを強いられたイリヤはまだまだ、遊びたいお年頃。回りにいるのは口煩い大人ばかり。そんな退屈な毎日に束の間射し込んだ光が和樹だった。生まれながらに色を識別することが出来ないイリヤが和樹の漆黒の瞳の中にはじめて『色』を感じ、『傍に置くことに決めた』のは必然なのだ。気高く気まぐれで、そのくせガラスの様に壊れやすい。そして絶世の美人。対する和樹はごく一般的な日本人でたまたま、語学に精通していたことで留学したものの、欧州人の日本人への横柄な態度に辟易していた矢先に、見かけた白銀のプリンスの菫色の瞳に魅せられてしまう。
脳内コミカライズしてきたら、懐かしい画像が重なった!これが漫画なら、こんなふたりが見つめ合うカットのバックには薔薇が咲き乱れ、流れる波線が描かれているに違いない❤️✨
久々にエドガーとアランを思い出した‼️
挿画は佳嶋氏の個性溢れる画風。ファッション画を思わせるスラリとした長い手足に、アンニュイな美青年。この物語のふたりのキャラクターそのもの。
BL期第一部の草分的存在
今更ながらだが、松岡なつき氏と言えばヨーロッパの上流階級を舞台にしたお話が得意とのこと。この作品が発表された1996年はBL小説のレーベルが次々と創刊されたBL進化論に置ける「BL期第一部」に当たる。『FLESH&BLOOD』はその流れを酌む代表作で、海賊と日本人少年のロールプレイング小説。めちゃくちゃ面白そう❗でもこのシリーズなんと24巻まで出てるらしい😅たぶんハマるとどっぷりいきそうなので、折をみて挑戦したい❤️
それぞれの路
話をもどすが、後見人の子爵に同行したカジノで【自分は滅多に熱くならない】と鷹を括っていた和樹がイリヤの挑発にジリジリと火がつき、ついには全てを投げ出すことになってゆくのだが、読者としては、「落ちろ」と心で呟きながらも「抵抗しろ」と抗う様を除きみると言う表裏一体のワクワク感でページを繰る手が止まらない❗️
ふたりのやり取りをポーカーフェイスで見ている|クルピエ≪ディーラー≫や、ふたりの情事も主君の戯れと心得たりと振る舞う執事の存在が、イリヤが王家の血を継ぐ者として抗えない立場にあることを改めて気づかせる。お互いの生きる世界はあまりにも違いすぎた。
どんなに愛しても結ばれることは許されないのだ。
抵抗ばかりだった和樹がやっと自分の本心に気づいたとき、涙が止まらない。果たしてふたりはこのまま離ればなれになってしまうのか?
是非、手にとって見届けて欲しい❤️