小池都知事の「脱ガソリン車」方針表明は関係業界と協議したのかな?というお話。

 はじめまして。こんにちは。こんばんは。日紘≪かひろ≫です。

 今回は2020年12月08日の都議会本会議において、小池都知事が

 「都内で新車発売される乗用車を30年までに脱ガソリン化することを目指す」

と明言したことについてのお話です。素人意見になるので、その点はご了承ください。
 「脱ガソリン車」と聞いても良くわからない(表記として適切でないと考えられる)のでこの言葉の補足しておくと「ガソリンのみで走る乗用車の新車は販売規制する」ということです。ハイブリッドやディーゼル等の自動車の新車販売は従来通りということです。

【参考文献1 都知事の方針表明】30年までに「脱ガソリン車」 都内の新車、国に先駆け―小池知事:時事ドットコム

 流れとしては、政府が国内の新車販売について、2030年代半ば以降はガソリンだけで走行する車以外にすることで調整に入ったことを受けて、小池都知事が

「わたしたちはもっと厳しい基準を設け、国の方針を牽引していく」

としたのではないかと考えられます。

【参考文献2 政府が調整中の方針】脱ガソリン車、30年代半ばに 温室ガス実質ゼロへ弾み―HV存続で雇用確保:時事ドットコム

https://www.jiji.com/jc/article?k=2020120300215&g=pol

 さて、この件について、一見、小池都知事が

「環境を考慮した良い政策でリードしていく」

としたように思えるかもしれません。しかし、小池都知事の方針表明には問題があると考えられます。
 政府には、国土交通省自動車局という、自動車にかかわる技術基準を決定したり法令を司る機関があります。この自動車局が世界情勢や国内での技術力等を考慮し、自動車業界(主に自動車メーカー)と意見交換したり、専門家からの意見をヒアリングして、それを受けて「2030年代半ば」というわざと曖昧な目標を設定してできるだけ実現に近付けようと政策の「調整を持たせている」をしているところとのことで、これは決定事項ではありません
 曖昧な目標設定については、「はっきりさせろ」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、これには、例えば世界的な流行病や経済恐慌等により技術開発速度が追い付かない場合や、日本の自動車メーカー等が十分に設備投資ができないことも考えられるため、そういった事情にも対応できるような「許容の幅を持たせている」と考えられます。明確に期限を設定してしまってそれに自動車業界が間に合わせることができなかった場合は、国内産業が打撃を受けてしまうことも考えられます。
 それでは何故、調整中にもかかわらず発表をしたのかというと、政府が環境や資源の事情からエネルギーの切り替える方針であるということを国内のみならず国外も含め周知する目的があったと考えられます。

 これに対し、小池都知事は、自動車局との協議、自動車業界からのヒアリング、世界事情の把握を適切に行ったのかということが疑問に思えます。率直に言ってしまえば

 「現場の事情を無視して耳障りの良い言葉を並べて注目を浴び選挙票を集めたい

という印象が強く感じられます。いくつかのこの発表にかかわる記事を閲覧したのですが、どれも小池都知事が、専門的な知識を持ち合わせていないのは仕方ないにしろ、発言内容からすると「無知な王様が側近に吹聴された事を述べた」様な印象も感じられます。自動車局を始め、各関係団体や専門家と協議していればこの様な内容ではなく都としても助成金を出してエネルギーの切り替えを促す等の発表になっていた可能性も考えられます。小池都知事としてはただ「条例を追加するだけで済む」くらいにしか考えていない節があるように見受けられますが、自動車局という専門組織が調整している目標よりも5年もしくはそれ以上早い時期に規制するという判断には実現可能性にかかわる根拠が無いですし、何よりも筋を通していないのではと考えられ、国土交通大臣及び総理大臣は遺憾の意を表していい事案です。
 余談ですが、小池都知事は関係する各方面への筋を通さない事案が散見され政治家としての資質に疑問を感じています。
 自動車業界は一度国土交通省と打ち合わせをしてプレリリースをした後に伺い、その後、小池都知事に陳情しに行くという形をとると小池都知事の方針に対して見直しを強く訴えられるのではないかと考えられます。

 ガソリンのみで走る乗用車を規制することによるデメリットは、
・自動車価格等が上昇(例えば、ハイブリッド車であれば、ガソリンでの駆動系統と電気での駆動系統を装備しなければならないのでコストアップ&自動車重量も上昇)
・電気自動車は充電速度が遅くパワーが弱いので坂道が多いと役立たないことや蓄電池の安全性が課題(スマホやスマホバッテリーでの電池が自然発火している事案が車規模になると怖い 蓄電池は大きくなるほど安全性が低下していくので、巨大蓄電池を作るのは技術的に困難)
・燃料電池車は水素充填速度は速いものの、原材料から水素を作るところからのトータルでのエネルギー効率がガソリンのそれよりも劣ることや、インフラが整っていないので充填スタンドがほとんどないのが課題
・ディーゼル車であれば窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の排出や自動車のメンテナンスコストの上昇が課題 将来的に軽油への課税が増える可能性は否定できない
等があるので、規制が必ずしも素敵なことではないのを小池都知事や都議会議員には理解していただきたいです。特に技術面や情勢を考慮せず二輪車への規制をかけることはかなり大きな問題なのではないかと思われます。

 最後に。

 都内で販売規制されても隣接県で買えばいいんじゃね?乗り入れ禁止じゃないし。

【2020/12/18/金 追記】

 一般社団法人日本自動車工業会 豊田会長が会見で、この様に述べていたようです。「一部分」の要約すると、「EV化は難しい。原子力発電所を動かさないと電力足りない。火力発電所に依存すると二酸化炭素を排出するのでそれだとこの政策の意味が無い」とのこと。

【参考文献3】自工会 豊田章男会長 、カーボンニュートラルと電動化を語る 「自動車産業はギリギリのところに立たされている」 - Car Watch

https://car.watch.impress.co.jp/docs/news/1296023.html

 ここから察するに、菅総理のカーボンニュートラルにかかわる発言は、国土交通省自動車局の「現場をよく知らないし試算も不十分だけど耳障りの良い政策を提案して出世を狙うエリート官僚の影」が見え隠れします。国家公務員は同レベルの人が就職する民間企業と比べて給与が低いので、エリート官僚ともなると出世や名誉をモチベーションで動いており(付け加えるなら残業しても予算枠が決まっているので何割かカットされた残業代しかもらえない)、それに菅総理が乗せられてしまった可能性があります。小池都知事が人気稼ぎと名誉のために口先だけでの便乗政策を述べた可能性が非常に高くなり、一般社団法人日本自動車工業会等の自動車関係団体へのヒアリングをしていないための会長から苦言ともとれる話がでたのではないかと思われます。

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