お笑い入院日記②〜なんとしても♂チューブを抜くのだの巻
前回のお話はこちら☟
今回は入院から手術翌朝までの日記です。
手術前より手術後の方がずっと痛いなんて聞いてないよ。
ホント、足の骨なんて折るもんじゃない。
あれれ、足首が曲がってないか?
入院三日目くらいになるとキズの痛みは少し楽になってくる。腫れもなんとなく引き始めているような感じで、シャワー室の利用も解禁される。看護師の手配もあるので1週間に2回ってのが基本らしい。
相変わらず足を高くしてベッドに寝っ転がる生活の中で、右足のポジションで痛みがかなり変わってくる事が分かった。ギプスによる痛みもあり、ひざ下が全体的に痛いのだが、足首を少し右に倒す(外踝を下にする感じ)のが比較的に楽な態勢である。しかし、そこは患部そのものなのでおススメしないと担当医に言われ、ではどうすれば良いかと試しているうちに、ある重大な事に気付いた。
もしかして右足首が曲がってる??
そこで、両ひざを天井に向けてに揃えてみると右足首が(左足とくらべて)かなり外へ開いているのが分かる。
間違いなく曲がっている!!
おいおい、これ大丈夫なんかなぁ?
山歩きする時は右足は外へ向けるクセだからええか・・・なんて考えてはみても、個人的にはかなりの衝撃。
なるほど、だから足を自然な位置に保とうとすると右足首が外へ傾く事になるのだ。たまたまだろうけど、その位置が一番心地よい。
そっかそっか、と一人で得心した。
でも、この件については担当医には質問しなかった。元々かも知れないし、今回が原因であればどうせ手術をするのだから、ついでに直してくれるに違いないと信じる事にした。
で、ようやく手術日は4月末日と決定した。時間帯はまだ分からないが、その日は整形外科の集中手術日だそうで、(リハビリ担当に教えて貰ったのだが)難しい患者から先にやるのだそうだ。予定外に時間を要するケースが出てくるってのが理由であり、他の患者は前が終わり次第って感じで大雑把な時間だけ伝えらえて待たされる事になる。
PCR検査
手術日が近づいてくるとPCR検査を受けろと指示が来た。PCRを受けるのは帰国時いらい久しぶりだ。
連れていかれたのは、救急搬送口の近くにある仮設の検査室である。と言っても我々は中には入れない。(細胞培養している映画のシーンみたいに)室内から壁を通って手だけ外に出せる仕組みになっていて、検査員は室内側でウィルスから隔離される状態を保っている。こっちは付添看護師と一緒に屋外で吹きっさらしである。院内は暖かいから薄着なので寒いっちゅうの。
そして患者が鼻を差し出すと綿棒グリグリをされるのだ。この時の検査員はかなりの美人だったけど、仕事がつまらないのか話しかけてもニコリともしないで執拗にグリグリされた。涙目どころか涙ぽろぽろである。
苦手なタイプだ。
ドエスに違いない!!
この病院は美人が多いのか??
麻酔のレクチャー
PCR検査をやった次の日には麻酔科でレクチャーを受けた。最初にビデオを見て、それから麻酔科医の説明を聞くって流れだ。運転免許の講習みたいで面倒だったけど、麻酔科医と話す機会なんてめったにないから逆に話し込んでしまった。
麻酔科医による説明の前に僕は、局所麻酔で手術は出来るか?って質問した。前述したように整形外科ってのは建築に似ているのだ。自分の足がどうやって工事されるのか興味があるのでリアルに観察したい旨を話したのだが、それは物理的に難しい(寝ているから角度的に足先は見えない)との事で却下された。ならば鏡を置いてそこに映せば見る事が出来るだろうとお願いしたが、手術室には人がたくさんいて遮られるから無理だと諭され、その代わりビデオにする事は担当医に頼んでみると言われたので妥協した。
それから、僕の手術において麻酔科医はどうするのかをひと通り聞く事にした。
先ず全身麻酔で眠らされる。その前に術後の痛みを緩和するために背中に麻酔用のチューブを差し込む作業をすると言われた。硬膜外麻酔と言うもので、さっき見たビデオにも出てきていた。
背骨にピンポイントでカテーテルを入れるなんてなんだかヤバそうじゃないかって思うのは素人だからかも知れないのだが、聞かされた瞬間から不安満載だったので納得できるまで質問攻めにした。
そして全身麻酔なので人工呼吸器も使うとの事(考えて見れば当たり前だ)であるから、停電時のバックアップなどについても質問した。この点はこっちの方が得意分野だが、いざとなれば手作業でも対応できると言われたので、その際はできるだけかわいい看護師にお願いしたいと話したら、mouth-to-mouth希望って言っておきますねって笑われた。なかなか愉快な麻酔科医だった。
ついに手術日になる
手術前には他にも色々とやらされる。まだ手術もしていないのにリハビリセンターで松葉杖の練習をしたり、左足に負荷をかけた運動(筋トレ)をやったりもする。
ここで知り合った担当の若い理学療法士(息子くらいの年齢だ)とはすぐに仲良くなり、いろんな話を聞く事ができた。特に、自分の事がどう記録されているかをこっそり教えて貰ったりした。システム管理されている総合病院では全患者のデータが一元化されているから端末をたたけば情報が出てくる。
リハビリ中の彼の端末は僕の画面になっており、それをのぞき見すればたいていの事はわかるのだ。もちろん、ヤバイ情報なんてあるわけがないけど。
そして、やっと手術日がやってきた。ここまで既に10日間近くも入院している。いずこも同じなのだろうが、前日夜から絶食、当日は早朝から水分も厳禁と言われ我慢する。理由を聞いたけど何だったかな。
当日は僕が先頭だと教えられ(って事はやはり面倒な手術って事なのだ)、予定は3時間、出血は少ないだろうから輸血もまず必要ないだろうと説明された。
術後に不安定でなければいつものベッドで目覚めますって事も付け加えられたが、念のために相棒と娘にだけは連絡を入れておいた。
さて、爽やかな手術日和の朝がやってきた。いつもなら歯磨きして朝ごはんを食べる頃(まわりは朝ごはんを食べている)、一人でT字帯の取付に苦労していた。T字帯の存在意義が今でも分からない。
夜間担当だった看護師に車椅子を押されて手術室まで行き、「おはよ~ございま~すっ」って言いながら手術台に寝転がる頃には10人くらいに取り囲まれた。
担当医(執刀医)もすでにスタンバイして全体を見渡している。なんだか一段と頼もしい感じなので、病室で見るよりかっこええなって声かけたら、『お任せ下さい』って返事してきた。この病院はかなり楽しい。
ベッドに仰向けに寝かされたところでガウンを脱がされ、ついでT字帯も取り外された。おいおい、じゃあなんで病室で付けてくるんだよって思ったが、抵抗むなしく真っ裸にされた。もちろん、シーツはかけられている。まだシラフなので恥ずかしいけど我慢なのだ。
硬膜外麻酔は怖かった…マジで
そして麻酔科で説明された通りまず最初に硬膜外麻酔用のカテーテルを挿入するためにカラダを横にして猫みたいに丸まった。その時に僕の腕を抱えてくれていた看護師がかわいくてカテーテルが終るまでの数分間、出身や手術室を希望した動機なんかについてずっと喋っていた。手術台の上で若い看護師の手を握ってひそひそ話をしているのは、真っ裸で皆さんにケツをさらしている(背中の部分をはぐるからシーツは完全にカラダからずれ落ちている)中年オヤジなのだ。
カラダがこの看護師の方に向いている(ケツは反対側に突き出している)のが救いであった。ビビッて縮こまっている♂はなんとかシーツに覆われているwwwこれもまた救いであった。
因みに、この硬膜外麻酔のカテーテルを挿入している時は何とも言えない気持ち悪さがあった。神経に触る時があるのか、背骨のあたりがギュイーンとなったり、いきなり右ひざにビビッて電気が走ったりするのだ。なかなか終わらないのでマジで怖かった。
で、これが終るといよいよ全身麻酔である。さっきの看護師はどこにいるのかな?と探しているうちに眠ってしまった。
チューブと友達だった夜
手術は予定を超えて4時間半かかったらしい。目覚めた時は病室のベッドの上だった。外はまだ明るい。右足の感覚はまったくないけど、その他は問題なさそうだ。視覚や会話にも支障なし。酸素吸入のマスクは邪魔だったから勝手に外した。
そこで各部位の自己点検をする。目、クビ、両手とやって、右足は感覚がないので左足を指から順に動かしてみる。最後に左ひざを立てて終了だ。ALL OKである。ついでに自分の顔を携帯電話で記念撮影して仲間に送っておいた。
覗き込んだ右足の先が壊死しているみたいにどす黒くて怖かった。
次にカラダにまとわりついているモノをチェックする。左腕に点滴(これは手術前からだ)、背中にカテーテルが入っており、繋がっているチューブは背中から左肩を通って左手あたりにスイッチがある。麻酔剤がたっぷり入ったポットのようなものもそこにあって、スイッチを押すと麻酔剤が注入され患部へ作用すると説明された。
ためしにカチッとやってみたら、左肩から冷たいものが通って行くのが分かった。2時間毎にカチッとできる。このスイッチはその後も押しまくった。
最後に、大事な部分♂にもチューブが繋がっている事を確認する。目視確認していないが、おしっこが出てくるので分かる。点滴バンバンなのでおしっこもジャージャーなのだ。制御できないから入れた量だけ出てくる。
チューブは先っぽから膀胱まで挿入されているようで、チューブの挿入そのものには快感もないけど痛みもない。
でも、寝たまま放水する心地よさは例えようのない快感だった。
手術は上手くいったようだが問題もある。この状態のままでは一人でトイレへ行けない。おしっこはチューブでいいとしても、でっかい方はどうするのだと考えているところに担当医がやってきた。
手術は成功して術後も問題なさそうだとの説明だ。ただ、数日間は強い痛みが続くので硬膜外麻酔を使って凌いで下さいと言われ、どこに何をしたかの具体的な説明はまた後日にでもって帰ってしまった。まぁいい、ビデオを見れば一目瞭然なのだ。
夜になってお腹が猛烈にすいてきたけど、明朝までは点滴だけだと言われガッカリしているところ、今夜の担当看護師がやってきた。初日に外来で面倒を見てくれた頼れるお姉様だ。
父も5回目だ!!
その頃には麻酔が完全に切れて、患部の痛みは半端なく、右足が石のように固まっている感じになる。硬膜外麻酔をカチカチやってもホイミほどの効果もなく、まったく眠れない。もう右足を切り捨ててくれよってくらい重くて痛い時、あれ?この感覚って覚えがあるぞと思った。
なんと、20年くらい前に右足指を骨折していた事をこの時まですっかり忘れていたのだ。
入院直後に娘さんとLINEのやり取りをしている時、父さんは小学生の時に3回骨折しているので今回が4回目だなんて話をしていたら、末っ子が割り込んできて「俺は5回だよ。まだまだだな、この青二才めぇ~」なんてワケのわからぬ自慢をされてしまったのだが、この場を借りて訂正しよう。
父も5回目だ!!
翌日、右足指のどこかを骨折してギプスを巻かれていた事は当時の事務員さんに確認できたから間違いない。
話がそれてしまった。
とにかく痛い。命に別状なんて1mmもないのだけれど、それでも痛いものは痛いし、手術前よりずっと痛いなんて教えて貰ってない。
その夜はロキソニンを飲んで硬膜外麻酔をカチカチやっても痛みは全く治まらず、アセトアミノフェンを重ねても効かない。辛抱できず午後9時頃にお姉様が抗生剤を落としに来た時に相談した。
なんで早く言わないのかなぁ~って言いながらすぐに麻酔パックを持ってきてくれた。これは速攻で効き、痛みが和らいで少しだけだが眠れた。お姉様の背中に白い羽が見えたような気がしたよ。
でも、数時間で効き目がなくなって痛みが戻ってしまうのだけど、男子は死にそうにでもならない限りナースコールなんてしはいけなのだ。誰がそう言ったか知らんけど、6時間後に抗生剤を交換にくる午前3時まで耐えた。
いろんなチューブを抜くのだ
翌朝の担当看護師は僕の受持ちのMちゃんがやってきた。申し訳ないくらいあれこれと世話をしてくれるのだが、前日から気になっているトイレについて相談した。だって本日からは食事も出るし、僕は食事をすると入口と出口が直結しているのかってくらい反応が早いのだ。しかも毎日数回はトイレで座っている。
右足がいまのような麻痺のままではトイレには行けない。しかも、彼女が言うには、動けないと膀胱に繋がった導尿チューブも取り外せないし、そうなると感染症対策で毎日陰部を洗浄する事になるって言うではないか!!
【おしも洗い】って呼ぶそうだ。
いやいやいや、それは恥ずかしので無理だ。譲っても彼女までで、入れ代わり立ち代わりで看護師に陰部のお世話をして貰うのは嬉しいけど恥ずかしいのでダメだ。それこそ全身麻酔してくれって感じ。
それ以前にトイレに行けなかったらメシが食えんではないか。
う~ん、どうしましょうって困る彼女と話し合った結果、痛みは点滴麻酔でカバーできるから背中に刺さっているカテーテルを取り外すほかに手がないとの結論に達した。移動できる態勢になれば、あとは根性でなんとかする。ひょっとして硬膜外麻酔を外せば右足の麻痺もおさまるかもしれないし。
さっそく撤去作業を依頼するのだが、『(彼女曰く)先生は簡単に認めないと思うよ』。
ならば、背中のカテーテルの部分が痛いって主張して無理やりに抜いて貰った。少しだけ本当に痛かったからウソじゃない。
担当医からは、せっかくの麻酔を術後24時間も経過していないのにわざわざ抜く人は私の患者ではあなたが初めてだと言われたが、そんな記録はどうでもよろしい。いざとなれば痛みに耐えれば良いだけなのだ。自信はないけど。抜き取り作業は意外にあっさりと終った。
こうなると最後の関門は膀胱にささっているブツである。これは自分で取れそうだが、さすがに許して貰えない。であれば彼女がいるうちにやって貰った方が良いし、午前中に抜いてしまえば当日の【おしも洗い】はしなくて良いと聞いたから、もうその場で抜いてもらった。
かわいい看護師の白い右手が自分のモノを握って‥‥エロ小説みたいになるからやめておきます。
それよりも抜かれたチューブを見て仰天した。想像以上に太いのだ。やわらかい素材で出来ているのは触った感触で分かるが、こんな太いチューブ(マックシェイクのストローくらいある)をどうやって入れたのだろうって聞くと、意外にするする入るんですよって言うではないか。
記憶がなかったとは言え二度とゴメンである。麻酔なしで耐えられるとしたら、そいつは変態のたぐいに違いない。
こうして術後24時間以内に点滴だけ残してすべて撤去して貰う事に成功した僕は、一人でトイレに行く自由を獲得したのでありました。(次回へ続く)
※タイトルの写真は【みんなのフォトギャラリー】から拝借しました(creatorは前回と同じia19200102 様です)。