電脳灯争戦を振り返って。
ごあいさつ
2023年7月、MTGAの大会が開催された。その名は「電脳灯争戦Ⅲ」。
5人1組のチームによるヒストリックブロールチーム戦だ。
わたくし、藤月かごめも【UPOTU BLACK】というニコニコ動画を中心に活動しているメンバーで結成されたチームの一員として参加した。
「最近動画投稿してないね?」何のことやら・・・・・・
チームメンバーは以下の通り。
チームリーダはCeVIOマキちゃんの顔ドアップサムネ、増え続ける動画タイトルの【!】マーク、黒音紅ケイさん。
チームのブレーン、まじ☆すとでの優勝経験もあるぞ、【弦巻 The Gathering】シリーズ投稿者、TKYさん。
猫に関するメンバーが多いのでちょっと呼ぶとき困り気味、【陰キャの葵ちゃんが親の仇になります!】シリーズ投稿者、ねこさん。
土地破壊をこよなく愛する者、【黒咲ルイのマジック:ザ・ギャザリング】シリーズ投稿者、黒咲ルイさん。
そして、私。色狂いゆかりこと藤月かごめの5人になります。
電脳灯争戦はこの記事を書いているときも開催途中であるが、私のチームは7/23のチーム【まっしろしろすけ(仮)】との勝負に負けてしまったため、予選敗退となった。
ということで勝ち進んだチームにはこれからも頑張ってもらうとして、時間ができた私は今回の大会の備忘録でも記事にしようと思いいたった。
雑談交じりに「統率者選び」と「デッキ構築」の話をしていきたい。
散文となるが、お付き合いいただけると幸いだ。
電脳灯争戦Ⅲの簡易ルール説明
詳しいところは公式からの発信情報を見ていただきたいが、本ページでは簡単に対戦までの流れ・ルールを書く。
ルールは簡単に言ってしまえば【統率者事前公開制ヒストリックブロール】だ。
対戦の前に対戦相手が誰で、統率者は何にしているかわかっている状態でデッキ構築を行い、対戦を行う。
チーム5人でそれぞれ1戦。全5試合の勝敗数で勝利チームを決める戦いだ。
どのような時系列でチームが決まったり、統率者が決まったりしたかといえば、大まかな流れは【チーム結成】⇒【対戦チーム決定(5月中旬)】⇒【統率者選び(5月中旬)】⇒【対戦の順序(先鋒~大将)の決定(5月末)】⇒【対戦相手発表(対戦約1週間前)】⇒【デッキ提出(対戦前日)】⇒【対戦】という感じだ。
チーム結成から考えると数か月ごしの一大イベントである。気分的には文化祭や体育祭みたいな感じがある。
統率者《聖トラフトの霊》にした理由
電脳灯争戦Ⅲのルールでは対戦する統率者が分かっている状態でデッキ構築するため、このルール特有の「強い統率者」といわれるカードはいくつかある。
自分が強いと思っている条件を上げると下記のような項目がある。
固有色が多い(幅広い選択肢・戦術が選べる)
勝利に直結する能力がある(盤面制圧・特殊勝利・統率者と特定カードの2枚コンボなど)
出た瞬間に何らかのアドを稼げる(キャントリップなど)
さて、ここで読者の皆様は何かに気づいただろうか?
ヒントは私が選んだ統率者は《聖トラフトの霊》ということである。
そう、上記の条件に一つもかすっていないのである。
色は白青の2色(少ない)
場に出て盤面制圧もしないし、能力もサイズも勝利に直結とは言い難く。
場に出たときに稼げるアドもなし。
なんでこの統率者を選んだよ?となるが、これは浅い理由がある。
深い理由はない。とても浅い。
『大会ルール勘違いしてた・・・・・・』
クッソしょうもない理由だな!本当に。
はい、統率者決め前後で、なんかいろいろと電脳灯争戦ルール特有の強統率者に対する改善・緩和策みたいなの話していた気がしましてね。
「統率者は先に決めるけど、対戦相手顔見せは直前」みたいな変な記憶しておりました。実際は顔見せは約一週間前、デッキレシピ提出は前日なので、調整期間は十分にあります。
なら、戦術の選択し広い方が強いと思うよ、私は。
で、その勘違いがどうしてこの統率者選びにつながるかというと。
基本的に強統率者と呼ばれる存在は色が多いために『決着までの時間は長め』で、さらに多色土地大量採用でタップイン処理で序盤はもたつくこともある。というのが多いです。
《聖トラフトの霊》は自身が3マナと比較的に軽く、色も少ないので基本土地もちょっと多めに採用できる。また、呪禁持ちということで相手の単体除去を不要札にすることができるので、【汎用的な多色デッキ】に対するキラーカード的な存在になれると思っていたのですよ。
【どのチームと対戦するか】は事前にわかっても、【その中で誰と対戦するか】というのが直前までわからなければ、《聖トラフトの霊》は存在だけで脅威になりうるという考えです。
まぁ、すべては盛大な勘違いからのスタートだったのですが。
大丈夫か、この記事。しっかりまとまるのか?
対戦相手・統率者決定
勘違いから始まった私の大会生活ですが。言うて《聖トラフトの霊》は強いですからね。野良対戦でもぐっているとき、勝率は70%程度です。統率者別のマッチング補正はありますが、そこそこの勝率。呪禁オーラ的に攻めれば何とかなるはずだ。
そう信じていた時期が私にもありました。
ここで対戦相手のチームメンバーと統率者の確認。
相手チーム【まっしろしろすけ(仮)】のメンバーと統率者、固有色は下記のとおりです。
yamiさん《ジモーンとダイナ》BGU
蒼紅ちかさん《暁冠の日向》URW
庭白莉茉さん《最初の黄金守護、ジョー・カディーン》RW
ずべりちゃん《生命起源の御神体》5C
アシムさん《パルン、ニヴ=ミゼット》UR
正直、どの統率者とだったら有利かって言われるとものすごく難しい。
序盤はコントロールとして動けばジョー・カディーンとなら有利が取れるだろうか。同じクリーチャーで殴り勝つデッキだが、聖トラフトを除去しようとしたら相手は自軍を巻き込まないといけなさそうだし?
一番当たりたくないのは暁冠の日向。存在自体がこちらの上位互換じゃないのか?と思える。聖トラフトがやれることをこちら以上のスペックでできるのが日向という統率者だと思う。
あとは青の打消しが使えるという時点でどれも微不利~不利だと思っている。なんで指輪物語で聖トラフトに当たる打消し増えちゃったかな・・・・・・
そして、対戦相手が7/16AM7:35に発表された。
私の相手は、アシムさん。統率者は《パルン、ニヴ=ミゼット》だ。
条件的に言えば多色といえど2色と聖トラフトと同じ色数。しかしながら能力的には盤面に出たら攻撃にも防御にも優秀な5/5飛行。《好奇心》との2枚コンボで無限ダメージ(デッキ枚数まで)であり。パルンの除去にインスタントかソーサリーを使えば1ドロー1ダメージ発生という良能力。
これは強者の風格ですわ。
《聖トラフトの霊》に対しては、そもそも着地を許さない打消しの青と、3マナ程度で打てる全体火力がある赤という組み合わせ。
場に出る前にも地獄・場に出た後にも地獄という。
聖トラフトだけでは複数回攻撃が必要なため、そんな長いターン守り切れる自信もない。
不利なマッチを強いられたよわっちぃ私は、かけらでも勝率を上げるために努力した。
勝率を1%でも上げるための姑息な手段
対戦相手が決まった瞬間から私は勝率を1%でも上げるため、姑息な手段を画策し始めた。
大会公式がツイッターで対戦組み合わせを発表したのが前述のとおり、7/16のAM7:35。その1分後、AM7:36に私は下記のように引用リツイートをした。
この記事を書くために当時のツイートを探したら「こいつ、やべぇな」って思いました。発表から1分もたたずにブラフ戦略実行してんじゃねぇよ。
説明すると、私は対戦組み合わせが決まった直後に「聖トラフトの早期着地はできねぇ!」と即座に判断した。当たり前だ。打消しが厳しすぎる。相手が青マナ立てている時点でそうやすやすとキャストできない。
そう判断したにもかかわらず、上のツイートをしているのである。
『もしかしたら対戦相手が見るかもしれない』
『かすかにでもいい、《聖トラフト》を意識してほしい』
そんな思いを込めながら。
私が「聖トラフトを初動で着地させる戦略をとる」と意識させることで、対戦相手のデッキ構築をわずかでもゆがませようという姑息な手段である。
(なお、相手が見たかどうかは不明だし、効果があったかも不明である)
こいつ(当時の私)息を吸うかのように嘘をつく。怖いわ。人間として信頼しちゃいけない部類の存在でしょ。
VSパルンデッキの戦略
とまぁ、姑息な情報工作をしたところで、肝心のデッキが勝ちに行ける形にならないといけない。とりあえず、いつも使っているスタンダードな呪禁オーラ・装備品的な《聖トラフトの霊》デッキで《パルン》のデッキと対戦してみましたよ。念のためにね。
しかしながら、勝率はボロボロ。負け、負け、負けの連続でふてくされてシールドを始める始末。MTGのストレスをMTGで解消してるってなんかおかしい気もするんだけど?
ひとまず、一般的リストを回してみて、スタンダードのままでは不利マッチであるという事前予測に対する回答は取れました。そこからはデッキ大改造の時間です。
デッキの案として試そうとしたのは以下のようなデッキ。
青白兵士ビートダウン(パルン着地前に勝負を決める戦術)
ヘイトベア(パルンの主体となるインスタント系のコストを重くする)
パルン対策偏重デッキ(プレイヤー呪禁で好奇心コンボ無力化)
クロックパーミッション(低マナで生物を出し守り続け打点を通す)
どれを選択するかという段階で、強く意識したのは「相手はどのように《聖トラフト》対策をしてくるのか」ということ。
まっしろしろすけ(仮)のメンバーや、アシムさんの性格・思考的には、以下のような変更を行ってくるという予想を立てた。
デッキのメイン勝利手段は《パルン》+好奇心コンボ
サブプランで盤面制圧後の《パルン》の攻撃
単除去の枚数削減(呪禁に当たらない)
打消し手段の整理(《聖トラフト》に当たる打消しに少量入れ替え)
全体除去の枚数追加(《聖トラフト》着地後のケア)
デッキの主軸はスタンダードな《パルン》であり、《聖トラフト》に当たりにくいものを、当たりやすいものに変えてくるというデッキ変更だ。
壁役となるクリーチャーの増量も候補にはあがる。《ガラゼス=プリズマリ》みたいなカードは4マナ目という《パルン》より早いタイミングで出せ、マナ加速にもなり、壁役としてもいいサイズだ。だが、このようなクリーチャーは増えないだろうな。という思い込み。もしくは対戦相手への妄信のようなものを持っていた。
いま現在、記事にまとめるにあたって、「なぜこういうカードの存在を警戒しなかったのか」というのを言語化を試みたところ、次の一言が生まれた。
「だって、これ『プリズマリ』だもの」
青赤のデッキといえば『イゼット』ではあるが、色を同じくして『プリズマリ』という概念がある(らしい)。
私はMTGの世界観に対して不勉強なもので、それがどんな風に違うのか、と言われても答えることはできないのだが。(ギルドであるとかちがうとか、そういう話ではない)
「なんとなく、これはアシムさんらしくはないな」とか一方的に思っている。つまりは一方的な思い込みによる対人メタということなのだが、相手のデッキの中身全部は見ていないので、このメタ推理があってたのかもわからない。だが、とりあえずにらむべき仮想敵デッキは出来上がった。これに対抗するためにこちらがどんな戦略をとるべきかと考えると。
戦略案1の兵士ビートは増えるはずの全体除去に当たりやすくなるためNG。
戦略案2のヘイトベアはインスタント・ソーサリーに制限はかけられるが、パルンの着地制限は難しいのでNG。(パルンが殴ってきたら終わる)
戦略案3の対策偏重デッキはこちらが相手を倒す手段につながらなかったのでNG。(パルンが殴ってきたら終わる)
そして必然のように残ったのが戦略案4のクロックパーミッションとなった。
なお、青白でよくある重コントロールデッキは、そもそもコントロール向きの統率者ではないので思考から追い出していた。
デッキを作り始めたよ
デッキの戦略として『クロックパーミション』で『序盤にクロックを出し、相手を妨害し続ける』という方針を固めたが、いかんせん通常の《聖トラフトの霊》デッキとは根幹からして違う。同じクロパ的なデッキとして、TKYさんから《エラントとジアーダ》のデッキリストをもらった。同じ青白で3マナのクリーチャー統率者だ。いくらか互換性が効くだろうと。
ということはなかった
数回回して「私が組みたいデッキはこうじゃないな」というイメージとの乖離が生じた。前述の没にしたデッキ案だが、あれがダメだという結論を得るためにすでに数日費やしていた。その上での《エラントとジアーダ》からの改変もなんか違うという漫然とした思い。私は中つ国シールドにもぐり、不安を取り除こうとした。(なんでこの人デッキ案固まってないのにシールドで遊んでいるんですかね?)(ストレス発散です)
だが、このシールドで遊んだというのは決して無駄ではなかった。
「そうだ、シールドでのデッキ構築理論を応用しよう」
私のゼロから始めるデッキづくりがそこから始まった。
デッキづくりの基礎ってなぁに?
デッキを作るうえでマナカーブだとか、土地枚数とか。気にしないといけないことはいろいろあるが、私がシールドを何回もやって考え至った基礎理論はデッキの中身を単純化するうえで大いに役に立った。
「初手が最高の手札なら問題ないんだよ」
こいつひどい暴論を吐き出し始めたとか思いましたか? 安心してください。私もそう思ってます。
『最高の手札』といっても『コンボスタートのどぶんハンド』とかそういう意味ではない。
ゲームを始めるうえで、【手札にどんなカードがあれば、安心してスタートできるか】ということだ。MTGというゲームは極論、こちらが事故していないで、相手が事故していたらそれだけで勝てるゲームなのである。
シールドなどのリミテッドで言えば、「土地3枚、生物3枚(うち1枚は2マナ前後)、バットリor除去」がそろっていれば順当な滑り出しができるだろう。40枚デッキでこの比率を守ると「土地17枚、生物17枚、その他6枚」くらいの比率になる。多少の誤差はあるが、リミテッドやっている人ならなじみのある比率に近いのではなかろうか?
私が言いたいのは「初手でほしい機能の枚数を挙げれば、デッキ全体の比率もおのずと見えてくる」という理屈だ。確率論などを絡め、そこから枚数調整が必要になるが、デッキ全体の大枠を決める段階ではこのくらいの雑さでちょうどいいと考えている。
ということで、【私が初手に欲しい最高の7枚はなにか】と考えた。
ヒスブロは統率者を除き、99枚デッキなので、初手1枚が約14枚分に換算される。(7枚×14セット=98枚)
土地3枚
生物2枚(うち1枚は2マナ以下)
対《パルン》カード
フリースロット(その他・汎用カード)
クロパとして打点につながる生物は絶えず盤面に送り出さないといけないので初手に2枚はあってほしい。相手のエンドにインスタントタイミングで投げつけられる瞬速持ちならなおよい。
パルン対策も初手に1枚見えててほしい。全体除去除けやパルンを1回戻せる『打ち消さない打消し』などもこの枠だ。
最後の一枚は自由枠として、通常の打消しや、単純に強いカードや、あると便利なカードとして採用したいカードを集めた。
そして、ここからデッキを試しつつ回して枚数調整。
デッキ全体で3/7が土地だと引きすぎるので、初手に3枚くる可能性が80%くらい(フリーマリガン分込み)になるように、確率計算をしてマナファクト込みで39枚。生物枠として採用した28枚のうち、2マナ以下の方が重要度が高いので、2マナ以下:16枚、3マナ以上:12枚。(もっと2マナ以下に偏らせてもよかった気がする)、対策カードと自由枠は土地を減らした分を増量し16枚ずつ。結果、下のようなデッキとしてまとまった。
左から2マナ以下生物、3マナ以上生物、対策カード、自由枠カード、マナ源(2列)となる。役割が複数にまたがっているカードもあるが、そのカードのメインの役割として想定している部分に置いている。
対戦結果は?
初手はフリーマリガン1回からのスタート。相手エンドに出した生物でライフをちまちま削り、追加ドローをちまちま稼ぎ。一度、3ターン目に土地が止まり、このまま負けるかと思ったが、踏みとどまって何とか勝利。対戦相手側の赤が出る3枚目の土地がなかなか出ず、うまく動けなかったのも幸いした。
3ターン目土地が止まったのはこのデッキの土地比率的にはあり得る話なのである意味想定内ではあるのだが肝を冷やした。
「結局、相手がパルンを出せなかったから勝ったんだよね」と言われればそうなのだが、デッキ構築の部分でも言ったが、「MTGというゲームは極論、こちらが事故していないで、相手が事故していたらそれだけで勝てるゲーム」なのである。
できる限り事故が起きないようにデッキを組み、相手の事故の隙をついて勝ちを拾ったというのは、今回のデッキ構築がうまくはまったともいえるのではないだろうか。
この結果は「既存のデッキからカードを入れ替えていく」という手段ではたどり着けなかった結果であるだろうし、ゼロからデッキを作り始めた甲斐がはあった。
チームとしては2-3で敗退となったが、今回のデッキ構築の過程は、今後のMTGに活かせると思っている。とりあえず統率者戦のデッキを新しく組みなおそうと思っているので、同じような思考のスタートラインから始めたいと思う。
最後に
これにて私の電脳灯争戦Ⅲの振り返り記事を終えたいと思う。
チームでお疲れ様配信の企画も上がっているので、チームとしての活動はもうちょっと続くのじゃよ。
それでは、電脳灯争戦の主催、夜帷遊我さん。参加させていただきありがとうございました。
運営チームの皆様お疲れ様です。本戦の方も頑張ってください。
まっしろしろすけ(仮)さん、勝利を祈っております。
その他も勝ち残ったチームの皆様のいい試合を祈りまして、最後にこのあいさつで締めたいと思います。
「えんじょ~い、まじーっく!」
ありがとうございました。
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