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盲目雀士さびぬき
原作:さびぬき、かひ
第1章 出会い
大学生はよく麻雀にふけると聞くが、今まで半信半疑であった。しかし実際自分が大学生になるとそれは本当なんだと実感した。俺の名前は藻岩小道(もいわこみち)友達からは「もこみ」の愛称で通っている。今年の4月から大学生になり、そこから友達の勧めで麻雀を始め、徹マンを繰り返している。
今日は友達と初めて雀荘なるものに行く予定だ。雀荘の名前は「神威」私の住んでいる札幌市の中心部から少し外れたところにある雀荘だ。
俺を雀荘に誘ってくれた友達は光山大士(こうやまたいし)といい、友達からは「たいちゃん」の愛称で通っている。
初めて行くお店で不安もあったが、たいちゃんと一緒なのでその不安も薄れていた。ドアを開けるとそこには十数台の麻雀卓とそれに座る客達がいたが、全ての卓が埋まっている訳では無いので比較的スムーズに入ることができ、私とたいちゃん、そして居合わせた他のお客さんと麻雀を楽しんでいた。
小一時間程楽しんだところだろうか、一緒に打っていた客の一人が退店し、それに入れ替わるように一人の男が座り込んだ。私と同じくらいの歳だろうか?いや、少し歳上にも見える。その男が言った「俺も混ぜてもらえませんかね」特段断る理由は無く、一緒に打ち続けた。しかしこの男、強そうな見た目をしてはいるが、見かけだけであり、そんなに強くは無い。麻雀を始めて日の浅い私でもわかる。今現在この卓で強さを示すなら元々打っていた一般客、私、たいちゃん、後から来た男の順になるだろう。それくらいの強さではあった。肝心のたいちゃんはと言うと手元に東南西北の牌が来るな否や、親を指さして「東、南、西、北」と今の自分の位置をいちいち指さし確認してくる。なんともわかりやすい仕草だ。私がそれを指摘すると「えー!俺そんなことしてたの!?言ってよー!」と返答してくる。なんて男だ。まぁそこがたいちゃんの良いところでもあるだが‥‥
そこから継続で打っていたところで、後から来た男が店員に聞こえない程度の小声である提案をしてきた。低レートでいいから賭けないか?とのことだった。正気か?一番弱いのに?渋々それを承諾しながら打ったがやはり弱い。何度も負け、その男は絞られ続け、金を払っていった。低レートとはいえ、散々しぼられた男が最後に言った「いやー皆強いなぁ!これで最後にするからさ!でかい額をかけてくれないか?このままじゃ終われないんや」
私はその男が何かを隠している気がして嫌な予感がしたが、たいちゃんと最初から打っていた客が承諾し、最後の一局が始まった。
始まるやいなや、弱い男が唸る「ツモ!四暗刻単騎+字一色+大三元」「ロン!九蓮宝燈」「ロン!四槓子」先ほどとは人が変わったように点数を稼ぐ、そしてその男の餌食となったのは最初から打っていた客だ。社会人だからと目をつけたのか必要に狙うし、極めつけは「君、わかりやすいねぇ、ロン!」というように、遅ロン+煽りを入れてくる。餌食となった客が店側に抗議するが、店側は把握していないの一点張り。他の卓にいた客から「またやってるよ」「店長とあの男は昔からの幼馴染だから強く言えないんだよな」と声が聞こえた。やられた。この男は最初の連敗も全て計算して行っていたのだ。むしり取られた客は泣く泣く金を払い店を出ていこうとする。それを静止するように悪い男の声が響く「待ちな!まだ東場だぜ、勝負は終わってないぞ!」出ていこうとした客が狼狽える。私達はこの男にけつ毛までむしり取られて終わってしまうのか?そんな疑惑がよぎったとき、一人の男が他の卓から出てくる。「その出ていく兄ちゃんの代わりに俺が入ってもいいか?」その男は杖を突き、目を閉じていた。目が見えていないのか?そんな考えが浮かんだが、その男が続けて話す。「俺の名はさびぬきって言うんだ‥‥まあ、あだ名みたいなもんだ。自分で言うのもなんだがそこそこお金持ってるし良い相手になると思うぜ」
さびぬき?何だそのあだ名は?と思っていたが、名前を聞いて店内がざわめき始まる。どうやら麻雀界では有名人らしい。悪い男が話す。「あんたほどの有名人を倒したら俺も有名になれるかな?」
どうやらこの対戦に異議を唱えるものはいないようだ。さびぬきという男を加えて、悪い男、たいちゃん、私で西場から再開することになった。
さびぬきが改めて自己紹介を行う「改めて‥‥巷では盲目雀士のさびぬきと呼ばれている。よろしく」
続けて悪い男が言う「あのさびぬきが名乗ったからにはこちらも名乗らなければな、俺の名前はカヤマヒロト。遅ロン、煽りを繰り返し行うんでよぉ、人からは地雷役満のカヒって呼ばれている。」
ひどすぎる別称だ。それに呼応するようにたいちゃんが言う「俺は指差確認のたい」
お前の場合は悪癖をただ紹介してるだけじゃないか。というか、他3人が別称を言った流れだしこれ俺も言わなきゃだめ?頭を高速回転し俺も告げる「俺の名前はもいわこみち、俺が本気で打つと展開が早くなり、相手を瞬殺することから、ハイスピードシューターのもこみと言われている。」小っ恥ずかしいが、自分の名前を名乗り、倒すべき敵がはっきりしたことでやる気がみなぎる。ここから本当の勝負が始まり、そして俺の人生のターニングポイントとなる一局が始まった。