【観覧メモ】菊池寛実記念 智美術館「鈴木藏の志野」
2020年12月12日から2021年3月21日。観覧日2021年3月。
終了前週に観覧。
志野焼への関心や前知識はなく、「志野」というと垣根のような線が描かれたシンプル、素朴な茶碗ていどの印象だけを持っていた。しかし、美術館のWebサイトの展示作品を見て、それとは異なる緊張感を感じ、見にいくことに。智美術館には過去3回観覧しているが、展示空間の素晴らしさ、毎回、発見や絶対「好き」になる作品との出会いなどがあり、機会があれば訪ねたい場所でもある。
場所の良さ、作家への関心、その流れからの志野焼へのアプローチとなったが、結果、それは正解だった。
現在の作家、ここ最近の作品群。当日得た情報からは、自分の興味とつながる部分がないかもと思いつつ、入口の火焔土器のような香炉からずいぶんと長い時間、館内に滞在することになった。
伝統的な再現窯ではなくガス釜を使う作家は、へら、手びねり、釉薬、さまざまな技巧で「志野」を生み出す。その多彩な「志野」へのアプローチが、知識ゼロの見る者の関心をグイグイと引き寄せ、気づけば「志野」の魅力への関心の糸口をいくつも手渡されていた。
1点1点に魅入っては、その糸口をしっかり握り、しばらくして振り返るとまた新たな糸がさっきの作品とつながっている。その発見を重ねながら行ったり来たりをくり返し、歩はなかなか進まない。ちょうど良い頃合いの館内中央に設けられた椅子に腰掛け、作品群を見回しその風景の奥深さを堪能する。
個々の作品名はとくになく、展示一覧を見返しても59作品の番号のみ。逆に、作品そのものの印象だけが強く残る。NO.7の茶碗がとくに気にいった。胴から腰に直角の円筒の底、小さな高台は真横にかがまないと見えない。茶碗は浮いているかのような印象。腰の膨らんだ裾が緊張感を和らげ、フワフワとした印象を与える。説明には、どの茶碗も見た目よりも軽いとある。持ってみたい、といつのまにか作家の作品への関心に深くはまっていた。
美術館内のレストランが再開していたが、来る途中、神谷町駅へ向かう坂の下でネパール料理店を発見。ランチのビリヤニをオーダー。カレーはチキンが基本だが、選ぶことも可能と言うのでマトンに。ミートボール状にされたマトンが入っていた。炊き込まれたご飯にはカルダモンがホールでゴロゴロ入った充実のスパイシーさ。タンドリーのチキンティカ、マンゴーラッシー風のヨーグルト。サラダ。こちらも満足。