自宅制作環境にDanteネットワークを導入した話
自宅制作環境に、Danteネットワークを導入しました。
■事のあらまし
年の初めにサミングアンプを導入したので、その性能をフルに活かすオーディオインターフェースを入れる欲望(≒必要)が出たのですが、
・今のインターフェース(Lynx / Hilo)では入出力が足りない
・とはいえ、今のインターフェースはマスタリング用として今後も必要
(今使っているものより高音質なインターフェースがそもそも市場にほぼない)
→要するに、サミングアンプを使うために、今の環境そのままに96kHz駆動で16ch出力できるインターフェースを追加したい
、、、という要件を満たそうとすると、これが難しい。
Macならまだ複数のインターフェースを仮想的にまとめる方法があるのですが、WinだとUSBでもThunderboltでも普通は無理。
となると、Dante, MADI, DigiGrid, AVB等のネットワーク系しか手段がなさそう。
そうすると、今使っているLynx / HiloをDante化して、新たにDanteに対応した入出力デバイスを導入するのが一番、らしい(この間、フックアップのサポートにもそれが可能か確認。
ってことで、Lynx / Aurora(n)を導入しました。
追加I/Oとして運用しています。
■そもそもDanteとは?
そもそもDanteとは何かというと、
・Ethernetを使用して、LANケーブルで多チャンネルのオーディオを送受信するシステム
のこと。開発はAudinate社。
https://www.audinate.com/meet-dante/what-is-dante?lang=ja
CAT5e(100Mbps)のケーブルで32ch(48kHzまで)、CAT6(1Gbps)のケーブルなら512ch(192kHzまで)のオーディオデータが送受信できます。
※結構端折った説明なので、細かいことは置いておいてください
安価に長距離(100m以上)の伝送が可能なことから、ライブ現場やオフィス棟の設備としての導入も多いですね。
似たようなネットワークベースの多チャンネル送受信システムとしては、MADI(これは正確にはちょっと違う)、AVB、DigiGridなどがあります。
■Dante導入のメリット
1. とにかく安定する
一度シンクが取れてしまえば、めちゃくちゃ安定します。
導入初日だけ時々CPUスパイク入りましたが、2日目以降は一切なし。
ウチはハブ入れるのめんどくさくてデイジーチェーンしてますが、96kHz/16chの伝送(モニタリング用含めれば20ch以上の同時伝送)も全く問題なくできています。
2. 安いケーブルでも問題ない
300円のヨドバシCAT6ケーブルで安定動作しました。
さすがにヨドバシケーブルの音はあんま好きじゃなかったので、今はAudioquestのCinnamon使ってます。
https://amzn.to/3c03ifD
3. マザボ据え付けのLANポートでいける
一般的なPC付属のLANポートで問題ありません。
ギガビット出せるなら、2000円程度の追加ボードでも大丈夫。
ただし、Wi-fiでは使えないので、有線で接続することが前提です。
■Dante導入のデメリット
1.ASIOとWDMが排他仕様(DVSの場合)
DVS(Dante Virtual Soundcard)でDanteを構築する場合、ASIOモードで駆動させると、DAW以外のアプリの音は出なくなります。
これはこれで面倒なので、回避策を考え中。
2.クロックの切り替えがめんどくさい
なんと、デバイス側のクロック設定とDante Controllerのクロック設定は同期しません。
なので、96→44.1kHzといった風にシステムのクロックを切り替える際は、
各デバイスのクロック切り替え
↓
Dante Controllerからデバイス一つ一つ設定画面開いてクロック切り替え
という、大変面倒な作業が必要になります。
なのでウチでは、「各デバイスのクロックだけ切り替える」設定プロファイルを用意して、クロック切り替え時に読み込ませて対応しています。
3.導入費用がかかる
PCにDVS(Dante Virtual Soundcard)入れるだけなら$40~50でできるんですが、各デバイスにDanteポートを追加するのが結構高い。。。
HIloの入れ替えで10万近くかかりました。
その分、ケーブルや周辺機器のコストは、余程大規模なシステムを組まなければ安いです。
4.レイテンシーは詰め切れない(DVSの場合)
仮想のDanteデバイスであるDVS(Dante Virtual Soundcard)の場合、やはり「仮想」なので、専用カードよりレイテンシー面は不利です。
まず、DVS自体がレイテンシー大きめ(6ms以上)じゃないとマトモに動かないので、詰めてもトータル10~15ms、普通に安定ラインを目指すと最低30msくらいは覚悟してください。
逆に、ちゃんとDanteカード使ってる場合は、Danteレイテンシーを1msまで詰められるので、頑張ればトータル3~10msくらいまではいけるんじゃないかと思います。
■Danteの総評
結論から言うと、導入に後悔はないです。
めちゃくちゃいい。
前のUSB接続から比べると、もうシステムの信頼性が雲泥の差ですね。。。
「Hiloだけでももっと早く導入しておくべきだった」と思ってます。
次回以降、Dante導入時のつまづきやすいポイントについて記していきます。
以上!